おはようございます。マクガイヤーです。
前回の放送「ここがヘンだよ! 細田守と『未来のミライ』」は如何だったでしょうか?
しまさんの大活躍もあり、良い放送になったと思います。
自分は細田守のこれまでとこれからについて話すことができ、満足しております。
そろそろ橋本カツヨ監督作がみたいところですね。
マクガイヤーチャンネルの今後の放送予定は以下のようになっております。
○8月18日(土)20時~「俺たちも昆活しようぜ! 昆虫大特集」
7/13~10/8まで上野の科学博物館で昆虫特別展も開催されます。
夏といえば海に山に恐竜、そして昆虫! いま、昆虫が熱い!!
……というわけで、今年の夏のマクガイヤーチャンネルは昆虫を大特集する放送を行ないます。
昆虫に詳しいお友達の佐々木剛さん(https://twitter.com/weaponshouwa)をお呼びして、昆虫の魅力について語り合う予定です。
○9月1日(土)20時~「最近のマクガイヤー 2018年9月号」
詳細未定ですが、いつも通り最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。
○9月29日(土)20時~「『ゴールデンカムイ』と世界変態列伝」
明治時代末期の北海道・樺太を舞台に、アイヌの金塊を求めて様々な人物が交錯する『ゴールデンカムイ』、いまノリにノっているマンガの一つです。
2016年にマンガ大賞、今年手塚治虫文化賞を受賞し、10月からアニメ第二期も放送されます。
そこで、『ゴールデンカムイ』が参照したと思しき古今の西部劇・時代劇・冒険小説等々を解説すると共に、血沸き肉踊るアドベンチャーと、大自然の中で生命の恵みを口にして生きる愉しさとが同居する、本作の魅力に迫りたいと思います。
アシスタントとして、声優の那瀬ひとみさん(https://twitter.com/nase1204)に出演して頂く予定です。
○Facebookにてグループを作っています。
観覧をご希望の際はこちらに参加をお願いします。
https://www.facebook.com/groups/1719467311709301
(Facebookでの活動履歴が少ない場合は参加を認証しない場合があります)
○コミケで頒布した『大長編ドラえもん』解説本ですが、↓で通販しております。ご利用下さい。
https://yamadareiji.thebase.in/items/9429081
○8月25日(土)開場12時、開演13時~「「山田玲司とDr.マクガイヤーの“俺の嫁”バトル」in 阿佐ヶ谷ロフトA
漫画家山田玲司とDr.マクガイヤーによるプレゼンバトル第三弾。
今回のバトルテーマは「俺の嫁」。
漫画、アニメのみならず、映画や文学やその他のコンテンツにおける、いろんなシチュエーションで夢中になれるキャラクターについて、熱くトークバトルします。
今回でシリーズ最終回、果たしてどんな妄想話が飛び出すのか?
イベント詳細は↓
http://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/95158
チケットは↓から購入できます!
http://eplus.jp/sys/T1U14P0010163P0108P002268644P0050001P006001P0030001
さて、今回のブロマガですが、ニコ生の補講とまとめというか、『未来のミライ』について改めて書かせて下さい。
●細田守の理想とする「映画」とは?
2012年、「ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル」に出演した細田守は、自身が影響を受けた80年代映画として以下の5作品を挙げていました。
『台風クラブ』、『雪の断章 情熱』、『ときめきに死す』はいずれも、アイドル映画やサスペンス映画のふりをした、まごうことなきカルト映画です。相米慎二作品は長回しにより、芝居ともアドリブとも、現実とも虚構ともつかぬ情念に満ちた演技を役者から引き出す演出が有名で、結果として役者が虚構を前提とした芝居をすることから「相米慎二作品は本質的にミュージカル」と言われたりするのですが、この時期の森田芳光もフィックス(すなわち同ポジ)の長まわしで同じようなことをやっていたのでした。
『マルサの女』は、80年代日本映画界におけるドル箱監督であった伊丹十三が監督した長編映画三作目ですが、まだこの頃は葬式や食やマルサをテーマとする斬新性や、映画的引用が評価されていた時期でした。
『となりのトトロ』は、いまや知らない人はいない名作アニメ映画ですが、実際はこれ以前にも以降にも(同じスタッフによるプロトタイプといえる『パンダコパンダ』を除いて)似た映画がみつからない、独自の構成と世界観を持った実質的なカルト映画です。よく引き合いに出される『ミツバチのささやき』と比較するとよく分かります。公開時は興行的に奮わず、テレビ放映されることで国民的な人気を獲得していったのです。
