<夏だ!! 競馬だ!!>

 夏競馬の話題を取り上げる「夏だ!! 競馬だ!!」。今週はルーキーの加藤祥太騎手(18=栗東・庄野)。ここまで新人トップの15勝。新人4人で唯一、函館で開幕週から調教、レース騎乗を続けている。栗東トレセンとは異なる環境で、学び、楽しみ、そして…。充実の日々に迫った。

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調教へ向かう加藤騎手(撮影・村野早祐)

 朝の函館競馬場は慌ただしい。スタンド前、そして角馬場。騎手は前の馬の調教騎乗を終えると、休む間もなく次の馬へとまたがっていく。その中で、ルーキー加藤騎手の蛍光帽もところ狭しと動き続ける。追い切り日は、多ければ10頭に騎乗。午前5時半の開門から9時の調教終了まで。馬から下りた姿を見つける方が難しいほどだ。

 加藤騎手 栗東だと、追い切り日でも乗るのは1日4頭前後。だから、数はずいぶん多いですね。今は馬の背中を覚えている段階なので、いい経験。大変だとは、あまり感じませんよ。
 時間を見つけては、レース動画で研究を重ねる。自分の騎乗したレースに始まり、調教でまたがった馬にまで及ぶ。「自分の携わった馬がどういうレースをするのか、気になるんです」。経験の多さはより生かされる。

 加藤騎手 攻め馬に乗せてもらうことはもちろん、その後もある。たくさん勉強させてもらっています。

 そんな姿勢は関係者にも伝わっている。1回函館(6月20日~7月5日)の6日間で44鞍に騎乗した。同開催では三浦(54鞍)、勝浦(49鞍)、吉田隼(47鞍)、柴山(46鞍)に次ぐ5位タイの騎乗数。ルーキーながら信頼を得つつある。

 それに応える成果も挙げている。6月27日の3歳未勝利、13頭立て7番人気ビックマウンテンでの勝利。函館ウッドの最終追い切りに騎乗し、感触を十分つかんでいた。初コンビでも迷わずハナへと導いた。息の合った走りで1秒5差圧勝は、調教騎乗が生きたレースだった。

 経験と信頼を積み重ね、着実に結果に結びついている。
 仕事を終えれば、トレセン生活では味わえない楽しみも待っている。これもローカルならではの魅力だ。

 加藤騎手 この間の全休日は、自由市場でイクラ丼を食べました。大好物なんです、イクラ。一生分かというくらい食べました。夢だったんです。

 同じ日に、厩舎スタッフとジンギスカンにも舌鼓を打ったという。騎手の中では食べる方。北の味覚にぞっこんだ。函館開催中に運転免許を取ることが目標だ。調教後、近隣の教習所に直行する毎日だ。
 加藤騎手 仮免許を取って、今は路上教習です! それにしても車の運転、難しいですね…。
 思わぬ“じゃじゃ馬”との格闘に、いたずらっぽい笑みを浮かべた。【取材・構成=柏山自夢】

 ◆加藤祥太(かとう・しょうた)1997年(平9)3月8日大阪府生まれ。08年朝日CCを父と観戦、ドリームジャーニーの勝利を見て騎手を志した。栗東・庄野厩舎所属で、今年3月1日デビュー。同14日に、同厩舎のグランシュクレで初勝利を挙げた。目標の騎手は武豊。154・7センチ、43・9キロ。

 【取材後記】コミュニケーション能力に優れた好青年だ。質問されている時も、そしてそれに答える時も、決してアイコンタクトを忘れない。気遣いにもたけている。椅子に腰掛ける加藤騎手に立ったまま取材をしていると、いつの間にか立ち上がって応対していたのには驚いた。「自分は恵まれていると思います」。取材中、幾度となく出てきた言葉だ。誠実に1頭1頭、1人1人と向き合う。その背中は、1日1日頼もしさとたくましさを増している。

 ◆加藤騎手の今週の騎乗予定馬 平場で有力馬がそろいそうだ。コンビ継続が予定されているセレッソブランコ(牝3、奥村豊)には、函館での2戦に騎乗。芝1200メートルで減量を生かし、<5><2>と結果を残した。同騎手は「2走前は出遅れて外々を回ってしまいました。でも、前走は勝ち馬は強かったけど、手応えがあった。そろそろ順番でしょう」と自信を深めている。また、クイーンズターフ(牝3、須貝)は、新馬戦以来のダートとなった前走に騎乗して2着。「砂の1700メートルという適条件を見つけた」と、勝ち負けを意識する。