朝起きたらまず何をしようか?

出勤しなければいけない仕事に就いているわけでもない!
「始めたい!」
と思った時に開店し
「もういい!」
と思ったら閉店するのが作家業だ!
なので起床したとて
急いで朝食をとったり
あわてて身なりを整えたりする必要はない!
”朝起きたら何をしよう?”という問いの答えを探すため
最近の私はまず「ラジオ」を聴く!

ABCラジオで放送されており
私も時々出演させてもらう
『ドッキリ!ハッキリ!三代澤康司です』
は朝の番組としては最適だ!
関西地区で通称『ドキハキ』と呼ばれるこの人気番組は
なにしろ司会の三代澤氏をはじめ
アシスタントのアナウンサーやタレント全員が
まったく賢さをアピールしないところが素敵だ!
全国各地の朝の番組を「radikoプレミアム」で聴く私だが
『ドキハキ』ほど出演者から知性を感じないものも珍しい!
だがそこがいい!
その日の朝の新聞を読み
賢い司会者がそれ以上に深く解説するラジオは多いが
『ドキハキ』に至っては
「よくわからない!」
と断言して話題を変える場合がある!
『ドキハキ』では知らない物に対して
「なんやそれ?」
という態度を貫き通す!
そしてさほど興味がわかない話題に対しては
「はいそんなんがありました!」
とばかりに構成台本を
さっさと強めにめくる音が聴こえる!

ある朝の事だった!
『ドキハキ』を聴いていると
まさにそんな
”出演者全員興味なし”な状況に出くわした!
しかし私はそこで話されていた内容に
心が震えた!

「ラヂオ塔」!

『ドキハキ』のワン・コーナーでは
ラヂオ塔なる物を研究するカメラマン
「一幡公平(いちまん・こうへい)」氏
を特集していたのだが
案の定ほとんど興味のなさそうな口調だった!
ではラヂオ塔とはなんぞや?

なんでも
第二次世界大戦前後の1930年代から1940年代にかけて
「ラヂオ塔」なる建造物が
日本国内に500基近く建造されたのだと言う!
それは後に誕生する「街頭テレビ」のラジオ版と考えていいだろう!
ラジオが高価で一般普及する以前には
人が集まる場所にこのラヂオ塔を建て
そこから放送が流れていたというわけだ!
いや!
もしかしたらラヂオ塔を建てた場所に
人が集まるようになったのかもしれない!
つまりラヂオ塔は
携帯電話でラジオ放送を聴く現在において
全く不要な遺物でしかない!
ところが!
それは今でも至る所に残っていると言うではないか!

ここまでお読みいただいたあなたの頭の中には
恐らく鉄筋による塔の上に
らっぱのようなスピーカーがいくつか備えられた物!
そんなのが生まれているのではないだろうか?
私も『ドキハキ』を聴きながら思い描いた物は
こんな姿だった!

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しかしどうだ!
こんなへろへろな物が
戦前から平成も終わろうとする現在まで
90年近くも残るはずがないではないか!
私はあわててインターネットにて
「ラヂオ塔」を検索した!
そして久々に「しりこ玉」が吹き飛ぶほど驚いた!
それは私の貧困な想像力をはるかに越える姿をしていた!
まるでお寺や庭園に設置されている
石灯籠のようなルックスだった!

なるほど!
時代背景から察するところ
ラヂオ塔は
日本の敗戦を伝える玉音放送をも流したはずだ!
なんなら2.26事件を収めた昭和天皇によるメッセージ
「兵に告ぐ」もラヂオ塔から流れたはずだ!
日本軍によるプロパガンダにもおおいに使用された事を考えれば
昭和天皇の生声を聴かせるための物が
先の私の絵のようであってはならなかったのだろう!
ラヂオ塔は実に威厳のある堂々とした姿をしており
恐らくは当時の悪ガキや
「石丸謙二郎」のような大人が登ったりしたら
めっちゃ叱られたに違いない!

おや?
インターネットでラヂオ塔を検索した私は
どこかでそんな物を見た事があると確信した!
そうだ!
我が家の近所にある「大阪城公園」だ!
確か大阪府警舎の前辺りのベンチで一服する際
私の横には
なんだかよくわからない物がいつも立っていたはずだ!
それが何なのか気に留めた事もない!
なぜなら「これは何です」という解説も成されていないからだ!
あれだ!
あれがきっとラヂオ塔だ!

そう思った私は居ても立ってもいられず
『ドキハキ』をエンディングまで聴く事なく
自転車に乗って自宅を飛び出した!
その直前に一幡氏による著書
『ラヂオ塔大百科2107』
をネット注文するのを忘れなかった!

やっぱりだ!
これだ!
これこそがラヂオ塔だ!

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前面には何かが貼り付けられていた痕跡がある!
他のラヂオ塔をインターネットで見る限り
ラジオ局のコールサインが掲げられている物がある!
なのでこのラヂオ塔にも
恐らくはNHK大阪のコールサイン
「JOBK」が貼られていたのではないだろうか?
ちなみに関西の俳優・タレント・芸人らは
フジテレビを「CX」と呼ぶ感覚と同様に
NHK大阪の事を「BK」と呼ぶ!
これはコールサインの下2文字を取ったものだ!
しかしその呼び方は
NHK大阪である程度の回数
仕事をした者でなければ通用しない!
つまりNHK大阪を「BK」と呼ぶか呼ばないかで
その芸能人の業界への入り込み具合が測られるのだ!
「NHK大阪」を「BK」と呼ぶ事は
「タモリさん」と「タモさん」の間にある壁を越える事に
似ているかもしれない!
似ていないかもしれない!

