結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2014年9月16日 Vol.129
はじめに
おはようございます。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
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来月刊行の『数学ガールの秘密ノート/数列の広場』は、 再校ゲラが編集部から今週送られてくる予定です。 その前に何とか『数学文章作法 推敲編』の初校ゲラを編集部へ戻さなくては、 と思いつつ努力しています。
おかしいな、予定ではちゃんとずれるようになっていたはずなのだが、 こんなふうに初校と再校が交錯するとは……(苦笑)。 しかしながら、好きな本を書いて読者さんにお届けできる喜びを考えたら、 多少忙しいのに文句をつけてはいけませんよね。
もう9月ですから、今年出版される(された)本は以下の三冊でほぼ確定ですね。
・『数学ガールの秘密ノート/丸い三角関数』(4月)
・『数学ガールの秘密ノート/数列の広場』(10月)
・『数学文章作法 推敲編』(12月)
仕込みつつある本はもう少しあるのですが、 出版は来年2015年以降になりますね。 うーん、もう少し力強く進めたいところだけれど……
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さて。
「星野しずる」という歌人を知っていますか。
誠実なおとぎ話よりあたたかなあふれるほどの謎を愛した(星野しずる)
厳密にいえば、星野しずるは「歌人」ではありません。 なぜなら短歌を自動的に生成するプログラムだからです。 以下のサイトですぐに短歌を生成することができます。
◆短歌自動生成装置「犬猿」(星野しずる)
http://sasakiarara.com/sizzle/
このサイトは歌人の佐々木あららさんが運営なさっているようですね。 佐々木あららさんのブログによれば、2009年に 「星野しずる(自動短歌生成スクリプト)」 で第7回枡野浩一短歌賞を受賞なさったとのこと。
上記のサイトで短歌をたくさん生成して読んでいると、 確かにある種の「パターン」が見えてくるのですが、 それでもときどき「はっ」とする言葉に出会うことがあります。
読んでいるうちに歌心が刺激されたので、素人ながらに言葉を並べてみましょうか。 いわば「星野しずるを読みて詠める歌」もしくは「スクリプトへの返歌」です。
五線譜の下に無言の姫君は青みがかった才能の日だ(星野しずる)
数式に絡むシグマのいばらみち姫を追えずに血を流す君(結城浩)
曲線のどこかで雪のぬくもりに隠されているおおげさな歌(星野しずる)
曲線にキスしそびれたフラクタルあなたの描くコッホ雪片(結城浩)
ちなみに解説をすると……フラクタルというのは 自分の一部分に自分自身が含まれているような図形で、 コッホ雪片というのはその代表です。 まるで雪の結晶のような形になったフラクタル図形。 有限回のステップで止めるとギザギザのままなのですが、 はたして無限の彼方では滑らかな曲線になるのかしら……という思いを詠みました。
解説は蛇足ですね。
星野しずるは単純にランダムな言葉を並べているだけではないようです。 いくつかのパターンを用意しておき、 そこにイメージを喚起する語彙(驚くほど少ない)をあてはめています。
言葉がイメージを喚起する。この不思議な言葉の作用は、 言葉を扱う仕事の一端を担っている者としてよく考えたいと思っています。
星野しずるの話は以上。
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結城がTwitterを始めたのは2007年4月のこと。 これまでで最も多くの「お気に入り」をもらったのは次のようなツイートです。
◆最も多くの「お気に入り」をもらった結城のツイート
https://twitter.com/hyuki/status/269221068303134721
|■ストレスフリーで文章を書く方法。
|・〆切と分量を決める。
|・思ってることをすべて箇条書きで書く。
|・読み返して書き足す。
|・一番言いたいことを選ぶ。
|・タイトルを決める。
|・それに関係すること以外は捨てる。
|・順序を考える。
|・文にする。
|・文章にする。
|・全体を読んで整える。
まあ、読み返してみると私らしいツイートですね。 このツイートをしたのは2012年ですが、 おもしろいことに現在でも新たに「お気に入り」されることがあります。
これは結城の想像なのですが…… 何かのきっかけで結城のツイートを見かけた方が、
「この結城という人、どんな人なのかな?」
というのを知ろうと思って favstar.fm のようなサイトを見に行くのではないでしょうか。 そして「ベストツイート」のような項目で上記のツイートに出会う。 結城はそんなふうに想像しています。
◆favstar.fmで結城のツイートを見る
http://favstar.fm/users/hyuki
何を言いたいかというと、Twitterをやっている人は、 過去のツイートがいわば「その人の自己紹介代わり」 になりうるということです。 Twitterをやっている本人がどう思ってるかはさておき、 他の人は過去ツイートを見ることができますし、 そのツイートによって「ああ、この人はこういうことに関心があって、 こういう話をする人なんだな」と判断する、と。
それがよい、わるいという話ではありません。 Twitterは(他のSNSでも、ブログでも同じですが)、そういう使い方をされる。 おもしろい時代といえばそうですし、気が抜けない時代ともいえますね。
このあたりの話、つまりSNS時代にネットを使うリテラシーの話は、 少しまとめて書きたいところではあるのですが、 なかなか時間がままなりませんね。
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それでは、そろそろ結城メルマガを始めましょう。
今回は久しぶりの「再発見の発想法」で「トリガー(Trigger)」を お送りします。
それから、ちょっと重めの文章「「責任」について思うこと」。
そして「文章を書く心がけ」は「高校時代に出会った感動の参考書」 というお話をしましょう。
それでは、お楽しみください!
目次
- はじめに
- 再発見の発想法 - Trigger(トリガー)
- 「責任」について思うこと
- 文章を書く心がけ - 高校時代に出会った感動の参考書
- おわりに