その19 グレイシー柔術もう一つの解釈。(後半)
武術の口伝である、身体の形や関節の角度も、上手くグレイシー柔術のテクニックに隠されている。きちんとお互いにテクニックを繰り返し行うと、身体は日常では充分過ぎる程に覚醒する。
武術には呼吸の秘伝と口伝も当然ある。呼吸法も付け焼刃的に行うと身体を壊す。グレイシー柔術の呼吸のコツは、疲れないで出来るだけ長く闘えるような状態を維持すること。これは呼吸法の仕組みを上手に表現している。
柔らかい呼吸が出来ればこれも普通の人の健康には充分過ぎる程の効果がある。武術には激しい呼吸法ももちろんある。激しい呼吸法は鍛錬を重ねて身体が出来上がった門人にのみ伝えられる。そうでなければ生半可な呼吸法では身体を壊しかねないからだ。
呼吸法の深い部分は伝える門人を選ぶ。古流武術の口伝を元に改めてグレイシー柔術を検証すると、素晴らしく巧みに護身を覚えることと健康、強健になる運動が一緒になったテクニックで構成されていることに驚いた。しかも2人で組んで行うのがグレイシー柔術の特色。通常、型は一人で行う。しかしグレイシー柔術はテクニックの形に型をはめ込んで2人で行う。カーリーがテクニックをやる際に言っていた言葉を思い出す。
「いいかい、テクニックを使う状況は常に変化する。だから基本に忠実にテクニックはやるんだ。基本から離れれば離れるほどテクニックの融通が利かなくなる」
「基本という中心を守ると変化に対応出来る。中心からズレたら、一部の変化にしか対応出来なくなる。いつも中心を意識してテクニックをやるんだ。中心を意識するのはテクニックをやる側だけじゃない。テクニックを受ける相手も同じだ」
「テクニックを使う状況は常に変化する。100回あれば100通りになる。だからこそ、テクニックを練習する時には、その状況を正確に再現する必要がある。正確にテクニックを使う状況を再現すると、テクニックを使う意味が見えてくるんだ」
「一体全体どうしてこのテクニックが生まれたのか。その意味を知ることでテクニックの奥が見えて、中心が見えてくる。中心が見えるからこそ変化に対応ができる。テクニックの中心を見るにはテクニックを再現してくれる相手が必要なんだ。同じアカデミーで練習する相手は仲間なんだ。お互いがお互いを高めあって強くなるんだ」
「テクニックは一人で覚えるのは難しい。だから、分かるかい? テクニックを上手に覚えたければ、上手に相手が出来るようにするんだ。上手に相手をすると相手もきちんと接してくれる。テクニックの時間にスパーリングをしても意味が無いんだ。テクニックの時間は自分を高める時間なんだ。自分の我を消すのがテクニックの受けをやる時間の練習さ」
「自我が強すぎると闘いでも負けるぞ。そう思わないかい? 自分勝手にグレイシー柔術を使ったり、自分勝手にテクニックを変えることは禁止だ。それでは強くなれないんだよ。相手のことを考える。それが対戦相手の動きを先に知ることに繋がる始まりなんだ」
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