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ユーザーエクスペリエンスにおける絵本とサインデザインとの親和性について(2,788字)
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ユーザーエクスペリエンスにおける絵本とサインデザインとの親和性について(2,788字)

2018-10-25 06:00
    廣村正彰さんという、世界的に活躍されているデザイナーの方がいらっしゃって、お仕事も魅力的なのだが、人間としても大変に魅力のある方だ。廣村さんの魅力は、単にデザインを美的なものとしてだけとらえるのではなく、もっと広い意味で、トータルで考えられているところだ。

    廣村さんが得意とする分野の一つは「サインデザイン」だ。トイレマークに代表されるような、人が目的地にたどり着くためのサインのデザインを数多く手がけられているのだが、これにはいくつかの難しい命題が課せられている。

    第一に、目立たなければならない。サインは、それ自体が目に入らなければ全く意味をなさない。だから、気づいてもらうための工夫が必要だ。

    第二に、それでいて街や建物と調和しなければならない。特にトイレマークなどはデリケートで、あまり主張しすぎると周囲の雰囲気を壊してしまう。

    第三に、見る人に伝わらなければならない。それも、あらゆる人に伝わるように、言葉を用いない場合が多い。そこでは究極の分かりやすさが求められる。

    第四に、それでいて美しさが求められる。デザインとして、見ていて心地よい必要がある。

    以上のように、いくつかの相反する条件をアクロバティックに超越していかなければならない。だから、そこではデザインセンスの他に、ホスピタリティや行動心理の深い知識や洞察が求められる。

    それは、いうなればリアルな世界の「ユーザーエクスペリエンス」デザインだ。近年は、インターネットのサイトやアプリにおけるユーザーエクスペリエンスの重要性が叫ばれ、その研究や開発はIT事業者には必須のものとなっているが、廣村さんはその分野にコンピューターが広まる前から取り組まれていた。その意味で、ユーザーエクスペリエンスデザインの先駆的、かつ先端的な存在といえるだろう。そう考えると、今最も注目され、また必要とされる知見と経験の持ち主といえる。

    そんな廣村さんに、ぼくは岩崎書店で働いていたときに絵本の制作を依頼した。ぼくが廣村さんを知ったのは、NHKの『プロフェッショナル仕事の流儀』という番組に出演されていたのを見たからだ。
    その番組では、廣村さんの活動と、彼の興味深い発言の数々が紹介されていた。それを見て、ぼくはサインマークと絵本の親和性、共通性を強く感じたのである。

    どういうことかというと、絵本は単に情報を伝えるだけではなく、トータルな体験を提供するものだ。絵と字と紙をめくるという行為、さらには母親の読み聞かせなどが渾然一体となって、子供に情報以上の「エクスペリエンス」をもたらすことを目指している。

    サインマークも、街や建物の中を移動しながら、例えばトイレマークを見つけて、そしてトイレに入るまでのエクスペリエンスをトータルでデザインしなければならない。しかもそこでは、デザインはあまり主張してはならず、逆に意識されないくらいのさりげなさが求められる。

    絵本も一緒で、絵や字を子供に意識させるようでは失格で、それらを超越して無意識の領域で何かを感じてもらうことを目的としている。だから、サインマークで培った廣村さんの知見というものは、絵本にも有用であることは疑いないのだ。

    そこでぼくは、「ぜひ廣村さんに絵本を作ってほしい!」と考えた。絵本という体験をトータルでデザインしてほしいと思った。サインマークで培った廣村さんの知見を絵本に流用し、一つのイノベーションを起こしたいと企図したのである。

    そうして執筆を依頼したところ、さまざまなお仕事でお忙しいにもかかわらず、ご快諾をいただいた。その絵本は、現在鋭意制作していただいているところだ。ただその間、ぼくは岩崎書店を辞めてしまった。しかしこの絵本は、何らかの形で必ず世に出す予定である。それについての情報は、また然るべき時期が来たらお伝えしたいと思っている。

    今回は、そんな廣村さんと僭越ながらぼくがトークショーをさせていただくことをお伝えしたい。廣村さんは、毎年仕事を超えた社会事業の一環として「ジャパンクリエイティブ」というデザインのイベントを開催されており、そこでは幾名かのゲストを招いてデザインにまつわることやそれ以外のことも含めてトークショーを行なっている。そして今年、なんとそのゲストの一人としてぼくが出演させていただけることとなったのである。

    ぼくにとって、これほど光栄なことはない。廣村さんとはお話しさせていただくことはそれだけでも大変に勉強になるしまた楽しいのだが、さらに聴衆の方々の前でさせていただくとなると、そこに新たな刺激が加わって脳が活性化され、会話の内容がさらに深く、濃いものになることは疑いようがない。

    だから、この記事を読まれた方におすすめしたいのは、このトークショーを聞きに来ていただきたいということである。ぼくは怠け者だから、自分で自分の脳に刺激を与えることには限界があるのだが、廣村さんや聴衆の方々から刺激をいただければ、自分で言うのはなんだが普段よりも2倍から3倍は面白い話しができる自信がある。だから、ぜひ来ていただいてぼくの脳に刺激を与えていただきたいし、またそれによって引き出されたぼくの話しを聞いていただきたい。


    トークのテーマはというと、基本的にはフリーなのでどこへ向かうかは当日のお楽しみというところだが、取っ掛かりとして「近未来の味?」というものが与えられた。そこでぼくは、「都会をハックする」ということについて話したいと思っている。

    「都会をハックする」というのは、最近ぼくが新しい生き方を模索する中でたどり着いたテーマだ。ぼくは、新しい生き方を模索する中で衣食住をより健康的にしたいと考えいろいろ勉強したところ、縄文時代の狩猟採集生活がいいと分かったので、それをいかに現代の東京で再現するかということに取り組み始めた。それを東京という都会で実現するために、都会をハックしようと企図したのだ。

    そこでぼくは、半年前から暮らし方、生き方を大きく変えた。そのことを取っ掛かりに、ぼくが今一番興味がある「新しい生き方」について、廣村さんの知見や刺激をいただきながら、議論を掘り下げたいと考えている。

    トークショーの開催日時は11月4日の日曜日で、場所は渋谷にある西武デパートB館地下1階の特設会場である。
    料金は無料となっており、席に限りがあるので入場は先着順となっている。また、ぼくの出演はこの日だけだが、他の日にも魅力的なゲストの方々によるトークショーが予定されている。ご興味のある方は、ぜひそちらにも足をお運びいただければと思う。

    とにかく、このトークショーは誰よりもまずぼく自身が楽しみにしている。刺激的な議論をするというのは、人生でも最も深い楽しみの一つではないだろうか。ぜひそれを、みなさんと共有できたらと思っている。
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