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長谷川幸洋コラム第59回 「圏子(チェンツ)」の概念で読み解く、前政治局常務委員・周永康の摘発事件
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長谷川幸洋コラム第59回 「圏子(チェンツ)」の概念で読み解く、前政治局常務委員・周永康の摘発事件

2014-08-07 20:00
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    「重大な規律違反」で摘発された周永康・前政治局常務委員 〔PHOTO〕gettyimages

    中国の最高指導部メンバーだった周永康・前政治局常務委員が「重大な規律違反」に問われて摘発された。

    汚職で築いた資産は1兆5000億円

    新聞紙面には習近平指導部による「反腐敗」闘争といった文字が踊っているが、それを真に受けて「清廉潔白な権力者が腐敗勢力の退治に乗り出した」などと理解すると、本質を見誤ってしまう。そもそも中国に「法による統治」があるのか。

    まず簡単に事態を整理する。今回の事件に先立って、2013年3月に四川省の企業グループ「四川漢龍集団」のトップだった劉漢が逮捕された。この男は文字通りマフィアの親分だ。商売敵を何人も殺してのし上がり、約400億元(約6,700億円)の資産を築いていた。劉には死刑判決が下っている。

    劉の後ろ盾になっていたのが、今回摘発された周永康である。だから、劉漢逮捕のころから「やがて周永康も摘発される」という見方が広がっていた。

    周永康が汚職で築いた資産は900億元(約1兆5,000億円)という、気が遠くなるような額だ。周の摘発とともに約300人もの一族郎党が拘束された、と報じられている。劉漢や周の親族らも摘発された、という点は後で述べるように重要だ。

    一方、偶然だろうが事件と時を同じくして、新疆ウイグル自治区のカシュガル地区ヤルカンド県で数百人から千人規模の騒乱が起きた。死傷者は100人にも上る、といわれている。警察当局は「組織的で計画的なテロ」としているが、一部には「前夜、警察に子どもや老人など一家が殺される事件があり、それに反発した騒乱」という説もある。真相は不明だ。

    新疆ウイグル自治区では、これまでテロや騒乱事件が多発している。昨年10月には北京の天安門広場でも暴走車両が歩行者をはねて突入、炎上する自爆事件が起きた。ウイグル人の間では、習指導部に対する不満が鬱積している。

    ウイグルだけではない。中国当局は各地で農地の強制収容を繰り返し、それに抗議する農民たちが役所や請願所の前で座り込みする姿が何度も報じられている。

    中国は海でも空でも法やルールを無視

    一方、国内から国外に目を転じれば、中国は他国を相手に国際ルールを無視した行為を繰り返している。南シナ海では、1992年に独自の領海法を制定して「九段線」と呼ばれる線の内側を「中国の領海」と主張している。これは南シナ海のほぼ9割を占める。中国にとって、周辺の「公海」はなきも同然だ。

    中国も調印している国際海洋法条約では、沿岸から200海里(約370キロ)は排他的経済水域(EEZ)とされ、領海(12海里)とは異なり、自由な航行を認められている。ところが、中国の海軍艦船は昨年9月、EEZ内で偵察行動をしていた米ミサイル巡洋艦、カウペンスにあわや衝突寸前の事件を引き起こした。EEZを領海同様にみなしているのだ。

    そうかと思えば、中国はことし5月、ベトナムのEEZ内で石油掘削リグを稼働させ、掘削活動を妨害させないために、巡視船がベトナムの船に体当たりや放水を繰り返した。

    一方では「自国のEEZは自国の領海」であるかのようにふるまいながら、他方で「他国のEEZで自国の行動は制限されない」というのだ。まったく自分勝手というほかない。

    海だけでなく空も同じである。中国は昨年11月に突然、防空識別圏(ADIZ)を設定した。ADIZは領空とは異なり、あくまで事前通報がない航空機に対して領空を侵犯する可能性を警告するための空域だ。

    ところが、中国はADIZの設定に際して、国防省の指示に従わない場合「武力で防御的な緊急措置をとる」と表明している。つまり「いざとなったら撃墜するぞ」と脅したのだ。これもADIZに関する国際ルール無視である。

    こうしてみると、中国は国内でも国外でも、根本的な政治姿勢として「法やルールに基づく統治」を目指しているとは言えない。逆に、法を無視したふるまいを繰り返し、そうした行動を反省したり改める気配はない。 
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