ともに無所属だが、小鑓さんは自公推薦、三日月さんはもともと民主党の所属。事実上、自公対民主という構図といってよいだろう。新知事になった三日月さんは、前知事の嘉田由紀子さんが応援した。いわば「後継者」である。
前知事の嘉田さんは、もともと政治家ではなく、環境社会学者だった。2006年の知事選で、新幹線新駅の建設凍結、ダム建設計画の凍結見直し、廃棄物処分場の中止などを主張。「もったいない」を合言葉に初当選したのだ。
これまで政治家は、選挙では道路や空港など何かを「作る」ことを打ち出すのが一般的だった。ところが嘉田さんは、「作らない」と宣言した。琵琶湖を中心とする滋賀県の環境を守る姿勢を貫いたのだ。
震災後には、「脱原発」ではなく、ゆるやかになくしていこうという、「卒原発」を打ち出した。こうした「嘉田路線」継続を、滋賀県民は支持したのだろう。
そして、もうひとつ三日月さんが勝利した大きな要因がある。7月1日に、集団的自衛権行使容認を閣議決定したことだ。この決定が選挙結果に大きく影響した、と僕はみている。滋賀県民の行使容認への拒否反応の表れもあるだろう。だが、それだけではないのだ。
集団的自衛権行使容認に対して、公明党の支持母体である創価学会、とくに婦人部は、最後まで反対だった。そのため、今回の滋賀県知事選では、創価学会の動きが鈍かったと言われている。
自民党本部は、事前調査で劣勢を伝えられていた。そこで安倍首相はじめ、菅官房長官、石破幹事長、小泉進次郎さん、野田聖子さんなど、錚々たる顔ぶれを現地に送り込み、小鑓さんを応援した。だが、「自民党カラー」を全面に出したことが仇になり、小鑓さんの票はかえって伸び悩んだようだ。対して三日月陣営は、民主党カラーを一切出さなかった。それで勝利を掴んだのだ。きわめて対照的である。