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『LEGO® ムービー』出演の大御所声優・羽佐間道夫さんにインタビュー
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『LEGO® ムービー』出演の大御所声優・羽佐間道夫さんにインタビュー

2014-03-20 07:00
     
    ヨーロッパ生まれの超人気玩具「レゴブロック」を映画化した『LEGO® ムービー』。今作は、レゴブロックをデジタルで忠実に再現した驚きの映像だけでなく、日本語吹き替え版では、150人ものキャラクターをたった8人の声優が演じたことでも話題の作品です。

    今回はそんな8人のうちの1人であり、ニュース番組のナレーション、『ロッキー』などの作品でのシルベスター・スタローン、アニメ『銀河英雄伝説』の「シェーンコップ」などなど、多数の吹き替え&出演作で知られる大ベテラン声優・羽佐間道夫さんにインタビューして参りました。
     


    【大きな画像や動画はこちら】

     
    ――『LEGO® ムービー』は、声優という視点から見てどんな作品でしたか?

    羽佐間道夫(以下、羽佐間):正直なところ、はじめて見た時は「なんだこれは!?」と驚きましたね。口の動きに合わせて厳密な吹き替えをするというわけじゃないので、私としては「これぞ待ってた!」という吹き替えでもあります。

    普通の映画の吹き替えの場合、対象が人間なので間を取ったり、呼吸を合わせたりするのが結構大変なんですよ。でも、この作品はキャラクターをこちらのペースに引きずり込んで自由に吹き替えられるというのが良かったですね。

    私には昔やった『キャプテン・スカーレット』のような、人形劇のような懐かしい雰囲気も感じられました。


    ――今まで沢山のキャラクターを演じられていますが、普段、役を作るにあたってどのようなことを心がけていますか?

    羽佐間とにかくいろんなものを見ることですね。例えば電車に乗っていても、車内にいる人、そして降りていく人も観察します。電車を降りてから真似したりもしますよ。そういうことを積み重ねていくことが役作りなんじゃないかなぁ。

    『クレヨンしんちゃん』の矢島晶子(今作ではワンダーウーマンなどを吹き替え)の、あの特徴的なしゃべり方も電車の中で子供を見て思いついたんだそうですよ。やはり我々の役作りは人間観察が一番大事ですね。

    私は自分の仕事は塗り絵師だと思っています。絵があって、線があって、そこに色をどうやってつけていくか......そして、その塗り絵をいかに立体的に見せるか......というわけです。


    ――沢山のキャラクターを演じてきた中で、自身の代表作だなと思うものはなんですか?

    羽佐間:よく聞かれるんですが、やった数があまりにも多すぎて答えられないんですよね。なんで多いかというと、昔は吹き替えをする声優がいなかったからなんです。外国から映画が洪水のように入って来た時代でした。当時の私は舞台の役者をやってて、とりあえず普通に喋れるという理由で選ばれたんだと思います。

    新劇の役者だったから貧乏でご飯が食べられなかった。上野から稽古場のある田原町まで地下鉄を使わず歩いて行って、浮いたお金で焼きそばを食べるといった生活を送っていました。そんな時に、外国映画の吹き替えをやらないかと誘われたんです。当時、声優は今みたいに憧れの職業というわけじゃなかったし、カッコ悪いとすら思っていたので、もの凄く抵抗がありました。でも、いくら貰えるかを聞いて......引き受けたんですよ(笑)。

    皆死んじゃったけど、永井一郎や加藤精三、野沢那智も皆、舞台上がり。我々の世代は外国映画の吹き替えのやり方なんて指導する人はいなくって、自分で作り上げていく必要がありました。だから、同じスタジオで隣にいた宇野重吉や東野英治郎と言った役者から技を盗んで、自分のものにしていったんです。


    ――ナレーション、アニメの声優、ドラマ・映画の吹き替え、それぞれどのような意識で演じているのでしょうか?

