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マクガイヤーチャンネル 第107号 【科学で映画を楽しむ法 第3回「『静かなる決闘』と梅毒 その1」】
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マクガイヤーチャンネル 第107号 【科学で映画を楽しむ法 第3回「『静かなる決闘』と梅毒 その1」】

2017-02-20 07:00
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    マクガイヤーチャンネル 第107号 2017/2/20
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    おはようございます。久しぶりにワンフェスに行って、色々と買ってきてしまったマクガイヤーです。

    これからちまちまとパーツをやすったり色を塗ったりして楽しんでいきたいのですが、その前に部屋に塗装ブースを作るかどうか悩み中です。せっかく塗装ブース作ってもそんなに使わない気がするんですよね……ていうか、まずは部屋の整理からや!


    マクガイヤーチャンネルの今後の予定は以下のようになっております。


    ○2月25(土)20時~

    「最近のマクガイヤー 2017年2月号」

    ・追悼 谷口ジロー

    『虐殺器官』

    『マリアンヌ』

    『スノーデン』

    『トリプルX:再起動』

    『ナイスガイズ!』

    『ラ・ラ・ランド』

    『宇宙戦隊キュウレンジャー』

    その他、気になった映画や漫画についてお話しする予定です。



    ○3月11日(土)20時~

    「今だから観返したい『キング・コング(2005)』と『闇の奥』とポストコロニアリズム」

    3月25日より期待の新作怪獣映画『キングコング:髑髏島の巨神』が公開されます。

    キングコングといえば、これまで何度も映画化されてきた、ゴジラと並ぶ怪獣王です。特に2005年に公開されたピーター・ジャクソン監督版『キング・コング(2005)』は名作でした。

    さて、『キングコング:髑髏島の巨神』は『地獄の黙示録』を彷彿とさせる映画になるという噂ですが、そういえばピージャク版『キング・コング(2005)』は『地獄の黙示録』の原作である『闇の奥』にオマージュを捧げた映画になっていました。

    そこで、過去のキングコング映画を振り返りつつ、主にピージャク版『キング・コング(2005)』について解説し、『キングコング:髑髏島の巨神』に備える……という放送を致します。

    是非とも、『キング・コング(2005)』をご覧の上ご視聴下さい。



    ○3月25日(土)20時~

    「最近のマクガイヤー 2017年3月号」

    いつも通り、最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。

    詳細未定



    ○4月1日(土)20時~

    「実録SFヤクザ映画としての『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』」

    『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』が4/2に最終回を迎えます。

    この『オルフェンズ』、当初は『機動戦士ガンダム』の元ネタの一つだった『十五少年漂流記(あるいは『蝿の王』)』のアップデート版かと思われていましたが、どんどん東映実録ヤクザ映画のような趣となっていきました。ヤクザ映画もガンダムも大好きな自分としては見逃せない、そしてだからこそ一言も二言も言いたいガンダムになっております。『ガンダムAGE』とはえらい違いです!

    そこで、実録SFヤクザ映画としての『オルフェンズ』について2時間みっちりお話するという放送を致します。是非ともAmazonプライムなどで最終回直前まで視聴した上でお楽しみください。



    ○4月後半(日時未定)20時~

    「最近のマクガイヤー 2017年4月号」

    いつも通り、最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。

    詳細未定






    お楽しみに!



    番組オリジナルグッズも引き続き販売中です。

    マクガイヤーチャンネル物販部 : https://clubt.jp/shop/S0000051529.html

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    ……等々、絶賛発売中!




    さて、今回のブロマガですが、久しぶりな「科学で映画を楽しむ法」第3回として『静かなる決闘』について書かせて下さい。



    ●はじめに

    『静かなる決闘』は世界の黒澤明が1949年、約70年前にに監督した作品です。黒澤にとって8本目の劇場用長編映画であり、三船敏郎を主演に迎えた2本目の映画です。

    主人公は医者なのですが、軍医として参加していた戦時中、手術中の事故で梅毒に感染してしまいます。戦後も梅毒は治らず、婚約者に梅毒感染も結婚も申し出ることができず、思い悩む……というのが基本的なストーリーです。

    古い映画なのでご存知無い方もいるかもしれませんが、この映画、ある時期までの感染症、それも梅毒を描いた映画として実に正しい描写に溢れているのですよ。



    ●恭二と中田

    映画は、太平洋戦争中の野戦病院、それも雨がざあざあ降るジャングルの中の野戦病院からはじまります。

    三船演じる主人公・恭二が助手を勤める伍長と一緒に居眠りしています。椅子に座り、腕を上にあげたまま居眠りするという姿勢が独特です。なぜこのような姿勢かというと、主人公は外科医で、患者がひっきりなしに運ばれてくる野戦病院で汚れた腕をまた綺麗にする時間が惜しいので、腕を汚さないまま居眠りする姿勢が癖になっている――ということを僅か数秒で示す、実に見事な描写です。


    中田という上等兵が下腹部盲貫銃創で運ばれてきます。

    盲貫というのは、銃弾が身体を貫かず、体内にとどまっている傷のことです。

    外科手術で銃弾を取り除こうとする恭二。しかし、なにしろ熱帯の野戦病院です。汗やら暑さやらで上手くいかず、思わず手袋を脱いでしまいます。医療事故や院内感染や医療従事者の職業感染が話題になりすぎるくらい話題になっている現在の医療ならありえませんが、戦時中ということを考えればありえます。そして、あろうことか、恭二はメスの刃を握ってしまい、手に怪我をしてしまいます(このようなことが無いよう、メスの置き方や収納のされ方は工夫されているのですが、ここは映画のウソと割り切りましょう)。


