今年もこの男の季節がやってきた。今週から短期免許で騎乗する世界NO・1ジョッキーのライアン・ムーア(32=英国)が12日、美浦トレセンに現れた。7月に首を負傷し、一時はシーズン中の復帰を絶望視されたが、劇的な復活を果たし、今まで以上にさえた騎乗を見せている。週末のエリザベス女王杯ではラキシス(牝5、角居)で自身3度目の勝利を狙う。
美浦トレセンを訪れたライアン・ムーア騎手
通訳の運転する車の助手席から静かにムーアが降りてきた。ウエーブのかかる髪、澄んだ瞳、紺のセーター、光り輝く靴、鍛え抜かれた体。「日本の競馬関係者、競馬ファンがそんなに自分のことを待ってくれているとは驚きました。多くの騎乗依頼をもらっているし、本当に光栄だと思ってます」。クールな表情を少しだけ緩ませた。
いきなりエリザベス女王杯でG1に挑む。コンビを組むパートナーは「ラキシスッ」と予習済み。「昨年のレースを見たし素晴らしい馬だと知っている。勝っているから京都も問題ないでしょう。レーティングを見ても、トップクラスの馬」と、連覇を期す陣営には頼もしい言葉が並んだ。
6月のロイヤルアスコット開催で新記録の9勝を挙げた。順風満帆のシーズンを送っていたが、7月に首を負傷。一時は年内休養の報道もあったが、超人的な回復で9月末に戦線復帰。BCターフのファウンドで史上初の3歳牝馬Vも達成するなど、これまで以上に神懸かり的な騎乗を連発している。「万全です。幸運なことにすぐに復帰できましたし、大丈夫」。
1年ぶりの来日でも、日本の情報はしっかりチェックしている。「ドゥラメンテは素晴らしい馬なのを覚えているし、ダービーを勝ったのも知っている。先週はワークフォースの子が勝っていたね」。昨秋は来日週の2歳未勝利戦でドゥラメンテに騎乗し、圧勝。英ダービー、凱旋門賞を制したパートナーの子が活躍中なのも知っている。
今年はどんな名馬と出会い、どんな手綱さばきを見せてくれるのか。「期待に応えられるような騎乗をしたい」。ライアン・ムーアの季節がやってきた。【木南友輔】
◆10、11年女王杯連覇 ムーア騎手は英愛オークス馬スノーフェアリーと2年連続で参戦し、連覇を飾っている。4番人気の10年は中団待機から各馬が直線で外へ持ち出す中、荒れたインを突いた。「瞬間移動」と称された圧勝劇で2着メイショウベルーガに4馬身差をつけた。1番人気の11年は後方から馬群を割って豪快な伸び。秋華賞馬アヴェンチュラを首差捉えた。
◆短期免許外国人騎手の来日週G1制覇 ペリエ騎手が01年マイルCS(ゼンノエルシド)、04年天皇賞・秋(ゼンノロブロイ)、M・デムーロ騎手が03年ダービー(ネオユニヴァース=皐月賞後に帰国し再来日)、08年ジャパンC(スクリーンヒーロー)、ウィリアムズ騎手が10年天皇賞・春(ジャガーメイル)、スミヨン騎手が10年天皇賞・秋(ブエナビスタ)で達成している。ムーア騎手がエリザベス女王杯を勝てば史上5人目(7回目)。