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【第343号】『エウレカセブン』とポスト・ボーイ・ミーツ・ガール
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【第343号】『エウレカセブン』とポスト・ボーイ・ミーツ・ガール

2021-12-22 07:00
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    マクガイヤーチャンネル 第343号 2021/12/22
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    おはようございます。マクガイヤーです。

    年の瀬なせいか、めっちゃ忙しいです。

    自宅に帰ると睡魔に襲われて困ります。



    マクガイヤーチャンネルの今後の放送予定は以下のようになっております。



    〇12月27日(月)19時~「Dr.マクガイヤーのオタ忘年会2021」

    例年お楽しみ頂いている「オタ忘年会」。

    2021年に語り残したオタク的トピックスやアイテムについて独断と偏見で語りまくる予定です。

    ゲストとして編集者のしまさん(https://twitter.com/shimashima90pun)をお迎えしてお送り致します。


    ちなみに過去の忘年会動画はこちらになります。

    2020年

    2019年

    2018年




    〇1月10日(月)19時~「最近のマクガイヤー 2022年1月号」

    詳細未定。

    いつも通り最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。



    〇1月17日(月)19時~「『クライ・マッチョ』とイーストウッドの私小説映画」

    2021年1月14日より映画『クライ・マッチョ』が公開されます。クリント・イーストウッド91歳の主演作にして、監督40作目となる映画だそうです。 イーストウッドはサイコスリラー映画『恐怖のメロディ』でデビューしましたが、自分のオリジンである西部劇、血沸き肉躍る冒険小説の映画化、性癖の反映であろうスリラー映画、自身の軍隊・役者・経験を反映させつつ「血と暴力の国」アメリカを様々な手法・ジャンルで描く映画の他に、それらの要素を合わせ持ちながら自分の人生を反映させた映画を監督しています。しかも、その多くにはイーストウッド自身の恋人・息子・娘が出演しており、その公私混同というか混淆ぶりは庵野秀明にとっての『エヴァンゲリオン』を彷彿とさせるのです。『クライ・マッチョ』もこの系譜に属する作品なのは間違いありません。


    そこで、『ブロンコ・ビリー』『センチメンタル・アドベンチャー』『目撃』『グラン・トリノ』などのイーストウッド私小説映画を紹介しつつ、。『クライ・マッチョ』について解説する放送を行います。


    ゲストとして声優の那瀬ひとみさん(https://twitter.com/nase1204)をお迎えしてお送り致します。



    〇藤子不二雄Ⓐ、藤子・F・不二雄の作品評論・解説本の通販をしています

    当ブロマガの連載をまとめた藤子不二雄Ⓐ作品評論・解説本『本当はFより面白い藤子不二雄Ⓐの話~~童貞と変身と文学青年~~』の通販をしております。

    https://macgyer.base.shop/items/19751109


    また、売り切れになっていた『大長編ドラえもん』解説本『大長編ドラえもん徹底解説〜科学と冒険小説と創世記からよむ藤子・F・不二雄〜』ですが、この度電子書籍としてpdfファイルを販売することになりました。

    https://macgyer.base.shop/items/25929849


    合わせてお楽しみ下さい。



    〇プレゼント:1/6 マクガイヤーヘッド

    お友達の中村さん(たかすあんさん https://twitter.com/takasu_unne)が制作してくれた1/6 マクガイヤーヘッド、きちんと塗装してボディにつけてSNS等にアップしてくれる方3名様にプレゼント致します。

    我こそは! と思われる方は、↓からご応募下さい。

    https://forms.gle/KShitv3cQBh823dC7

    2021年末を締め切りとさせて頂きます。





    さて本日のブロマガですが、先日ニコ生でも取り扱った『エウレカセブン』についてまとめのような文を書かせて下さい。



    ●ロボットアニメとボーイ・ミーツ・ガール

    『エウレカセブン』は2005年から06年にかけて、当時としても珍しかった一年間・4クールという枠で放送されたロボットアニメです。その後、『ポケットが虹でいっぱい』という映画が公開され、『エウレカセブンAO』という続編テレビシリーズ(半年・2クール)が放映され、更に『ハイエボリューション3部作』と呼ばれる新たな映画が三作公開されました。ゼロ年代以降、『ガンダム』『マジンガーZ』『ゲッターロボ』『マクロス』といった老舗シリーズや、『ダンボール戦機』『シンカリオン』といった比較的低年齢層向け作品以外で、これほど多くの続編や映画作品が発表されたロボットアニメは『蒼穹のファフナー』くらいしかありません。敢えて書くと、『コードギアス』が次点になるでしょう。

