オンナのウラガワ ~名器大作戦~
第196回 来年まで引きずりそうなアノ人のウラガワ(1)
◆もくじ◆
・来年まで引きずりそうなアノ人のウラガワ(1)
・最近の志麻子さん
1月に『シマコの週刊!?宝石 』光文社文庫より発売
TV「有吉反省会」にヒョウ姿でひきつづき出演中・12月29日は年末スペシャル
「岩井志麻子のおんな欲」連載中
カドカワ・ミニッツブック版「オンナのウラガワ」配信中
MXTV「5時に夢中!」レギュラー出演中
・著者プロフィール
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あっという間に年の瀬ですが、12月になったからといって、すべて今年のうちに一区切りというわけにはいかないもの。
来年も引きずりそうな物事や人々についてつづります。
地方で年に一度くらい開催しているトークイベント。
そこで岩井さんは、再会しなければよかった人に会ってしまった……。
女装した男性だったのだが、女装がどうとかではなくて、「気をつけなければならない」タイプの人で……。
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2014年11月~16年12月のバックナンバーは、「月別アーカイブ」の欄からご覧ください。
2017年1月「自分を重ねてしまう若者たちのウラガワ」
2月「冬に聞いた奇妙な怪談のウラガワ」
3月「春のさなかに聞いた怖い話のウラガワ」
4月「木の芽時な人達のウラガワ」
5月「五月だけどさわやかになれない人たちのウラガワ」
6月「面識なしでも喜怒哀楽を喚起する人々のウラガワ」
7月「ほんのり怖い人達のウラガワ」
8月「真夏なのに秋の予感な有名人たちのウラガワ」
9月「私が見たテレビの中の人のウラガワ」
10月「大人だけど枯れるには早い人たちのウラガワ」
11月「年下韓国人夫とのアジア旅のウラガワ」
12月「捨ててもいいじゃないかのウラガワ」
2018年1月「命や生きることについて考えたウラガワ」
2月「人はなかなか変わらないのウラガワ」
3月「きれいに卒業できない女たちのウラガワ」
4月「新たな出会いの不気味なウラガワ」
5月「良い季節でも人は病むウラガワ」
6月「『有名な男の女』だった二人のウラガワ」
7月「怪談の季節! ゾッとする実話なウラガワ」
8月「嘘と本当のあわいの怖い話のウラガワ」
9月「大人になりきれない人達のウラガワ」
10月「ベトナム旅行チン道中のウラガワ」
11月「しみじみしんみりな出来事のウラガワ」
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2013年7月~12月 名器手術のウラガワ/エロ界の“あきらめの悪さ”のウラガワ/エロとホラーと風俗嬢のウラガワ/風俗店のパーティーで聞いたウラガワ/エロ話のつもりが怖い話なウラガワ/風俗店の決起集会のウラガワ
2014年1月~10月 ベトナムはホーチミンでのウラガワ/ベトナムの愛人のウラガワ/永遠のつかの間のウラガワ ~韓国の夫、ベトナムの愛人~/浮気夫を追いかけて行ったソウルでのウラガワ/韓国の絶倫男とのウラガワ/ソウルの新愛人のウラガワ/風俗嬢の順位競争のウラガワ/夏本番! 怪談エピソードの数々のウラガワ/「大人の夏休みの日記」なウラガワ/その道のプロな男たちのウラガワ
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十二月になったからといって、すべて今年のうちに終えたり一区切りつけられたりするものではない。来年に持ち越しだな~、というものはたくさんある。
そんなわけで今月は、なんとなくいつまでも解決できずにもやもやしたまま、やっぱり来年もこれは引きずるわ、という物事や人々を書いてみる。全編に渡って登場人物はすべて仮名、諸々を特定されないよう設定もちょっと変更しているのをご了承ください。
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年に一度くらいだが、関東の町にあるライブハウスでトークイベントを行っている。
東京の本店では定期的に仲良しの司会者と三か月に一度のトークイベントを行い、それとは別のライブやイベントにもときおりゲストに呼ばれる。
東京店での仲良し司会者達とのそれは、前列に陣取っているのは毎回ほぼ常連さん達。
「あなたまた来てくれたね。あれっ、今日はあの人が来てないよ」
みたいに、こちらも顔も覚えてしまっているから、再会すればうれしなったり、いなければ心配になったりする。
それが地方の系列店だと正直、年に一度あるかないかくらいだから、常連さんであったとしてもそんなに顔を覚えられないでいる。
しかし先日そちらの店で、再会しなければよかった人が目の前に来た。
舞台の真横の席は、スタッフがスクリーンなどの機材を使うとき座ったり、突然舞台に上がることになった人が待機する場所で、普通の客は座らないのが暗黙の了解だ。
先着順なので、熱心なファンや早くから並んでいる人は当然、舞台に近い席から座っていく。ところがその客は、開幕ぎりぎりに入って来たにも関わらず、堂々と私達に一番近い真横の席にどかっと座った。
それでも、ズルいだのそこは座るなだの、誰も何もいわなかった。いや、いえなかった。
明らかな三十過ぎの成人男性が、ブラジャーすけすけのひらひらしたブラウスに、やっぱり透け気味のふわふわしたスカートをはいている。
私は何やら彼に不穏な空気というのか、居心地悪い視線を感じた。決して、女装した男だから、ではない。そんな人は新宿歌舞伎町に住んでいれば、しょっちゅう見かける。
彼は女装を取り払っても、何かいろいろな意味で「気をつけなければならない」と「気をつけてあげなければいけない」のを感じさせた。
とはいえ、トーク中はじっとおとなしく聞き入り、変な行動に出ることもなかった。
イベントは無事に終わり、舞台から降りようとしたら、例の女装男が勢いよく立ち上がった。あっという間もなく、控え室に戻ろうとした私に駆けよってきた。
ヤバイと立ちすくんだが、無視して逃げることもできなかった。