Vol.157 結城浩/フロー・ライティング/note(ノート)を一年利用して/仕事の心がけ/高校時代の思い出/

結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2015年3月31日 Vol.157

はじめに

おはようございます。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。

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新刊の話。

『数学ガールの秘密ノート/微分を追いかけて』は再校読み合わせを無事終えました。 これで結城の手はほぼ離れて、編集部そして印刷所にボールが渡りました。 私には、四月に入ってサイン本を作るお仕事が残るのみです。

 ◆『数学ガールの秘密ノート/微分を追いかけて』
 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4797382317/hyuki-22/

今回は「数学ガールの秘密ノート」シリーズの五冊目。 とうとう「数学ガール」シリーズと冊数が並んでしまいました。 がんばって「数学ガール」シリーズ(本編)も書かなくては!

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電子書籍の話。

『数学文章作法 推敲編』の電子書籍が配信されました。

 ◆『数学文章作法 推敲編』(Kindle)
 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00UWBR406/hyuki-22/

電子書籍発売を記念して、筑摩書房さんより、

 ・結城浩の直筆メッセージカード
 ・1000円分のQUOカード

のプレゼント企画が行われています(2015年4月3日まで)。 詳しくは、以下のページをご覧ください!

 ◆【プレゼント】結城浩さん直筆メッセージ&QUOカード ツイッターキャンペーン
 http://www.chikumashobo.co.jp/blog/news/entry/1114/

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SNSでのもめごとの話。

結城はTwitterでよくおしゃべりをしている。 比較的自由にしゃべっているけれど、注意していることもある。 たとえば、人や物事を闇雲に批判しない(disらない)というのはその一つである。

自分が嫌いなものであっても、それを好きな人もいる。 自分が好きなものを闇雲に批判されたらムッとくる人も多いだろう。 もめごと回避のためには闇雲な批判は避けた方がいいと思っている。

しかしながら、もめごとを回避することが100%可能というわけではない。 また、もめごとを回避した方がいいかどうかも難しいところである。

それこそ、もめごとが起きるので具体的には書かないが、 ずいぶん以前、結城のツイートに含まれている単語に対して、 ある人から文句を言われたことがある。 相手は、その単語に対してカチンと来たらしいのだ。

そういうとき、どうしたらいいのか。

まずは、脊髄反射的にリプライしない方がいい、と思っている。 深呼吸の一つでもして「自分はその単語にこだわりを持っているのか」 と自問する。

もしもこだわりを持っていないなら、 必要に応じて発言を撤回するなり、お詫びをするのがいいと思う。 もしもこだわりがあり、自分にとって重要な意味を持つものなら、 きちんと自分の考えを述べるのがいいと思う。 当たり前のことである。

ただし、自分の考えを述べることで、 相手の考えを変えようと思うのは無駄だ。 自分の考えを述べることは自分の問題だけれど、 相手が考えを変えるかどうかは相手の問題だからである。 一言でいえば、

 「論破しようとするな」

である。そこを間違えると、 相手と不毛なやりとりを繰り返すことになってしまう。

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編集者の話。

ある出版社の編集者は、結城が原稿を送ったときの返信で、 必ずと言っていいほど、

 「今回の原稿を一読した個人的感想」

を一言書いてくれる。もちろん、私はとてもうれしい。

こういう行動というのは、編集部で教わるものなんだろうか。 それとも、その編集者が個人的技量なのだろうか。 また、その編集者は意識的にやっていることなのか、 それとも自然とやっていることなのか。 そんなことを思う。

念のため書いておくと、 原稿を送ったときの返信に「一言感想」を書かない編集者に対して、 不愉快に思っているわけではない。 原稿を渡し、編集してもらうということに関して、 「一言感想」を書くかどうかというのは本質的ではないと思っている。