いずれの作品にも共通するのは、斬新なテーマやモチーフ、通常のエンターテインメント映画とは異なる構成、そして台詞に頼らない映像による演出の多用です。
●スタジオ地図設立と「ポスト宮崎」
これら5作品のような映画が細田守にとって理想の映像作品である、と考えれば、細田守初期作品のねらいや魅力がよく理解できます。
『ぼくらのウォーゲーム!』や「どれみと魔女をやめた魔女」や「フランシスの向こう側」のような、時に玩具CMアニメと揶揄されるニチアサには似合わない超絶テクニックを用いた演出回も、「空より淡き瑠璃色の」や『オマツリ男爵と秘密の島』のクライマックスのような、情念に満ちた作劇も、『サマーウォーズ』や『おおかみこどもの雨と雪』のようなテーマやモチーフの斬新性も、なぜそんなものが生まれたのかというと、細田守が本質的には新しくて独自性の高い映像表現を追い求めるカルト監督であるからによります。
フリーになってから初めて発表した監督作が、小説『時をかける少女』のアニメ化というよりも、大林宣彦が監督し原田知世が主演した1983年の実写映画版『時をかける少女』の続編のような要素を持っているのも、細田守が多感な10代後半から20代の頃に公開された80年代エンタメ映画のふりをしたカルト映画に大きく影響されているからでしょう。実際、『おおかみこどもの雨と雪』の台風シーンに代表されるような、相米慎二監督作へのオマージュや引用シーンも多いです。
だから、フリーになった細田守は押井守のようになってもおかしくなかったのですが、時代と状況が細田守に求めたのは、引退を発表した宮崎駿のような長編アニメを数年に一作製作し、有名俳優を声優にキャスティングし、テレビ局や広告代理店と共同でプロモーションし、日本中のシネコンで公開する……「ポスト宮崎駿」という立ち位置でした。
このために設立したのが自身のアニメ制作会社であるスタジオ地図ですが、一度この道を選んでしまったら、もう引き返せません。
まず、スタジオを維持するために、総力戦のような長編アニメ製作を続ける必要があります。
更に、相米慎二や森田芳光のような実験的描写を入れても構わないのですが、一方でシネコンに大挙して押し寄せるようなマイルドヤンキーの家族客がポップコーンを食べ散らかしながらみても理解できるよう、脚本段階で分かりやすい台詞も容易しておく必要があります。
これは奇しくも、伊丹十三が90年代に、森田芳光が00年代以降に辿った道と同じでもあります。
『バケモノの子』以降、いま日本で一番おカネを稼げるプロデューサーである川村元気が製作に参加するようになったこと、入れ替わるようにこれまで脚本を共同執筆していた奥寺佐渡子が参加しなくなったことは、この道を選択したことと無縁ではないでしょう。
鈴木敏男のような詐欺師的プロデューサーがいたり、歴史的ともいえる成功を手にして実験作を公開できる「美術館」を持っていたり、開き直って計画的・定期的に「失敗作」を撮ったりしなければ、やりたい放題の実験アニメや実写映画を作ったりすることなどできないのです。
●『未来のミライ』が目指したもの
『未来のミライ』のテーマ、どう考えても「可愛い可愛いうちの息子を超絶アニメテクニックでみてくれ!」です。本作は、監督である細田守の実子をモデルにしたと思しき4歳児「くんちゃん」の視点で物語のほとんどが語られ、4歳児の目線からみた現実と幻想(虚構)が渾然一体となった「世界」が描かれ、翻って、我々観客は常に4歳児の一挙手一投足を見続けることになります。
日本の二次元アニメの技術力と、億を越える制作費で描かれた4歳児の一挙手一投足は、魅力満載です。
「家族の日常が積み重なって歴史になる」とか「くんちゃんの内的成長」とかいったものは、後付けの要素でしかありません。
これは、映画を作る上で圧倒的に正しい態度です。
自分が好きで好きでたまらないものや、どうしても拘ってしまうものをテーマとして選び、いかに素晴らしいか、尊いものか、「世界」にどう影響していくのか……といった発想で作られた映画は沢山あります。ただ、ゴダールが「女(ミューズ)」に拘り、宮崎駿が「幼女」に拘るのに比べれば、細田守の視点が独特ということだけです。
しかし、これまで「親戚づきあい」や「(おおかみおとこにおもえるほど)異質な他者との恋愛と子育て」をテーマとしていた細田守らしい独自の着眼点とテーマでもあります。
ただ、目をつけたテーマの面白さと映画の面白さは全く別の問題です。
自分は、この映画に対して少なくとも三つ、大きな不満を抱いたポイントがあります。
●五つのエピソードと五回の説教
一つ目は、説教が繰り返される点です。