子供たちの「大切に育てまーす!」という元気な声が初夏の校庭に響き渡っていた。小さな手にひと粒ずつ託されたのはひまわりの種。僕がその想いを受け継ぎ、東京のコミュニティFM「渋谷のラジオ」に託した「未来の種」だ。

 2020年までにヒートアイランドを解消するという目標を掲げ、渋谷区で養蜂を通じての緑化活動を推進されているKATSU佐藤さんから「未来の種」を渋谷区の小学校で子供たちに植えて貰ったと、ラジオを通じて報告があったのは昨日のことだ。

「このひまわり、最初のひと粒は福山雅治さんが2002年に植えた種なんです」(※2002年に放送されていた「福山エンヂニヤリング」というテレビ番組において)

 KATSUさんがあったかい語り口で子供たちひとり一人に託された種の由来を説明する。

「このひと粒を植えて大切に育てて花を咲かせると、100粒くらいの種が採れるんですね」

 手の平のひと粒がやがて100粒になるという事実に子供たちが驚きの声を上げる。

「それを15年間、夏が来るたびに大勢の人が繰り返して来た結果が、皆さんひとり一人に託したひと粒の種なんです」

 自分たちが生まれる前から15年に渡って繋がれて来た命の連鎖について、そしてその重みについて彼らなりに理解してくれたのだろう。その答えが子供たちの中から自然に沸き上がって来た「大切に育てまーす!」という元気な声だった。

 都市開発により失われた緑を取り戻すことで温暖化を食い止め、2000年前から受け継いで来た渋谷という土地を、未来の子供たちに繋いでいきたいとKATSUさんは語っていた。そう、土を耕し、種を蒔くのは、今生きている自分たちが愛でる花や食べる物を育てることだけが目的なんじゃない。生きた大地を守ること。そして、そこで芽を出す種を守ること。すなわち地球環境と種を保存し、未来につなぐことも大きな使命なのだ。しかし、経済効率が優先されがちな現代において種を採っているのは「種の大切さ」に気づいている一部の有機農家だけだ。多くの農家が種苗メーカーが改良した種を毎年買い、収穫を終えたら次の作付けの為に畑を空ける。人類の未来はもはやグローバルな種苗メーカーだけに握られていると言う識者も数多くいる。

 しかしそれも仕方ないのだろう。経験したことのある人なら分かると思うけれど、種を採るのはそれなりに面倒だ。ひまわりで言えば花を楽しんだ夏が終わっても土から茎を抜くことなく、その命が朽ち果てるのを晩秋まで待ち続けなければならない。命に対する慈しみとやさしさがなければできない行為だ。にもかかわらず「未来の種」を手にした人たちはそれを誰に頼まれたわけでもないのにやってくれた。そして全国に拡散してくれた。その命を繋いでくれた。もちろん知っていた。毎年夏に花を咲かせたひまわりを、福山さんのラジオ番組に届く手紙やファンクラブの会報に掲載された写真などで目にするたび、この静かなる連鎖は「実はとてもすごいことなんじゃないだろうか」と感じていた。それは3年前、大勢の人が繋いで来た中の数粒が僕の手元にも届いた時、確信に変わった。

 今年25周年を迎えたファンクラブBROS.について「いい人、やさしい人が多いですよ」と福山さん自身も語っていたけれど、そんなファンの皆さんによって15年の長きに渡り命をつながれて来た「未来の種」はまさしくそれを象徴するもののひとつなんじゃないだろうか。そして、そのやさしさの種はこの夏、東京の渋谷区でも子供たちの手でさらなる未来へと受け継がれ始めた。

 ここまで命をつないで来てくれたファンの皆さんひとり一人のやさしい想いに僕からも改めて感謝の意を伝えさせて頂きたいと思います。

 本当に、本当にありがとうございます。

 素晴らしい未来はひとり一人のやさしい想いが編み上げる奇跡だと、改めて気づかされました。

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