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いま世界中で起きているきしみ、取り分け日本で起きているきしみは「働き方」に由来するものだろう。それも、人々が有史以来初めて「働かなくても良くなった」ことに対する混乱に起因している。
先日、とある小学校にお邪魔し、小学6年生に話を聞いてきた。児童書作りの参考にするためだ。
そこでぼくが、ありがちな質問として「将来なりたい職業はある?」などと尋ねると、ほぼ全員が「YouTuber」と答えていて、YouTuberが「成りたい職業」として人気があるというのは聞いていたが、「ラピュタは本当にあったんだ」的に、その答えを直に聞くとなかなか胸にぐっとくるものがあった。
しかしぼくは、小学生は「炭鉱のカナリア」ではないが、大人よりも嗅覚にすぐれ、未来を見通す目を持っていると思っているので、その意見はなかなか興味深いと思わされた。
たまたまなのだが、その日の夜にとある東大教授と会食し、そこで話題になったのが「人々はもう労働しなくてもいい」ということだった。その先生はとてもユニークで、彼の眼差しは取り分け同僚に対して厳しいものとなっていた。
その先生は、「国民の東大教授への期待は、誰もができる労働をすることではなく、誰もしたことのないオリジナリティある働き方を示してもらうことなのに、誰もそれをやろうとしないことがおかしい」とおっしゃってて、ぼくも全くその通りだと思った。東大教授こそ、これからの「働かなくてもいい未来」に向けて、働かなくても豊かに生きられるモデルを示さなければならないのに、なぜか古いモデルに固執してしまっているらしいのだ。
と、そのとき、この話が昼間の小学生の話とつながったのである。
というのは、YouTuberこそ、働かなくてもいい未来に先駆け、労働しないという生き方をモデルとして提示している人たちだと気づいたからだ。それこそ、本当は東大教授がしなければならないことを、YouTuberが先にしている。
ぼくは、4年前からYouTubeというものになぜか大きな魅力を感じていた。そして興味にかられて自分でもYouTubeを運営してきたのだが、4年目にして初めて(ようやく)分かったのは、YouTuberは未来の働き方、生き方の実験場だったということだ。
労働しなくても良い未来に何が必要かといえば、「遊ぶ」ことだ。しかしながら、その遊び方をみんな知らない。なぜかといえば、これまでは遊びは悪だという価値観が根付いていたので、みんなそれを怠ってきたからだ。それで、急に遊べといわれてもどうすればいいか分からない人が多いのである。
だから、それをモデルとして提示する人が必要なのが、現代ではそれをYouTuberが担っていたというわけである。
YouTuberの難点の一つは、経済だろう。お金を稼げている人は今でもごくわずかで、あとはほとんど持ち出した。
それでもなぜ多くの人がYouTubeをしているかといえば、いい意味で働いていないからだ。そしていい意味で時間が余っているため、それを正しく使おうとした結果、YouTubeに辿り着いたのである。
YouTubeのいいところは、単にYouTubeをするだけではなく、それに付随して何かができることだ。
例えばぼくはYouTubeをしながら同時に映画を撮影している。だから、YouTuber兼アマチュアビデオ制作者ということになるだろう。そのどちらでもお金を稼いでいるわけではないが、これがなかったらストレスで頭がおかしくなってしまうというくらい、ぼくの人生には欠かせないものとなっている。
一方、世の中の多くのYouTuberは、兼業として「ゲーマー」である。彼らは、ゲームをしながらその実況をYouTubeで流している。
ぼくも、ここ一週間『ゼルダの伝説』をプレーして、ゲーム実況がYouTubeで求められる理由というのがとてもよく分かった。
ぼくは、それなりに年季の入ったゲーマーなので、ゲームで遊ぶのが比較的上手い。しかし、例えば妻は、あまりゲームをした経験がないために、プレーが上手下手以前に、どう楽しめばいいか分からないところがある。
そんなとき、ぼくが隣で遊んでいると、彼女は自分がプレーするとき以上にそれを楽しんでいるのである。年季の入ったゲーマーの遊び方というのは、他人が見てもそれなりに面白いものなのだ。
そんなふうに、今週はいろんな偶然が重なって一つの疑問が氷解した。
これからは遊ぶ時代が到来し、そのとき「上手に遊ぶこと」が求められるのだけれど、その指南をするのはこれまでさんざん遊んできた遊び人ということになる。つまり、遊び人の時代が到来したのだ。
そう考えると、ぼくは人生の半分は働き者で過ごしたが、半分は遊び人で過ごしてきたので、今度の変化は「そう悪くない」ということができる。
ただ、『もしドラ』以降のぼくはずっと仕事人のキャラで通してきたから、これからそれをどう遊び人にシフトしていくか、今考えているところなのだ。
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