    手術が成功し、かなり回復した中田。横のベッドに寝た別の患者に話しかけられます。

    「おっかちゃんに会いてえなあ、もう三年だぜ」

    「女なんてどこにだっているじゃねえか」

    (中略)

    「だけんどなあ、こんなところで変な病気を背負ったらえらいこったぜ」

    「だがなあ、その病気のおかげで内地還送って手もあるんだからな」

    「おめえ……」

    明示されませんが、つまりここは慰安所のある南方戦線なのです。

    本作が公開されたのは戦後わずか五年後、当時の観客はこの会話だけで、この中田という上等兵がだらしのない人間であり、慰安所で慰安婦とセックスして梅毒に感染したのだということが理解できたでしょう。


    この会話を偶然聞いた恭二は、中田を問い詰めます。

    「おまえ、梅毒やってるのか?」

    渋々認める中田。恭二が居なくなった後、卑屈な顔で舌を出します。



    ●スピロヘータとは?

    恭二は助手である伍長に、スピロヘータの血液検査のオーダーを指示します。

    スピロヘータというのは梅毒の原因菌です。正しく書くと、スピロヘータというのはスピロヘータ目に属する細菌の総称で、梅毒トレポネーマというのが梅毒の原因菌になります。回帰熱やライム病の原因菌となるスピロヘータとは別の種類なのですが、慰安所がそこここにある野戦病院の状況下では「スピロヘータ」だけで「梅毒」を意味しました。


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    細菌の形態には球状(球菌)、棒状(桿菌)などがありますが、スピロヘータは長い棒がらせん状になった形態をしています。スピロヘータという名前も「コイル状の髪」を意味するギリシア語に由来します。

    このらせん状の菌体を回転させることで溶液中を移動するばかりか、くねらせることで固体の表面を這うように移動することもできるのです。

    なぜこんなことができるのかというと、鞭毛を持っているからです。


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    鞭毛というのは毛状の細胞内小器官です。精子の尻尾が一番有名ですね。精子はこの鞭毛を動かすことで溶液中を移動します。

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    スピロヘータは、両端から伸びた鞭毛に対して細胞体がらせん状に絡み付き、更にその表面を莢膜と呼ばれる膜が覆うという、独特の構造をしています。これによって菌体全体を回転させたり、くねらせたりするのです(より正確には、精子に代表される真核生物の鞭毛はそれ自体が運動しているのに対して、細菌の鞭毛は単なる繊維で根元にあるモーターのような蛋白質が動かしているという、より単純な構造をしています)。


    そしてこの梅毒トレポネーマ、なんと人間にしか感染しません。

    つまり、梅毒患者が一人もいなくなれば、地球上から梅毒を根絶できるのです。

    ですが、今もって梅毒は根絶できていないどころか、近年になって梅毒患者が逆に増えていたりします。

    参考リンク: http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/diseases/syphilis/syphilis2006/

    だからこそ、『静かなる決闘』はいま観る意味があるのですよ!


    ●梅毒の検査法

    伍長は検査の詳細について確認します。

    「こんなところではワッセルマンは無理ですから、村田反応で良いですか?」

    どちらも、梅毒トレパネーマが細胞を破壊し、それによって細胞から出てくるカルジオリピンというリン脂質に反応する抗体を検出する検査法です(そして、どちらも考案者の名前を検査名としています)。つまりカルジオリピンという自己抗原を認識する自己抗体を検出する検査法ですね。

    なぜ梅毒トレポネーマそのものではなく、それによって出てくる物質に反応する抗体をターゲットにするなんてまどろっこしい検査法になっているのかというと、リンパ節が腫れたり発疹ができたりと、梅毒感染が誰の目にもわかるくらい症状が進んでしまった頃でないと、梅毒トレポネーマが検査できるレベルにまで増えないからです。その頃には(性に奔放な人であれば)何十人もの人間に梅毒トレポネーマを感染させてしまっているかもしれません。もっと早期に判定できる検査でないと意味がないのです。だから、抗体検査を行うのです(これは病原菌やウイルスの拡散を増幅するPCR法ができない、もしくは確立していない、ほとんどの感染症検査で共通しています)。

    抗体検査には、梅毒トレポネーマを認識する抗体を検出する方法(TP法)と、前述したカルジオリピンを認識する自己抗体を検出する方法(STS法)の二種類があります。前者の抗体が体内で検出されるようになるのは約3ヶ月後、後者は2~5週間後です。また、STS法は梅毒トレポネーマが体内から減ると数値がさがり、治療の指標にしやすいというメリットがあります。TP法は一陽性になったら梅毒が完治しても基本的にはずっと陽性です(これはBCG接種後のツベルクリン反応や、結核におけるクオンティフェロン検査と同様ですね)。

    だからSTS法がまず採用されますが、カルジオリピンは梅毒以外にマラリアや結核などの感染症、SLEなどの自己免疫疾患、妊娠などでも破壊された細胞から漏出し、これを認識する抗体が体内から検出されるのです。つまり擬陽性が多いというデメリットがあります。

     
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