オンナのウラガワ ~名器大作戦~
第262回 いい大人なのに未経験のウラガワ(1)

◆もくじ◆

・いい大人なのに未経験のウラガワ(1)

・最近の志麻子さん 
 配信イベント【志麻子の部屋】シンガポール特別編 11/14(土)開催
 【配信版】月刊オメ★コボシ 11/8(日)開催
 TV「有吉反省会」にヒョウ姿でひきつづき出演中

 「岩井志麻子のおんな欲」連載中
 カドカワ・ミニッツブック版「オンナのウラガワ」配信中
 MXTV「5時に夢中!」レギュラー出演中

・著者プロフィール

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いい年の大人になっても、日常のなかで意外なことが未経験だったりするもの。
お金持ちの奥様である刈間夫人は、いつも高級なブランド服を着こなしている。
今まで何人もの女たちに、服をおねだりされたことがあるそうで……。


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2014年11月~18年12月のバックナンバーは、「月別アーカイブ」の欄からご覧ください。
2019年1月「去年に縁があったあれこれのウラガワ
2月「台湾で初めて会った人たちのウラガワ
3月「胸に引っかかる人を思う春のウラガワ
4月「こういう人いるよねという出会いのウラガワ
5月「働くということについて考えたウラガワ
6月「私なりのプロファイリングをしてみたウラガワ
7月「芸事業界の人たちの願いごとのウラガワ
8月「怖さひかえめな怖い話のウラガワ
9月「まだ挽回できるかどうか気になるウラガワ
10月「なぜか惹かれる未解決事件のウラガワ
11月「今頃になってわかってきた出来事のウラガワ
12月「とりあえず終えたかな、というウラガワ
2020年1月「愛しい南国の怖い話のウラガワ
2月「ひきつづき東南アジアの怖い話のウラガワ
3月「どこか心残りの別れのウラガワ
4月「未経験な世の中のあれこれのウラガワ
5月「「あの人実は」「あの人やっぱり」のウラガワ
6月「アマビエ的なものや人のウラガワ
7月「怖い話をエンタメとして楽しみたいウラガワ
8月「どこか楽しめる怖い話のウラガワ
9月「エンタメとして味わいたい人の怖さのウラガワ


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2013年7月~12月 名器手術のウラガワ/エロ界の“あきらめの悪さ”のウラガワ/エロとホラーと風俗嬢のウラガワ/風俗店のパーティーで聞いたウラガワ/エロ話のつもりが怖い話なウラガワ/風俗店の決起集会のウラガワ
2014年1月~10月 ベトナムはホーチミンでのウラガワ/ベトナムの愛人のウラガワ/永遠のつかの間のウラガワ ~韓国の夫、ベトナムの愛人~/浮気夫を追いかけて行ったソウルでのウラガワ/韓国の絶倫男とのウラガワ​/ソウルの新愛人のウラガワ​/風俗嬢の順位競争のウラガワ​/夏本番! 怪談エピソードの数々のウラガワ​/「大人の夏休みの日記」なウラガワ​/その道のプロな男たちのウラガワ​

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 秋とは陽暦では九月、十月、十一月となっている。十月はど真ん中、秋の盛りだ。子どもの頃から、秋って大人の季節だなと感じていた。子どもの春、若者の夏、老年の冬。

 今の自分は、女としてちょうど十月くらいを生きているのではないかという気がする。けれどそんな大人になっても、まだ経験してないこと、知らないことはたくさんある。

 まだヨーロッパ旅行はしてないとか、大型バイクを運転したことがないとか、外国の本を原書で読むって今からできるかなとか、スカイダイビングもバンジージャンプも未経験とか、思いつくことはたくさんあるが。

 そんな大ごとでなく、もっと日常の中で意外なことが未経験だったりするのだ。いい大人になったのに。というわけで、今月のテーマはそれだ。

 例によって全編に渡り、人名も背景も多少の脚色を加えてあるのをおことわりしておく。

                    ※

 刈間夫人にその話を聞いたとき、それ私はないです、どっちも、といってしまった。
 すごいお金持ちの奥様である刈間夫人は、タワーマンションのかなりの高層にお住まいで、当然ながらお金持ちばかりが周りにいる。けれどいろんな国で暮らした経験があるためか、私のようなちょっと変な人達もおもしろがってくれる。

 もう七十を超えているが、五十代くらいに見える。その方面にウトい私でもわかるような高級ブランド服を、いつも素敵に着こなしておられる。
 かっこいいな、おしゃれだな、と憧れても、欲しいとは思わなかった。そもそも、服に
何十万円もかけられない。

 と、私は刈間夫人に限らず他人様の素敵な服を見ていいなと見とれても、自分のお金で買うか買わないかという発想しかない。って、普通はそうじゃないか。まぁ、旦那さんやパパが金持ちなら、あれ買ってもらおう、となるのかもしれないけどね。

 ところが刈間夫人は何人もの女達に、服をおねだりされるというのだ。ちょっとばかり、虚を突かれた感じもした。私は今まで生きてきて、一度も他人の着ている服をちょうだいといったことはない。

 その逆もだ。誰かに、志麻子さんの着ているその服ください、といわれたこともない。私の服が安物ばかりでダサい、みんなヒョウ柄じゃないか、ってのもあるだろうけど。

 やや変則的、例外的なことがそれぞれ一つずつあったか。もらったのは、きれいな元国会議員さんの高価なスーツ。私がレギュラー出演している番組で、ゲストの彼女がいつも同じ格好をしているので、着ない余っている服をみんなに配れ、みたいな企画になった。
 あげたのは、人気の可愛い歌手に、豹の顔がついたアメ横で買ったサマーセーター。二人で服を取り換えっこして撮影し、その後に記念品としてさし上げた。
 どちらも仕事の場でのことで、ほしくてねだった、ほしいとねだられた、というのじゃない。とはいうものの、高価なスーツはさすがに着心地が良く大事にしているし、ヒョウのセーターも歌手は着てはいないだろうが、捨ててもいないよね(たぶん)。

 ともあれ、刈間夫人だ。気前よく、欲しいという人にはあげてきたけれど、今年に入ってかなり不愉快な思いをさせられたのが二人いる、という。 

 一人目は売れない女優というか、自称女優だ。その桃子は若作りしているがもう四十路で、二十歳くらいから一応は女優の仕事はしていたが、ほぼ一言二言のセリフがある、脇役というよりエキストラみたいなものばかりだった。
 最後の仕事も二十年近く昔の、ほぼエキストラといっていいVシネマ出演だ。
 一般人の中にいれば美人なので、適当に業界の男にくっついてお金や仕事をもらってきたが、今は内縁の夫がいて、女優は開店休業状態。専業主婦といっていい立場だった。

 そんな桃子が、かなり売れた時期もある俳優に取り入った。彼ももうご老人で、体も少し不自由になっており、ほぼ引退状態で奥様とひっそり暮らしていた。