<チャンピオンズC>◇6日=中京◇G1◇ダート1800メートル◇3歳上◇出走16頭

 新たな歴史が刻まれた。単勝12番人気のサンビスタ(牝6、角居)が、チャンピオンズC初の牝馬Vを成し遂げた。導いたのはミルコ・デムーロ騎手(36)。自身にとっても初のダートG1制覇で、牝馬では初のG1タイトルとなった。管理する角居勝彦調教師(51)は08年カネヒキリ以来の3勝目。今後は29日大井の東京大賞典(統一G1、ダート2000メートル)も視野に入る。

 新たな歴史の扉が開いた瞬間だった。牝馬による初制覇。導いたのはM・デムーロだ。ゴールまであと200メートル。顔を真っ赤にさせ、右ムチを振り続けた。リッキー、タルマエをとらえた後、後続が迫ってくるのが分かったが、相棒は物見を始めた。「もうちょっとだから。もうちょっとだから、頑張って」。最後は必死にお願いし、ゴール板を過ぎた瞬間にはうれしさのあまりほえていた。
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ゴール前、鋭く伸びたサンビスタ(左)がチャンピオンズCを制する


 どうしても勝ちたかった。JRAのダートG1は初勝利。牝馬でのタイトルも初めてだ。パドックでは角居師から「今まで牝馬は、このレースで4着までしか来たことがないから」のひと言。火がついた。自身にもレースにも、新しい“歴史”を刻む。心の中でそう誓って臨んでいた。

 今年3月にJRA騎手としてデビュー。春はドゥラメンテで皐月賞、ダービーを制したが、歓喜をきわめた直後、同馬に骨折が判明した。この秋も「天皇賞・秋のアンビシャス(5着)は引っ掛かったし、ジャパンCのサウンズオブアース(5着)はスムーズなレースじゃなかった」とG1で惜敗続き。最大のチャンスだったマイルCSのフィエロも「相手が強かった」とモーリスの2着に敗れ、レース後の検量室ではロッカーに額を打ち付ける姿もあった。ダービー以来のG1タイトルに「今日は本当に勝ちたかった」とはじけんばかりの笑顔。積もっていたもどかしさやいらだちを自身で吹き飛ばした。

 管理する角居師の競馬人生は、サンビスタを生産したグランド牧場からのスタートだった。金沢で競馬とは無縁の家庭に育ち、右も左も分からないままに働き始めた。馬に乗っては落ち、砂と泥にまみれた。競走馬の生産や育成に携わり、その魅力を感じ、現在へと導いてくれた場所へ、最高の恩返しとなった。

 今後は、東京大賞典への出走も検討される。「使うとしたら東京大賞典になるのかなと思うが、オーナーと相談したい」と師。新たな歴史を刻んだ牝馬が再び牡馬を蹴散らしてみせる。【辻敦子】

<チャンピオンズCアラカルト>

 ◆牝馬初制覇 延べ18頭目の挑戦でチャンピオンズCでは初勝利。過去最高は00、02年のプリエミネンス、11年ラヴェリータ、昨年のサンビスタの4着。

 ◆M・デムーロ初勝利 7回目の騎乗で初勝利。今年のG1はダービーに続き3勝目で通算13勝。今年の重賞は新潟記念(G3)に続く8勝目で、通算39勝目。重賞8勝は岩田13勝、武豊10勝に次ぎ、川田、ルメールと並ぶ3位タイ。

 ◆角居師3勝目 05、08年のカネヒキリに続く3勝目。G1は昨年のジャパンCエピファネイア以来で通算22勝目。重賞は今年の大阪杯以来で通算65勝目。

 ◆6歳馬の勝利 08年カネヒキリ以来7年ぶり3勝目。

 ◆単勝12番人気の勝利 今回が初。これまでの最低人気の勝利は03年フリートストリートダンサーの11番人気。単勝6640円は今レース史上最高払戻金額。

 ◆軽量馬の好走 大型馬が強いダートだが、今回は16頭の出走メンバー中、軽量馬ベスト3が3着までを独占した。