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第145回 ほんのり怖い人達のウラガワ(1)
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第145回 ほんのり怖い人達のウラガワ(1)

2017-07-08 21:00

    オンナのウラガワ ~名器大作戦~
    第145回 ほんのり怖い人達のウラガワ(1)


    ◆もくじ◆

    ・ほんのり怖い人達のウラガワ(1)

    ・最近の志麻子さん 
     
    太田出版よりイヤミス『嘘と人形』発売
     8/6(日)「オメ★コボシ39」開催
     角川ホラー文庫より『現代百物語 不実』発売中
     TV「有吉反省会」にヒョウ姿でひきつづき出演中
     「岩井志麻子のおんな欲」連載中
     カドカワ・ミニッツブック版「オンナのウラガワ」配信中
     MXTV「5時に夢中!」レギュラー出演中

    ・著者プロフィール

    ===

    怪談シーズンの夏!
    小さいころから怖い話が好きで、いまや職業としてホラーにたずさわっている岩井さん。
    大人になると、物語のお化けより生身の人間の方がよっぽど怖いのを実感する日々。
    日常の一コマにも、心惹かれる「そこはかとなく怖い話」がある。

    地方ラジオ局のDJをしている陽子には、中学生の娘がいる。
    陽子の番組に、明らかに作り話の投稿をしてくる人がいて……。


    バックナンバーはこちらから↓
    http://ch.nicovideo.jp/iwaishimako/blomaga

    2014年11月~15年12月のバックナンバーは、「月別アーカイブ」の欄からご覧ください。
    2016年1月「会えなかったけど気になる女たちのウラガワ
    2月「接点がないのに気になる人たちのウラガワ
    3月「嘘をつかずにいられない人たちのウラガワ
    4月「春のおかしなお便りの数々のウラガワ
    5月「距離感のおかしい人たちのウラガワ
    6月「台湾から連れてこられたある女性のウラガワ
    7月「大人の夏の観察日記のウラガワ
    8月「大人だからわかる怖い話のウラガワ
    9月「『志麻子のヤバモンGO』なウラガワ
    10月「取り返せない夏の思い出のウラガワ
    11月「常夏の国で生きる女の秋のウラガワ
    12月「冬を生きながら春を待つ女達のウラガワ
    2017年1月「自分を重ねてしまう若者たちのウラガワ
    2月「冬に聞いた奇妙な怪談のウラガワ
    3月「春のさなかに聞いた怖い話のウラガワ
    4月「木の芽時な人達のウラガワ
    5月「五月だけどさわやかになれない人たちのウラガワ
    6月「面識なしでも喜怒哀楽を喚起する人々のウラガワ



    ※2014年10月以前のバックナンバーをご購入希望の方は、本メルマガ下部記載の担当者までお知らせください。リストは下記です。

    2013年7月~12月 名器手術のウラガワ/エロ界の“あきらめの悪さ”のウラガワ/エロとホラーと風俗嬢のウラガワ/風俗店のパーティーで聞いたウラガワ/エロ話のつもりが怖い話なウラガワ/風俗店の決起集会のウラガワ
    2014年1月~10月 ベトナムはホーチミンでのウラガワ/ベトナムの愛人のウラガワ/永遠のつかの間のウラガワ ~韓国の夫、ベトナムの愛人~/浮気夫を追いかけて行ったソウルでのウラガワ/韓国の絶倫男とのウラガワ​/ソウルの新愛人のウラガワ​/風俗嬢の順位競争のウラガワ​/夏本番! 怪談エピソードの数々のウラガワ​/「大人の夏休みの日記」なウラガワ​/その道のプロな男たちのウラガワ​

    ====

     怪奇現象は四季を問わないし、私だって真冬にもホラー小説は書いているが。七月になると、あ~シーズンが来たなぁとしみじみし、わくわくもする。

     子どもの頃から楳図かずお先生に心酔し、どんなジャンルであれ怖い小説や映画、アニメにも夢中になっていて、ついに職業としてホラーにたずさわるようになってしまった。

     だけど大人になると、物語のお化けより生身の人間の方がよっぽど怖いのを実感する。

     凄惨な殺人事件のニュースなども怖いのは当然だが、ちょっと見方を変えれば笑い話になってしまったり、気にならない人には全然気にならない日常の一コマでしかない、という「そこはかとなく怖い話」も心惹かれてしまうのだ。

     今月は、そういうほんのりとした怖い人達の話を書いてみる。例によって登場人物を特定されないようすべてここだけの仮名にし、設定なども多少の脚色をさせてもらう。

                        ※

     坂田陽子は、ある地方ラジオ局のDJをしている。アラフォーでバツイチ、前夫との間に中校生になる娘がいるが、夫側に引き取られたためあまり会うこともない。離婚後、ちょっと噂になった業界の男はいるが、再婚にまでは至ってない。

     そんな経歴や身上を、特に隠すこともない。といっておもしろおかしいネタにして変な売り物にしたりもせず、淡々とさらさらと強い感情をあまり入れずに語る。
     それが陽子の優しいクールさ、大人の余裕と哀しみといったものを感じさせた。

     見た目は正直、イマイチだ。おもしろおかしく笑われる、いじられるほどではないが、美人ともスタイルがいいともいわれない。だからテレビからはあまりお呼びはかからない。本人もそれをよしとしていて、のんびり目立たず今の仕事を楽しみたかった。

     その陽子が、番組内で週に一度の人生相談コーナーを持たされた。男女を問わずいろんな世代の人が、深刻な話から単なる愚痴までメールやファックスを寄越すのだが。中には、明らかに心を病んでいる人からのものもあるう。

     有名アイドルにストーカーされているとか、陽子さんはぼくを二十四時間監視してぼくのことばかりしゃべっているとか、夜中になると部屋中に白蛇があふれるとか。

    「でもそういう人達のは、最初からスタッフが除外するし。こんなの来てると見せてもらっても、私も番組内で取り上げたりしないし」

     スタッフも陽子も困るのは、一見まともそうな相談者とその相談だ。

    「あきらかに同一人物が、別人のふりをして内容もいろいろ変えて相談してくるんです。つまり、それってすべて作り話なんですよ。
     可愛いげのある人もいます。一度取り上げられたら、また応募しても初めての相談者の方を優先される。だから別人のふりをして、私に何度も相手をしてほしい熱心なファンとか。もっとシンプルに、採用されたらもらえる特製ボールペンがもっと欲しいとか。
     怖いのは……第一の目的が私を傷つけることになっている人です」

     その女性は、最初は夏蜜柑というペンネームを使い、四十八歳としてあった。

     
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