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マクガイヤーチャンネル 第63号 2016/4/18
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こんにちは。映画を観ている途中に椅子が揺れて、アワアワしていたマクガイヤーです。

数年前に閉館した銀座シネパトスという映画館は地下にあり、横を地下鉄銀座線が通ると場内に唸り声のような音が鳴り響いていました。それと同じように、劇場の前をダンプでも通っているのだろうか――などと思いながら映画を観ていたのですが、まさか1000キロも離れている熊本で大地震が起きていたとは……

このブロマガをお読みの方の中にも、もしかすると被災された方もおられるかもしれません。心よりお見舞い申し上げます。一日も早く平穏な生活が戻りますよう、みなさんの御無事をお祈りしております。



今後の放送予定ですが、以下のようになっております。



○4/29(金)20時~

「最近のマクガイヤー 2016年4月号」

いつも通り、最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。

・『アイアムアヒーロー(映画漫画)

『ボーダーライン』

『チャック・ノリス VS 共産主義』

『コロコロ創刊伝説』

『ゆきゆきて戦車道』

『映画秘宝EX 日本不良映画年代記』

『レヴェナント:蘇えりし者』

『青春100キロ』

『ファークライ プライマル』

『Fallout4 Automatron』

・最近のイベント(「GAME ON ~ゲームってなんでおもしろい?~」等)

その他諸々について語る予定です。

友人のナオトさんが久しぶりに出演してくれる予定です。


○5/3(火)20時~

「『シビル・ウォー』と『コンクリート・レボルティオ~超人幻想~』」

4月より『コンレボ』こと『コンクリート・レボルティオ~超人幻想~』の第二期放送『コンクリート・レボルティオ~超人幻想~THE LAST SONG』が始まります。自分はテレビの前でハァハァいいながら第一期の放送を観ていたので、ちょう楽しみです!

ところがこの『コンレボ』、背景を含めてきちんと理解するには昭和史の知識のみならず、昭和のマンガやアニメや特撮の知識が必要です。

さらには、脚本を務める會川昇が公言している通り、発想の原点には『ワイルド・カード』『マーヴルズ』『ウォッチメン』『リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン』といったアメコミやアメコミ関連作の影響があります。そして、4/29より公開される『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』とその原作で描かれている「様々な正義」(會川昇がこれまで様々な作品でテーマにしてきたものでもあります)のぶつかり合いを描く作品でもあります。

そこで、『シビル・ウォー』を引き合いにだしつつ『コンクリート・レボルティオ~超人幻想~』のやろうとしていることやキャラクターのネタ元、作品の魅力などなどについて解説する予定です。


○5/24(火)20時~

「最近のマクガイヤー 2016年5月号」

いつも通り、最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。

詳細未定。



以上、ご期待ください。



番組オリジナルグッズも引き続き販売中です。

マクガイヤーチャンネル物販部 : https://clubt.jp/shop/S0000051529.html


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思わずエナジードリンクが呑みたくなるヒロポンマグカップの他に


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さて、今回のブロマガです。

地震が起こった時、なにを観ていたかというと、『青春100キロ』という映画を観ていたのですよ。


渋谷に映画製作・配給会社であるアップリンクが運営している、小さな映画館があります。

どれくらい小さいかというと、普通の雑居ビルの一室に市販の椅子を40個くらい並べた、試写室のような映画館です。http://www.uplink.co.jp/info/floorguide/

シネコンに比べたら実に小ぢんまりした映画館なのですが、音響や画質が悪いわけではりません。そして、シネコンでは上映されそうにない映画や、シネコンではすぐに公開終了になってしまった名作を上映しているのですよ(特に例年年末年始に開催されている「見逃した映画特集」にはお世話になりました)。

ちょっと前も、すっかり見逃していた『孤高の遠吠』という静岡県のヤンキー映画を堪能しました。いや、面白かった。


で、『孤高の遠吠』の上映前に色々な映画の予告編がかかり、どれもこれも面白そうという夢のような状態だったのですが、その中で最も興味を惹かれたのが平野勝之監督の『青春100キロ』です。

平野勝之といえば、『わくわく不倫旅行』『由美香』といった、AVの流れを汲むドキュメンタリーで有名な映画監督です。特に、5年前に庵野秀明が初の実写映画プロデューサーを務めた『監督失格』は話題になりました。自分も何かで殴られたような衝撃を受けたことを覚えています。

その平野勝之監督5年ぶりの新作映画です。しかも、主演というかフィーチャーされるのは、恵比寿マスカッツのメンバーであり『キス我慢選手権 THE MOVIE2』での好演も印象的だった(http://d.hatena.ne.jp/macgyer/20150328)上原亜衣というではありませんか。

これは観にいかなければ!

