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第318回 心残りな事件の男たちのウラガワ(3)
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第318回 心残りな事件の男たちのウラガワ(3)

2022-04-30 22:00

    オンナのウラガワ ~名器大作戦~

    ◆もくじ◆

    ・心残りな事件の男たちのウラガワ(3)

    ・最近の志麻子さん 
     5/8(日)「オメ★コボシ69」開催
     公式アパレルグッズ発売中!
     『遊星王子』「日テレプラス」で連ドラ放送
     5/6(金)公開の映画『死刑にいたる病』に出演
     「夕やけ大衆」で「四畳半ホラー劇場」を連載中
     『でえれえ、やっちもねえ』角川ホラー文庫より発売中

     カドカワ・ミニッツブック版「オンナのウラガワ」配信中
     MXTV「5時に夢中!」レギュラー出演中

    ・著者プロフィール

    ===

    自分とは全然関係ない昔の事件なのだけれど、なんだか気になるエピソードの男たち。

    ずっと折り合いの悪かった養父母を殺し、身籠っていた恋人を放って東京に逃げた男。
    潜伏生活にも疲れていたところで、別の男を殺してその人物になりすましたのだが、驚くことにその別人として就職し、結婚までしてしまう。
    ところがその後、ある事情で焦った男は、また別の殺人を犯すことになり……。


    バックナンバーはこちらから↓
    http://ch.nicovideo.jp/iwaishimako/blomaga

    2014年11月~20年12月のバックナンバーは、「月別アーカイブ」の欄からご覧ください。
    2021年1月「ゆるく共存していくことを考えさせられるウラガワ
    2月「いつの間にか入り込む怖いもののウラガワ
    3月「もはや共存するしかないあれこれのウラガワ
    4月「変わらぬもの、変わりゆくもののウラガワ
    5月「子どもっぽい大人、大人になっても子どもな人のウラガワ
    6月「ドライになり切れないウェットな物事のウラガワ
    7月「ホラーの夏なので怖い怪談実話なウラガワ
    8月「夏といえばの怖い話・奇妙な話のウラガワ
    9月「歳を取れば大人になれるわけではないウラガワ
    10月「この歳になって初めて知ることもあるウラガワ
    11月「「どこで逸れたんだろう」と考えてしまうウラガワ
    12月「人生そのものがお楽しみ会のウラガワ
    2022年1月「まだ楽観視できない未来を思うウラガワ
    2月「記憶が混乱するアレコレのウラガワ
    3月「どうしても心残りなウラガワ


    ※2014年10月以前のバックナンバーをご購入希望の方は、本メルマガ下部記載の担当者までお知らせください。リストは下記です。

    2013年7月~12月 名器手術のウラガワ/エロ界の“あきらめの悪さ”のウラガワ/エロとホラーと風俗嬢のウラガワ/風俗店のパーティーで聞いたウラガワ/エロ話のつもりが怖い話なウラガワ/風俗店の決起集会のウラガワ
    2014年1月~10月 ベトナムはホーチミンでのウラガワ/ベトナムの愛人のウラガワ/永遠のつかの間のウラガワ ~韓国の夫、ベトナムの愛人~/浮気夫を追いかけて行ったソウルでのウラガワ/韓国の絶倫男とのウラガワ​/ソウルの新愛人のウラガワ​/風俗嬢の順位競争のウラガワ​/夏本番! 怪談エピソードの数々のウラガワ​/「大人の夏休みの日記」なウラガワ​/その道のプロな男たちのウラガワ​

    ===

     花見も、できなくはないのだ。マスクして、ひっそりと少人数で距離を保ち、お酒は飲んでも控え目にしていれば。

     しかし、そんな気を遣って花見して楽しいか。この御時世、いろいろ気を遣わなきゃならない、というのもわかっている。わかっている、けれど。

     あきらめと虚しさと、でも希望や明るい展望もある四月。春めいてきた先月は、妙に心に引っかかり続けている女達を書いてみた。春とも自分自身とも、何の関係もない女達。

     そこまで有名な事件ではない、でも怖い物語がある女達。今月は、それの男版を書いてみた。こちらも、そこまで犯罪史に残る大事件の男達ではない。関係者を除けば、風化していった市井の事件だ。映像化も書籍化もされず、私が根強く興味を持つくらいだ。

     生き残った関係者は、今年も花見ができなかったねと、誰かにささやいているか。

                        ※

     この事件は、私も生まれていない七十年近く昔に起きたものだ。
     田野という中国地方で生まれた二十七歳の男は、ずっと折り合いの悪かった養父母を殺し、身籠っていた恋人も放って東京に逃げる。

     翌年、潜伏生活にも疲れていたところに、中村という五歳年下の男と知り合う。
     中村から身分証明書を買い取った田野は、中村を故郷の近くの町に連れて行き、殺害する。中村は身元不明の無縁仏として、荼毘に付された。

     田野は、中村になりすますことに成功した。素知らぬ顔で東京に戻り、中村として就職し、なんと結婚までしたのだ。もちろん妻は、彼を中村だと信じていた。

     ところがその翌年、泥棒目的ではなく所用で田野は他家に入ったのだが、ついそこにあった正露丸を盗んでしまい、家人に通報された。

     その日のうちに釈放されたが、警察で指紋を取られてしまった。
     養父母殺しの現場に多数残されていた息子、つまり田野の指紋と、中村と名乗る男の指紋が同一であるとばれたら、終わりだ。そこから、中村殺しまでがばれてしまう。

     焦った田野は、たまたま知り合った三歳年上の仁科に目をつける。関東の町に連れ出して殺害し、指紋を削り取った上で遺体を捨て、その遺体が中村(正確には、中村を名乗る田野)であるよう工作をする。そして自分は、今度は仁科になりすました。

     ところが遺体の指紋を完全に消しきれておらず、身元が仁科であると判明してしまった。仁科が最近、何者かに身分証明書を売っていたことも判明する。

     そして、警察はついに養父母殺しの田野と、正露丸を盗んだ中村と名乗る男の指紋が同一であるのを突き止めた。

     
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