できないことが多過ぎるせいだろうか。家にいるとついできることを探してやってしまっている。おかげで休みがない。正確には、休みがあっても休めていない。

 そういうときは海へ行く。マスクを外して深呼吸する。縮こまった身体をめいっぱい伸ばす。大きな欠伸がでた。浜辺に腰掛けると砂の粒子に残った太陽のぬくもりが伝わってきた。初夏のような陽射しだ。波打ち際で上半身裸の少年たちが海と戯れている。ヨットが帆を上げて沖へ向かっていく。僕は波の音にチューニングを合わせる。やがて、波以外の音は聞こえなくなっていく。