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●○●~小沢一郎予言録 ~第2回~●○●
武冨薫(ジャーナリスト)

 政治家に求められる資質のひとつが、「物事を予見する力」ではないか。といっても、大仰に”予言者 たれ”というつもりはない。「事態がこのまま推移すれば、こうなってしまう」「今のうちに政策を転換しなければ、最悪の場合、国民の生命と財産にかかわる」ーーそう想像を働かせ、将来起こりうる事態をできるかぎり的確に見通すことだ。とくに危機に直面した時に問われる能力である。
 実行が難しいのはその先だろう。
 その予見がどんなに痛みや犠牲を伴う厳しい内容であっても、恐れずに国民にメッセージを伝え、〈将来起こりうる現実〉を直視させ、先手を打つ政策を実行する。そうした結果責任を伴う決断は官僚の分を超え、政治家にしかできない。
 小沢一郎という政治家が長年、永田町の権力興亡の中で中心にあり続けた理由は、この「予見する力」と、政治家の「役割と責任」を常に意識した行動をとってきたからではないかと思っている。
 現在の日本社会は、大きな難題をいくつも抱え、政治はそれを乗り越えることができないでいる。原発事故の処理と震災復興は先が見えず、消費税増税をはじめとする国民負担はとめどなく増加している。外交面でも、米国の国際的プレゼンス低下で世界が多極化する中にあって、その極のひとつである中国ではテロが表面化し、ついに共産党支配体制が大きく軋みはじめた。内乱に発展する危険性さえ出てきた。中国情勢の帰趨によっては極東はもちろん国際社会全体に計り知れない影響を与えるはずだ。
 小沢氏の過去の発言を辿ると、そうした事態を早くから予見し、警鐘を発していたことがわかる。そこ で小沢語録を採録しながら、改めて当時の物の見方の基礎になった認識や考えを問い直し、今後の処方箋につなげていきたい。”だからいったじゃないか”ではなく、”今からでも遅くない。こうしなければならない”という政治の針路を探るのがこの『小沢一郎予言録』の企画意図である。