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医学の急速な進歩によって、「生命倫理」は社会的コンセンサスを置いてきぼりにしたまま大きく変容していった。そうした事態に現場で直面したのは、患者とその家族そして医師であった。
ただし、たいていの患者や家族は無知であった。だから、生命倫理はもちろん「生きる」とは何かも知らず、医師の言いなりになるケースがほとんどだった。
そして医師は(とりわけ20世紀の医師は)、権威主義と事なかれ主義のハイブリッドが大半だった。また金の亡者も多く、他者の痛みには鈍感だった。
中には謙虚で思慮深い人もいたが、そういう人はたいてい周囲との調和を築けず、一匹狼で孤立していた。『赤ひげ』の主人公のようなものである。
だから、彼らの生命倫理が主流派になることはついになかった。そうして、医師の権威と事なかれ主義とによって、「20世紀の新たな生命倫理」が形作られていった。
おかげでそれは、大変に「無責任」なものとなった。基本
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