現実問題、長い原稿の場合には一読するのも時間が掛かる。 「一言感想」のために返信が遅れるのでは本末転倒である。

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pplogの話。

最近、pplogというサイトがお気に入りです。

 ◆pplog
 https://www.pplog.net

このサイトは、 「最新の1件しか公開されたネット上に残せないブログのような何か」 を書くためのサイトです。ブログでいう一つのエントリ(記事)は、 このサイトでは「ポエム」と呼ばれています。 ポエムといっても詩が書かれているとは限らず、 あくまで「ブログ記事のような何か」なのですが。

iPhoneでこのサイトにアクセスし、 ぽつぽつと文章を書き残すのが最近のマイブーム。

 ◆結城のポエム
 https://www.pplog.net/u/hyuki

他の人が書いたポエムも最新の1件しか見ることができないので、 大げさに言えば、文章との一期一会が生まれることになります。

pplogでは、次のポエムを書いたら、 過去のポエムは他人から見られなくなる「安心感」があります。 そのためか、ほんとにポエムっぽい文章が登場したり、 あまり公の場では見られないような心情の吐露が行われたりします。 なさけない弱音だったり、愚痴だったり、不安だったり。

でも不思議なもので、そのような心情の吐露によって、 逆にそのポエムの書き手への共感や親しみが湧いてくることも多いのです。 文章ってあなどれません。

一般に、誰かと「深い会話」をするためには、 どこかで自分の深い部分を開示する必要があります。 互いに表向きの顔をし続けたまま、 「深い会話」に入るのは難しいですよね。 でも、自分の深い部分を開示するのには、 いろんな意味でのリスクがつきまといます。 誰しも、かっこわるい自分を他の人に見せたくはないものですから。

ところがこのpplogでは、 図らずも深い部分の開示が行われてしまうことがあり、 そのために深い共感や親しみを感じてしまうのかもしれません。

このpplogというサイトの可能性に興味津々です。

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彼女の話。

結城は彼女(妻)からこんなふうに言われることがある。

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 あなたはよく、
 
  『これならばこうだ。
   でも違ったならば、こうだ』
 
 と言う。
 でもそれじゃ、あなたはどう思っているのかわからない。
 あなたの考えがわからない。
 -----

どうも、条件を切り分けたり、分析的な言い回しで考えを述べることが、 《当事者意識の欠如》と誤解されているのではないかと思う。 というこの文章自体が分析的だな。

しかし、自分としては《当事者意識》があるときほど分析的になる傾向がある。 つまり、当事者となって、何とかしなくちゃと思えば思うほど、 感情ではなくて論理で判断しなくてはという傾向が強まるという意味である。

そういえば、結城は彼女に対して「大事な問題なのに、 そんなにのめり込んだら適切な判断はできないんじゃないか」 と思うことがある。考えてみると、さっきの彼女の発言とちょうど正反対である。

特に結論はない。

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アイコンの話。

先日のホワイトデー(3/11)で、 結城のアイコンと数学ガールの登場人物を「クッキー」 にしてくださった方( @Ruriatto さん)がいらっしゃいましたのでご紹介。

 https://twitter.com/Ruriatto/status/576644054319935488/photo/1

こちらは同じ方の円周率クッキーです。

 https://twitter.com/Ruriatto/status/576678788244713472/photo/1

また、結城のアイコンをピクセルで描いてくださった方( @nun_ さん) もいらっしゃいましたので、ご紹介します。

 https://twitter.com/nun_/status/575466174449774594/photo/1

それから、結城のアイコンをフェルトマスコットにしてくださった方( @ippikihtz さん) もいらっしゃいました。彼女の分まで作ってくださり感謝です!

 https://twitter.com/ippikihtz/status/580355868165701632/photo/1

みなさんに感謝です!

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さて、それでは今週の結城メルマガを始めましょう。

今週は文章を書くことについての連載エッセイ「フロー・ライティング」で、 「春に思う」というお話をお届けします。 春になって新しいことを始めたいけれど……という話題です。

それから、note(ノート)を始めて一年になるので、 一年間の数字を交えて簡単な振り返りをします。

「仕事の心がけ」のコーナーでは 「作業ログとお知らせシステム」という話、 「教えるときの心がけ」のコーナーでは 「高校時代の思い出」をお送りします。

お楽しみください!

目次

  • はじめに
  • フロー・ライティング - 春に思う
  • note(ノート)を始めて一年を振り返る
  • 作業ログとお知らせシステム - 仕事の心がけ
  • 高校時代の思い出 - 教えるときの心がけ
  • おわりに