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マクガイヤーチャンネル 第192号 【藤子不二雄Ⓐと映画と童貞 その10 『愛ぬすびと』と『愛たずねびと』その2】
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マクガイヤーチャンネル 第192号 【藤子不二雄Ⓐと映画と童貞 その10 『愛ぬすびと』と『愛たずねびと』その2】

2018-10-24 07:00
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    マクガイヤーチャンネル 第192号 2018/10/24
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    おはようございます。マクガイヤーです。

    今年も川越まつりの季節がやってきました。

    お祭りにかこつけて午前中からビールを飲んだり、粉ものでおなかをいっぱいにして気持ち悪くなったりするのは本当に良いものですね。年に1回といわず、2、3回くらいやってくれても良いのになあ。


    マクガイヤーチャンネルの今後の放送予定は以下のようになっております。



    ○10月27日(土)20時~「しまさんとマクガイヤーのビブリオバトル」

    秋といえば食欲の秋、スポーツの秋、そして読書の秋。

    マクガイヤーチャンネルでは編集者のしまさん(https://twitter.com/shimashima90pun)をゲストにお迎えして、ビブリオバトル形式でおすすめ本を紹介する番組をお送りします。

    マンガ、フィクション、ノンフィクション……と幅広いジャンルからあまり知られていない本を紹介する番組になりますが、準備段階からしまさんの意気込みが圧倒的で、楽しい番組になると思います。



    ○11月10日(土)20時~「ピコピコ少年が猫背を伸ばして『ハイスコアガール』」

    9月25日、「月刊ビッグガンガン」で連載されていた押切蓮介のマンガ『ハイスコアガール』が最終回を迎えました。また、アニメ版『ハイスコアガール』も7月から9月まで放送され、続編となるOVAが来年3月に発売されることも発表されました。

    『ハイスコアガール』は90年代に多感な時期を過ごした自分のような元ゲーム少年であるおじさんにとっては無視できないマンガですが、同時に押切蓮介の自伝的作品『ピコピコ少年』『猫背を伸ばして』の方が当時の雰囲気や状況をきちんと伝えているのではないかと思ったりもします。

    そこで、『ハイスコアガール』を関連作や90年代ゲーム文化と共に解説し、本作の魅力に迫るニコ生をお送りしたいと思います。


    アシスタントとして、声優の那瀬ひとみさんが(https://twitter.com/nase1204)に出演して頂く予定です。



    ○11月17日(土)18時~「放送100(+α)回記念 ヨーロッパ旅行報告会&オフ会」

    早いもので、ニコ生放送も100回を越えることとなりました。

    これを記念して……というわけではないのですが、9月にフランス・スイス・イタリアを巡るヨーロッパ旅行を行いました。せっかくなので、同行した友人のシロたん(http://erosion-soft.com/)をゲストにお迎えして、写真と共に旅行をふりかえる報告会をしたいと思います。

    いつもより放送時間が早まっていますのでご注意下さい。


    また、100回を記念して、いつもより観覧客を多めに受入れる形でオフ会も開催します(無料)。その後、飲み会(有料、割り勘で3000-4000円くらいになると思います)も開催予定です。

    オフ会とその後の飲み会に参加希望の方はFacebookのグループに参加し、参加表明をお願いします。

    https://www.facebook.com/groups/1719467311709301/

    (Facebookでの活動履歴が少ない場合は参加を認証しない場合があります)



    ○12月前半(日時未定)「最近のマクガイヤー 2018年12月号」

    『クレイジー・リッチ』

    『スカイライン−奪還−』

    『SSSS.GRIDMAN』

    その他、いつも通り最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。




    ○Facebookにてグループを作っています。

    観覧をご希望の際はこちらに参加をお願いします。

    https://www.facebook.com/groups/1719467311709301

    (Facebookでの活動履歴が少ない場合は参加を認証しない場合があります)



    さて、今回のブロマガですが、前々回に引き続いて藤子不二雄Ⓐ作品、『愛たずねびと』について書かせて下さい。



    ●『愛たずねびと』とは

    「ここに二通の書類がある

    一通は茶色で、もう一通は緑色である

    二通の書類はちょっと見ると書式がほとんど同じで、色の違い以外、同じ書類に見えるが、この二通は全く違うのだ

    茶色の方は婚姻届で、緑色の方は離婚届けである」


    「人はお互いに相手を誤解することによって結婚し、やがて相手を理解することによって離婚する……」


    ……『愛たずねびと』はそんな衝撃的な文章によるナレーションではじまります。『愛ぬすびと』の翌年、1974年に「女性セブン」に連載された「愛シリーズ」の第二弾です。

    『愛ぬすびと』と『愛たずねびと』の違いは、主人公が男性に対して女性であることと、更に一回の連載(約20ページ)につき一話だった『愛ぬすびと』に比べて、連載2、3回で1話が構成されていることです。前者は『無名くん』『ミス・ドラキュラ』、後者はちょうど『魔太郎』『変奇郎』の関係に近いでしょうか。というか、『ミス・ドラキュラ』も『変奇郎』も『愛たずねびと』より後に発表された作品になりますので、『愛ぬすびと』と『愛たずねびと』を連続して執筆した経験が活かされたのかもしれません。


