ワールドオールスタージョッキーズ(WASJ)の“初代王者”にアジア地区代表のジョアン・モレイラ騎手(31=香港)が輝いた。30日、札幌競馬場で2日目が行われ、29日の1日目と合わせて2勝、2着1回の総合56点で制した。WASJを含む土日20鞍に騎乗。土曜3勝に続き、日曜は4勝を挙げた。シンガポール、香港で驚異的な最多勝記録を樹立したマジックマンが北都に君臨した。

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2015WASJはモレイラ騎手が優勝に輝いた。左は2位武豊騎手、右は3位戸崎騎手

 札幌競馬場が魔法にかかったようだ。土曜に3勝を挙げたモレイラが止まらない。エキストラ騎乗の5、6、8Rで3勝し、迎えた10Rの第3戦(芝1200メートル)。単勝1・9倍の1番人気ブラヴィッシモ(牡3、須貝)に騎乗した名手は先に直線で抜け出した武豊のフェアラフィネを後方から猛追。空いたインコースへパートナーを誘導し、きっちりゴール前で差し切った。“マジックマン”の異名を持つ男は「この馬の持ってる能力を引き出せて良かった。いい馬に恵まれました。みなさんに協力してもらったし、天に昇る気持ち」とニッコリ。WASJのタイトルを決定づける勝利にも淡々と感謝の言葉を続け、最終レース終了後の表彰台では両手の人さし指を空に向けた。

 単勝7番人気だったミスエリカの勝利など20鞍の騎乗で7勝2着4回。魔法にかかったのは札幌のファンだけではない。「スタートがうまいし、やっぱりいい騎手だ、うん。久々に来たな、すごいヤツが…」。土日で7鞍の騎乗を依頼した日本のトップトレーナー、藤沢和師も技術を認めた。昨年の安田記念に続く2度目のJRA騎乗。夏競馬開幕前、香港のシーズン終了後に日本の関係者から来日の誘いはあったが、家族との時間を優先した。あらためて問われると、「(香港がオフシーズンになる)来年の夏に短期免許を申請したい」と意思を示した。

 「日本は展開がフェアだし、一番いい馬が勝つ。自分には何のマジックもありません」。今、世界で最も注目されている騎手は勝利のビールかけを終えると、翌朝の調教に騎乗するため、羽田経由で香港へ戻った。「昨年は素晴らしいシーズンだった。今年もいいシーズンを」。最後まで笑みを絶やさず、マジックマンは去っていった。【木南友輔】

 ◆ジョアン・モレイラ 1983年9月26日、ブラジル生まれ。31歳。00年サンパウロジョッキークラブでデビューし、約9年間で1000勝以上をマークした。09年4月からシンガポールで騎乗し、10年から4年連続リーディングジョッキー。13年9月6日には騎乗機会全勝となる8戦全勝を記録し、同年10月香港移籍。フル参戦初めての今季は145勝でシーズン記録(114勝)を大幅更新。来日は14年安田記念以来2度目。