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拡大する香港の民主化運動---〔PHOTO〕gettyimages

民主化を求める香港の抗議行動が拡大している。事の起こりはといえば、行政長官の選出について、中国の全国人民代表大会(全人代)常務委員会が8月末に決めた「普通選挙案」が民主主義にほど遠く、中国の息がかかった候補者からしか選べない仕組みになったからだ。香港はどこへ行くのか。

「50年間、民主主義を尊重」の約束は破られた

これまで行政長官は選挙委員会(定員1200人)が選出する間接選挙の仕組みで決まっていた。それを、2017年からは新しい指名委員会が指名する2~3人の候補者の中から住民が1人1票で選ぶ方式に改めた。一見、住民の意思が尊重されるように見えるが、肝心の指名委員たちは親中派が多数を占める見通しなので、民主派は事実上、候補者の段階で閉めだされてしまう。

そこで民主派は「1人1票とは名ばかりで結局、中国の言いなりになる」と強く反発しているのだ。

香港は1997年に英国から中国に返還されたときに、中国が共産主義と市場経済に基づく民主主義の1国2制度を認め、2047年まで50年間にわたって民主主義を尊重する約束があった。今回の選挙改革案はこれを真っ向から破るものと言っていい。

だから、米国上院のメネンデス外交委員長は「香港市民に対する約束を破った」と非難し、オバマ大統領も民主派を支持している。だが、国連の潘基文事務総長は「中国の内政問題」というのが基本的立場だ。

香港が中国のものであるのはその通りである。だが、中国は対応を一歩誤ると火の粉が自らにふりかかり、大きなダメージを受けるだろう。たとえば、最終的には人民解放軍が出動して実力で抗議行動を制圧するのではないか、という観測もある。

そうなると、1989年の天安門事件の再現になる。香港の状況は逐一、世界中に報じられており、もしも香港が血の雨に沈むようなことがあれば、中国は天安門事件どころではない、世界中から非難の嵐を浴びることになる。

いまのところ、中国に「武力鎮圧の考えはない」と報じられている。催涙弾を使った制圧作戦が強い批判を浴びて、逆にデモが一層拡大した経緯もある。デモ隊は梁振英行政長官の辞任を要求しているが、梁長官は拒否し一歩も引かない構えだ。となると、抗議行動は長期戦が必至である。