    「作家の夫との生活に終止符を打ち、結婚と離婚を繰り返し真実の愛を求めて彷徨う主人公 高梨愛子。傷つきながらもひたむきに「愛」をさがす美貌のヒロインに女性週刊誌読者が感涙した」

    ……というのが、電子化の際に出版社が用意したあらすじになります。しかし、あらすじ以上のものが描かれているのは『愛ぬすびと』と同じです。



    ●様々な絵柄を駆使するⒶ

    『愛たずねびと』は全5エピソードで構成されています。第1エピソードとなる「城優介(作家・28歳)のケース」では、「あらすじ」の通り最初の夫である城優介と主人公 高梨愛子(『愛ぬすびと』のヒロイン優子と主人公 愛誠と対になる名前になっています)が離婚するに至った理由が描かれるのですが、この理由が、なんとハワイ旅行と並行して描かれるのです。


    「旅行シリーズ」の解説でも書いた通り、海外旅行が一般化した70年代当時でも、新婚旅行としてハワイに旅行するのは全庶民の憧れでした。

    そんな状況下で、主人公と作家の夫は「離婚旅行」としてハワイを旅するのです。ご丁寧に、新婚旅行カップルと同じ飛行機に乗り合わせ、同じビーチで泳ぎ、常に新婚旅行と「離婚旅行」が比較して描かれます。新婚旅行カップルのハワイでの浮かれようとの対比や、オプショナルツアーでいくサンセットクルージングのディティールなどは、Ⓐの旅行趣味や「旅行シリーズ」執筆の経験が存分に活かされています。


    離婚の原因は「作家の夫が売れっ子になると共に妻の自分に対する愛情が薄れていくように感じた」という、一文でまとめられるものなのですが、驚くべきはその表現手法です。

    本エピソードでⒶは様々なタッチの絵柄をコマごとに使い分けています。「①表紙等を描くためのペン画タッチ」「②通常の劇画タッチ」「③ハワイの風景やテレビに映った画面を描くための、筆とペンを駆使したタッチ」「④まだ幸せだった頃の過去を描くための劇画タッチ」と主に4種類のタッチから成る絵柄を駆使し、二人の心情を――いや、主人公の心情に基づく作品世界を描き分けているのです。


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    このうち、①はⒶが元々得意としていた絵柄であることは『まんが道』などで説明されています。


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    ②はⒶが児童向け漫画から大人向けブラックユーモア漫画を描くようになって開発した絵柄ですが、その源流は戦記ものや『シルバークロス』にあることはこれまで描いた通りです。


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    ③は、ブラックユーモアやドキュメンタリー要素を含む大人向け漫画を描くようになって、①の絵柄を漫画的に単純化する形で開発し、写実的な風景やドキュメンタリー的な別メディアからの引用を意味するものとして使用している絵柄です。本作の、特に第1エピソードでは、藤子プロのアシスタントを総動員したのではないかというくらいこの絵柄が頻出し、ハワイの異国情緒を演出します。Ⓐの気合の入りっぷりが伺えます。


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    注目したいのは優介と主人公 愛子の過去――二人がまだ幸せだった時代の生活を描く④の絵柄です。①②③と異なり、Ⓐはこの絵柄を他の作品では全く使用していません。おそらく、本作を執筆するにあたって特別に練習したか、特別にアシスタントを用意し任せたのでしょう(そして、あまりにも大変だったので、その後再使用しなかったのでしょう)。いずれにせよ、ますますⒶの気合の入りっぷりが伺えます。


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    ②と④の絵柄で描かれた愛子を比較してみると、同じ人物を意味するにも関わらず、全く別人のようにみえる時すらあります。前述したように②はⒶがブラックユーモア短編でよく使う絵柄なのですが、主人公が幸せを感じていた過去を表す④に比べると、愛を全く感じなくなった②は生活感や厭世観が滲み出ているかのようです。


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    更に②では、コマによって、まるで魂が抜けたように目の光を失ったり、顔の中心から影がひろがっていくような、漫画(劇画)的表現が加わります。これは魂が抜けたかのようにみえるほど「あきれ果てた」「大きなショックを受けた」「なにかに心を囚われている」ことを意味します……あらためて説明するまでもないかもしれませんが。


    藤子・F・不二雄と比較すると、違いが良く分かります。

    Fが基本的に1種類、多くて2種類(児童向け漫画と『劇画オバQ』に代表される劇画)の絵柄しか使わないのと比較して、Ⓐは多種多様な絵柄を、ジャンルを問わず、1作品の1話の中で使い分けるのです。

    何故Ⓐはこれほどまでに多彩な絵柄を駆使するのでしょうか?

     
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