    何故こんなにも成功したシリーズになったかというと、ボンズが力を入れていたとか、漫画・ゲームとのメディアミックスはもとよりパチンコが盛り上がったとか、幾らでも思いつくのですが、単純に「ボーイ・ミーツ・ガールのロボットアニメとして良くできていた」と自分は考えます。少年が「巨大ロボット」という装置で未成年であるにもかかわらず大人社会に参画する――少年が巨大ロボットで身体性のみならず社会性を拡張するロボットアニメというジャンルにおいては、「ボーイ・ミーツ・ガール」がどれだけじっくりと描かれるかどうかが人気を得る点で重要になります。『エウレカ』『ファフナー』と比べて『コードギアス』の続編や関連作が比較的少なかったこと、『ガンダム』『マクロス』『エヴァ』……といったロボットアニメの名作の多くはボーイ・ミーツ・ガールの要素が大きいことなどが、証左として挙げられるでしょう(『マジンガーZ』『ゲッターロボ』等は別の文脈にあり、ボーイ・ミーツ・ガールの代わりに男と男の関係性がよりクローズアップされます)。

    この理由は、少年が社会に揉まれて大人になる過程を描く現代のビルドゥングスロマンにおいて、異性と出会って恋愛して成長するというくだりに多くの人が共感するから、と言い切ってしまって良いでしょう。ボーイ・ミーツ・ガールを童貞ミーツ女と言い換えれば、童貞であるアムロや一条輝やシンジくんが、異性の間で右往左往するさまが、戦闘シーンと同じくらいかそれ以上に印象に残っている人も多いはずです。


    ●ボーイ・ミーツ・ガールとしての『エウレカセブン』

    『エウレカセブン』が特に良くできていたのは、男子にとって女子、つまり異性は異星人と同じくらい理解が難しい存在である――というのを徹頭徹尾描いていたことでしょう。劇中、エウレカは自分が人間でないことに悩み、レントンとの触れ合いを拒否したりしますが、これは男の目から見た女の悩みの分からなさ、ということでもあります。また、2クールかけてレントンとエウレカの異性としての交流が描かれ、いわゆるカップルになるわけですが、その後の第3、4クールでは、男と女が付き合っていく上でのどうしようもない不和だったり、モーリス、メーテル、リンクの三人を子供とした上での夫婦の問題を描いたりしたのが、他のロボットアニメと比べた上で進歩的な点でした。前者は『エヴァ』におけるレイやアスカ、『ガンダム』におけるクスコ・アルやカテジナのようなエキセントリックな異性を引き継いでいますし、後者は『オネアミスの翼』『Vガンダム』における主人公を精神的には幼いにも関わらず父親の役割を演じなければならない男とした上での疑似家族描写に繋がります(アニメ史的には『天気の子』まで引き継がれます)。一方で、『エヴァ』は異性と同じくらい親や年上の知り合いや友人が理解不能なのに対し、『エウレカ』は話が進むに従ってホモソーシャルな結びつきが強くなっていくのが特徴でもあります。


    ●ビルドゥングスロマンにおける「アニキ」

    また、ビルドゥングスロマンにおいて主人公のライバルでありメンターでもある「アニキ」の描写もものすごく上手くいっていました。「アニキ」であるホランドとは、途中まではエウレカを(保護者としてですが)取り合う仲になります。更に、神話的には近親相姦の相手となりやすい兄の元恋人でもあり(レントンとダイアンという名前が『トレインスポッティング』からとられているところにも留意)、現恋人のタルホはレントンに性的なちょっかいを出したりします。特にタルホは、ホモソーシャル的な集団での「アニキ」の恋人という点ではたけし軍団における細川ふみえ的な居場所の無さを出発点としつつ、後半になるとホワイトベースのような母艦に住む疑似家族における疑似的な母親にまで立ち位置を変える「成長」を果たしました。一方でホランドはもう一人の主人公的立ち位置になります。実の兄であるデューイがタルホの元恋人としていたことと考え合わせると、「アニキ」と女を取り合う関係が重ね合わせられるわけです。

    シャアとララァやセイラを取り合うアムロ、ゲンドウとレイを、加持さんとアスカやミサトを取り合うシンジ……「アニキ」と女を取り合い、和解したりしなかったりすることが、ロボットアニメにおけるボーイ・ミーツ・ガールを通したビルドゥングスロマンの華といっていいでしょう。『エウレカセブン』は音楽やサーフィン・スケーター文化の引用が話題になりましたが、このように考えると、本当に引用したかったものが何だったのか分かります。ヒップホップやビートニク文学がやったように、『エウレカセブン』が新しいものを生み出すためにサンプリングやコピー&ペーストのカットアップの対象としたものは、アニメでありロボットアニメだったのです。

     
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