ゆとり教育の若者たちと接する中で痛感したのは、「競争心」というのは人の心から取り除くことができる――ということだ。人は、教育によって誰かの競争心をなくすることができるのである。
ぼくはそれまで、そういうことを想像していなかった。競争心は、誰の心にも当たり前にあると思っていた。ところが、そうではなかったのだ。

競争心は、教育によって取り除くことができる。それは、言い換えれば「勝ちたい」という気持ちを取り除くことでもある。今、「勝ちたい」という気持ちが取り除かれた若者が本当に多い。
そういう「勝ちたい」という気持ちが取り除かれた若者が多い時代に、競争社会が到来してしまった。格差社会が到来してしまったのだ。
そのため、「勝ちたい」という気持ちを取り除かれた若者は、「勝ちたい」という気持ちがまだ残っている人たちに、いいように利用されるようになった。競争心のある人がますます栄え、競争心のない人がますます困窮