猪瀬直樹ブログ
[MM日本国の研究848]「消されたまま『戦前100年の記憶』」
⌘ 2015年05月28日発行 第0848号
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■■■ 日本国の研究
■■■ 不安との訣別/再生のカルテ
■■■ 編集長 猪瀬直樹
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今週のメルマガは現在発売中の月刊「WiLL」7月号の特集「戦後70年、私は
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です。日本人にとってのほんとうのビックバンとはなんだったのか――。
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「消されたまま『戦前100年の記憶』」
戦後70年とは言うまでもなく敗戦から70年を意味する。僕を含めた多く
の戦後世代が学校教育の現場で、敗戦後に新たな世界がはじまったかのように
教わってきた。まるで1945年(昭和20年)がビックバンであったかのように。
しかし、戦後70年という切り取られた時間と空間だけでは、いま我々が生
きている戦後社会というものを正しく認識できない。すなわち自画像を描けず
自己認識にもたどり着けないのだ。
戦後70年が敗戦によってもたらされたものである以上、先の大戦について
の理解が欠かせない。なぜ日本は戦争をしたのか。それも勝てる見込みのない
戦争を――そうした疑問が『昭和16年夏の敗戦』(中公文庫)を書くきっか
けとなった。
日本にとって本当のビックバンはどこにあったのか。歴史を遡って考えると、
僕は1853年(嘉永6年)の黒船来航にあったと考えている。
「泰平の眠りを覚ます上喜撰 たつた四杯で夜も眠れず」
と、日本は初めて弱肉強食の国際社会に組み込まれ、国家が生存していける
かどうか、というぎりぎりの命題を突き付けられたからだ。つまり、戦後70
年を理解するためには、黒船来航以降の「戦前100年」を理解しなければな
らない。
(略)戦後日本は、弱肉強食の社会はいまもなお続いているという歴然たる事
実を忘れ、国家生存の意識も喪失し、敗戦によってつくられた歴史が断絶した
戦後空間のなかで安穏と過ごしてきた。
そうした姿を、僕はよくディズニーランドにたとえる。アメリカの傘の下に
入り、門番を引き受けてもらうことで戦争を想定外にした。戦前培った軍事技
術を民間部門に転用し、自動車や電機産業で自由に外貨を稼ぐことのできる、
おとぎの国だったのだ。冷戦の終結で情勢が変化したもののディズニーランド
の中にい続け日本人の意識も変わることがなかった。
いま日本は、リセットされた「戦前100年の記憶」を甦らせ、戦後空間が
敗戦によってつくられた世界であるという認識をしっかりと持つことが急務で
ある。そうしなければいつまでも日本は一国平和主義から脱却できないだろう。
単なる軍国主義から平和主義への置き換えではない、「戦略なき国家運営」の
結果としての「敗戦の重み」を認識すべき時である。
(『WiLL』7月号より抄録)
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