ということで仕事が終わるや否や、劇場に向かいました。や、初日はチケットが売り切れてしまい、ネット予約して出直したので、二回向かったことになるのですが。


『青春100キロ』は、一言でいうと、上原亜衣に生中出しするために素人男性が100キロ走るという映画でした。

https://www.youtube.com/watch?v=y3POEpxXlyo

この春、上原亜衣はAV女優を引退するそうです。引退に合わせて、100人の素人男性が「孕ませ隊」と「守り隊」に分かれて鬼ごっこをし、「孕ませ隊」に捕まえられると生中出しされるという狂った企画が山梨の廃墟っぽいところで行われます(驚くべきことに、これは2回目だそうです)。募集した素人男性の中に、相手の目をみてきちんと話す(そういう人は珍しかったそうです)ケイくんという若者がいました。そして、ケイくんはマラソンを趣味としています。東京から山梨の山中湖そばにある撮影現場まで約100キロ……そんなわけで、「東京から山梨まで、二日間かけて100キロを完走できたら上原亜衣に生中出しできる!」という企画が急遽立ち上がったそうです。

平野監督含めたスタッフ3名にこの企画の話が伝わったのは撮影のわずか4日前だそうです。長年AV業界で働いてきて、40歳オーバーの彼らには、「100キロ走ってでも、一回も合ったことの無い女(上原亜衣)に生中出ししたい!」という思いに感情移入できるわけがありません。頭の中にあるのは「どうすればこの作品が面白くなるのか?」という思いだけで、それらは、きちんと口から、時には字幕スーパーとして出てきます。

だからといって、ケイくんのことを馬鹿にするわけでもありません。ケイくんはあまり口数の多くない大人しい若者なのですが、とあるトラブルが起きても山梨に辿りつくことを諦めないケイくんの意志の強さ――性欲と言葉にできない何かが入り混じったようなもの――に自分たちと同じものをみたのか、はたまた断絶の果てにある感情移入か、だんだんと作り手と対象との間の距離感の変化がしていくさまが、本作の見所の一つとなっています。


また、ケイくんはマラソンを趣味としていて、以前にフルマラソン(42.195キロ)を完走したこともあり、初日の走り出しは安定感たっぷりです。しかし、二日目は初日のダメージが残り、また峠を越えなければならないこともあり、とても辛そうです。苦痛に喘ぎながら走るケイくんの横を、笑顔で「下りを楽しみます!」とチャリンコで駆け抜ける平野監督の笑顔も本作の魅力です。どんな状況でも楽しむことを忘れない、AV業界人の逞しさにはっとなりました。


逞しさといえば、上原亜衣も相当なものです。本作ではAV女優引退作における上原亜衣の青春も描かれます。大勢の男たちに生中出しされるという狂った企画ですが、その「男たち」は「ベンガルトラよりも少ない絶滅危惧種」といわれるAV男優ではなく、ただの素人であり、撮影現場の寒さもあり、なかなか勃起して射精までいける素人は少ないらしいのですよ。しかし、上原亜衣としては、トップを走るAV女優のプライドや職業意識があり、ここまで来てくれてきた素人男性には一人でも多く射精させて、気持ちよくなって帰って欲しいという思いがあるわけです。それには、自分でちんこをシャカシャカしごいておくとか、なるべく暖かいところにいるとか、勃起状態を維持するようなテクニックがそれなりにあるようなのですが、スタッフの段取りが悪くて上手くいかないらしいのです。そして、上原亜衣としては、女性の自分が、ゲームの景品である自分が、そこまでサポートできないという辛さもあるわけです。で、緊急ミーティングが開かれ、上原亜衣と監督やプロデューサー(なんと女性!)との気持ちがすれ違う、完全に裏方サイド(と思える)必見のシーンもありました。

そういえば、本作はすっぴんの上原亜衣がインタビューを受けるシーンから始まるのですが、その時の彼女の目は、狂気の企画に対抗するにはワタシもワタシなりの狂気を抱えるしかない――といった具合の昏い怖ろしさがありました。『キス我慢THE MOVIE2』で、狂気とも思える劇団ひとりのアドリブにリアクションできたのも、上原亜衣なりの狂気が奥底にあったからかもしれません。


平野監督や上原亜衣に比べると、「さあ、亜衣ちゃんに思いを伝えるんだ!」というタイガー小堺監督(AV『100人×中出し』の監督)の掛け声に乗せられて、皆で上原亜衣を取り囲み、大勢でちんこをシコってる「孕ませ隊」や「守り隊」たちの姿には、笑えると共に、なんだか寂しさも感じてしまいます。必死になって自分の精子を卵子にぶっかけようとする雄ジャケのごとく、上原亜衣にぶっかける姿が映っているのですが、きっと、勇気を出して孕ませ隊に応募して、必死になって勃起させたものの、上原亜衣に指一本触れることもできなければ、精液一滴すらぶっかけできなかった人もいるんだろうなあ……


一方で、氷点下に近い山梨の峠道を足を引きずって歩くも「まだ勃起してます!」と返したり、90キロ以上走ってヘロヘロにも関わらず、上原亜衣に会う前にどうしても歯を磨きたい(そしてキスしたい)と訴えるケイくんにも、また別の逞しさと可笑しさを感じてしまいます。念願かなってセブンイレブンのトイレに駆け込み、伝導歯ブラシで歯を磨きまくるシーンは最高の見せ場になっています。


道中の無責任さや自由さとは裏腹に、平野勝之の編集の上手さは相当なものです。全身全霊をかけた『由美香』や『監督失格』にはない、重過ぎないポップさや、エンターテイメント性に溢れた、肩の力を抜いて楽しめる一本となっています。


本作は一週間限定の公開でしたが、好評を受けて、4/30から二週間、再上映されるそうです。

http://kai-you.net/article/28022




そんなわけで、本当に面白い映画だったのですが、こういう映画を観ると、自分の人生も振り返ってしまったりします。

ケイくんは憧れの女性に生中だしするために100キロ走ったわけですが、今、自分が同じ状況で同じことするかと問われたら、まあしないわけですね。そんな性欲も体力も無いのです。

しかし、若かりしころの自分なら、100キロ走ったかもしれません。

100キロ走ったわけではありませんが、似たようなことをした思い出があります。

あれはまだ自分が童貞だった頃でした。



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