ではそんなBKラヂオ塔の裏側を見てみよう!
大阪城のお堀に向かう背面は
つたの絡み具合がなんとも趣深い!

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そして背面中央部分にはこんな部位が確認できた!
なんだろうか?
電源を接続したのだろうか?
思いつきで会いに行っただけの私には
まるでわからない!

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当然のごとくこのBKラヂオ塔は
ラジオ電波の受信と拡声という機能が
既に失われている!
ただそこに立っている奇妙な塔でしかない!

さて!
大阪城公園で初のラヂオ塔確認を行ったわけだが
そこからどうしようか?
特に行き場もないのでどこかでコーヒーでも飲んで帰宅しようか?
いやいや!
興奮状態で聴いていた『ドキハキ』を思い出せ!
確か「中之島公園」にもラヂオ塔があると言っていた!
自転車で向かえばほんの10分ほどの場所に
もう1基ラヂオ塔がある!
ならば行かねばなるまいて!

特に詳しい位置情報もなかった!
インターネットで調べればすぐにわかったのかもしれないが
それでは発見した時の”ひろぎ”が薄れてしまう!
ここは勘だけで中之島公園を走り回ってみよう!

ずいぶんと自転車を漕いだ!
歴史的な建造物などは
中之島公会堂エリアに集中している!
恐らくラヂオ塔も公会堂付近にあるのだろう!
しかしいくら走り回っても
そこいらにラヂオ塔は発見できなかった!
なかば諦めかけながら
バラ園を抜け
かつてバンド「みにまむす」による「船上ライブ」の際
船が出発した船着き場付近まで走ってみた!

すると!
あった!

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これまた誰も近寄るはずもないポイントに
ラヂオ塔はそびえていた!
このラヂオ塔も機能は失われているが
見ればかつて柵によって囲まれていた形跡がある!
恐らくは戦時中の鉄の回収令によって
鉄棒は抜かれているものの
明らかに「これは大切な物でした」というメッセージが
伝わって来た!

背面を見てみると!

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何かとても背の高い物がくっついていたのが想像できた!
後に届いた一幡氏による『ラヂオ塔大百科2017』によれば
ラヂオ塔の多くは国旗掲揚塔とセットになっていたと言う!
なのでこれもその名残なのだろう!
このラヂオ塔の上には日本国旗がはためいていたのだ!
その姿はさぞや象徴的な物だったに違いない!

なぜ今もこうしてラヂオ塔が残っているのか?
考えられる大きな理由は
彼らのその堂々たる姿だろう!
例えば公園の片隅に
みんなが忘れた石灯籠があったとしても
誰もそれを撤去しようとは思わない!
お寺の庭を連想させる石灯籠には
なんだかついでのありがたみがあり
なんならうかつに壊せば
孫が病弱になりそうな気もする!
ラヂオ塔にもそれと同様の趣と威厳がある!
同時に
基礎工事まで行われて設置された建造物は
置かれただけの石灯籠とは違い
撤去に重機が必要となり
なかなかな金額を要する事になる!
恐らくはそうした理由で
今も全国各地に未撤去なラヂオ塔が残っている!
聞けば総てのラヂオ塔が
その土地の職人の手による物らしく
二つと同じ物がない”作品”なのだそうだ!
なのでそれぞれのラヂオ塔に
職人の腕とデザインをアピールした個性がある!
そうなれば全国に残るラヂオ塔を
探してみたくなる!
私はそういう生き物だ!

ずっとずっとそこにあったのに
全く目に入る事のなかったラヂオ塔!
しばしば散歩する大阪城公園や中之島公園の景色が
その日のうちに一気に変化した!
今では誰に見られる事もなく
ひっそりと立っているラヂオ塔だが
かつてはその周囲に多くの人々が集まり
音楽に耳を傾け笑い合い
敗戦を知り涙を流し
腕を前から上に上げて大きく背伸びの運動をしたのだろう!

年の瀬が迫る中で
突然降って湧いた私の中の「ラヂオ塔ブーム」は
当分収まる事はない!
なにしろこれでまた
全国を巡る”ひろぎ”の要素が膨大に増加したのだ!

もしもあなたの住む街に
「あれ?ひょっとしてあれはラヂオ塔?」
と思われる物があったとしたら
是非とも以下のメールアドレスに
御一報いただきたい!

lamprima2004@yahoo.co.jp

「最近また『ひろぐ』が更新されないけど
 元気にしてるの?」
と言われる!
ええ!
私はこの通り!
いつだってひろいでいる!

なお最近私の心を掴んで離さない
「全天球カメラ」通称「ひろの眼」で撮影した
二基のラヂオ塔写真を
「Piper」Facebookに掲載するので
より興味のある方は是非ご覧下さいな!