    羽佐間:TVのニュースのナレーションでは映像に合わせて読み上げるわけですが、それをいかに立体化させるかに気を使っていますね。例えば、○○さんが登場するところではただ単に「○○さんが出てきました」と言うのではなく、「おお、○○さん出てきちゃった!」っていう風にして、浮き上がらせたりします。

    人物に声を当てる時は塗り絵師ですから、呼吸も役者に合わせます。人間はそれぞれ息遣いや脈拍が違う。ウディ・アレンとシルベスター・スタローンでは呼吸が違うので、それに変化をつけるわけです。

    今回吹き替えた、ウィトルウィウスは目の見えないおじいさんなので、じゃあセリフはゆっくりと相手を探りながらしゃべるような感じのかな......などと考えました。でもこれは、あまり強く意識はせず自然と生まれた工夫です。


    ――スタローンの話が出たのでファンとしてぜひ伺いたいのですが、『ロッキー』ではどのような工夫をしましたか?

    羽佐間:正直、スタローンは『ロッキー』や『オーバー・ザ・トップ』などで吹き替えをしましたが、あんまり好きにはなれず、自分では何一つとしてうまくいったと思っていません。でも、彼は野蛮な印象のある役者だけど、ラブシーンがいいと思いましたね。

    『ロッキー』はなんだかんだで一作目からファイナルまで30年やりました。自分はささきいさおのような野太い声ではないから、声質的に合わない。エイドリアンにたどり着くには、そりゃ役作りは苦労しましたよ......。声を低くするために、海に行って当時習ってた浄瑠璃を語って喉をガラガラにして演じましたね。わかりやすく言うと、カラオケをたくさん歌ったあとみたいな感じです。

    15ラウンドの戦いの収録も大変でしたね。殴る音、殴られる音も自分でやらなきゃいけないし、特に一作目の当時は録音技術も近代的ではなくて、フィルムが途中で切れずに繋がっているから、映像の中のスタローンと一緒にヘトヘトになりながらやりました


    ――そんな苦労が......

    羽佐間:私がNHKで最初に選ばれた役は「壁」でした。それはテストだったんだと思います。しかも、その役には「俺は辛いぜ...」ってセリフがあったんです。それをなんとか工夫して「おぇはつぁいぜ」みたいな感じで苦しそうにやったら、次のシーンにも呼ばれたんですよ。そして、次の役は「北風」でした。声優はそういう「机」とか「イス」みたいな無機質なものもでも、どう演じるかということも自分の中で作っておくのが必要だと思っています。

    山寺宏一(今作では、お仕事大魔王、バットマンなどの吹き替え)に、あのアヒルの声はどうやって思いついたの? って聞いたら、「アヒルには声帯がないので、声帯のないやつが喋ったらどうなるかって考えたんですよね」って言ってましたね。毎日、そういうアイデアを考えているんですよ。


    我々を様々な形で楽しませてくれている声優さんの日々の創意工夫や苦労がよく分かるお話でした。羽佐間さんはインタビュー中にわかり易い例としていろんな声を出してくれたのですが、その声をお聞かせできないのが大変残念です。

    そして、『LEGO® ムービー』はそんな羽佐間さんはもちろん、山寺宏一さんや玄田哲章さんなどなど、豪華な声優陣が1人で何役も演じ分けるので、その技術や工夫を存分に感じ、味わえます。

    映像面でもレゴブロックの小さな傷やパーティングラインなど隅々までレゴを再現しながら、レゴらしく、レゴじゃなきゃ出来ない映像表現が展開され、「すげぇ!」と声を出したくなるシーンの連続です。そしてさらに、『くもりときどきミートボール』、『21ジャンプストリート』のコンビによる大人も引き込まれるストーリーが素晴らしい。アメリカのアニメ映画のハードルを何段階も押し上げた作品。本当に劇場で見るべき映画ですよ!


    『LEGO® ムービー』公式サイト

    傭兵ペンギン

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