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【第383号】『ワイルド・スピード』:捏造されるノスタルジーと底が丸見えの底なし沼
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【第383号】『ワイルド・スピード』:捏造されるノスタルジーと底が丸見えの底なし沼

2023-05-31 07:00
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    マクガイヤーチャンネル 第383号 2023/5/31
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    おはようございます。マクガイヤーです。

    また離島に旅行に行ってきたのですが、やっぱ旅行は良いですね!

    実質48時間の旅なのですが、完全に非日常なので、とても良い気分転換になりました。



    マクガイヤーチャンネルの今後の放送予定は以下のようになっております。



    〇6月4日(日)19時~「最近のマクガイヤー 2023年6月号」

    お題

    ・時事ネタ

    『サンクチュアリ -聖域-』

    『TAR/ター』

    『ライフ・イズ・クライミング!』

    『最後まで行く』

    『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』

    『雄獅少年/ライオン少年』

    『65/シックスティ・ファイブ』

    『クリード 過去の逆襲』

    『怪物』

    その他、いつも通り最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。



    〇6月25日(日)19時~「『水星の魔女』は「ガンダム」なのか?」

    Season2が放送中の『機動戦士ガンダム 水星の魔女』が佳境を迎えています。

    テレビの『ガンダム』シリーズ初となる女性主人公、更に学園が舞台ということで、いったいどんなアニメになるのか放送前から話題を呼んでいた本作ですが、ほぼ『少女革命ウテナ』な第一話を経て、ここにきて「ガンダム」としかいえない展開を迎えています。一方で、Season2になっても「学園もの」であることは放棄していなかったりもします。

    そこで、『機動戦士ガンダム 水星の魔女』を「ガンダム」や「学園もの」の観点から解説するような放送を行います。

    ゲストとしてアニメ監督の安藤正臣さん(https://twitter.com/miozin35)と虹野ういろうさん(https://twitter.com/Willow2nd)をお迎えしてお送り致します。



    〇藤子不二雄Ⓐ、藤子・F・不二雄の作品評論・解説本の通販をしています

    当ブロマガの連載をまとめた藤子不二雄Ⓐ作品評論・解説本『本当はFより面白い藤子不二雄Ⓐの話~~童貞と変身と文学青年~~』の通販をしております。

    https://macgyer.base.shop/items/19751109


    また、売り切れになっていた『大長編ドラえもん』解説本『大長編ドラえもん徹底解説〜科学と冒険小説と創世記からよむ藤子・F・不二雄〜』ですが、この度電子書籍としてpdfファイルを販売することになりました。

    https://macgyer.base.shop/items/25929849


    合わせてお楽しみ下さい。





    さて、本日のブロマガですが、先日のニコ生に引き続き、改めて『ワイルド・スピード』について書かせて下さい。




    ●捏造とシリーズ延命

    というわけで『ワイルド・スピード』最終2部作、あるいは3部作の1作目映画『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』が公開されましたが、改めてシリーズ全体を考えてみると、『ワイルド・スピード』とは様々なものを捏造することで成功した映画シリーズであるのではないかと思うのですよ。


    現在まで続くシリーズの基礎となったのは4作目『MAX』ですが、ここで主人公がドムに変わります。遠からずマイノリティとなるアメリカの白人が、混血を是とするラティーノのコミュニティに先入する1作目、主人公は変わらないまま舞台をマイアミに移した2作目、完全にスピンオフな3作目を経て、まるで最初から主人公がドムであったかのようにシリーズが仕切り直されます。主人公が捏造されたわけです。

    4作目で死んだドムの恋人レティは、6作目『EURO MISSION』で生き返ります。正確に書けば、死んでいなかったことが判明します。「これこれこういう具合で死んでいなかった」という過去が捏造されたわけです。以後、同様に過去を捏造されてシリーズに復帰するキャラが何人も登場します。


    この「死人が生き返る」というのが『ワイスピ』最大の捏造ですが、同時期にもうひとつ大きな捏造が始まります。

    「物理法則の完全無視」です。

    クルマをガードレールにぶつけることで人間が高くジャンプしたり、どんなに重いクルマが結わえられていても絶対にロープが切れなかったりするのです。「どんなに高いところから人間が落ちても、クルマのボンネットで受け止めれば大丈夫」というのはシリーズのかなり初期からやっており、この描写だけなら他のハリウッド製アクション映画でもやっていたのでそれほど違和感が無かったのですが、空中でレティをキャッチしたドムがその勢いのまま着地するという、ベクトルとスカラーの合成を完全無視した『EURO MISSION』に至っては、なにか越えられない壁を越えてしまった感があります。『ワイスピ』世界には独自の物理法則があるとしか思えません。

    言い換えれば、独自の物理法則を捏造してしまったわけです。

    以後、永遠に続くかと思われる長い滑走路が登場する『SKY MISSION』、クルマで原子力潜水艦を破壊する『ICE BREAK』、クルマがジェット燃料を用いて宇宙に飛び出す『ジェットブレイク』と、「捏造」がインフレしていきます。


    なぜこのような「捏造」をするのでしょうか?

    「クルマに乗ればオレたちは最強」というテーマを描きやすいこと、古きよきハリウッド製プログラムピクチャーの現代版として作られていること(どこまでも続く滑走路は『駅馬車』のどこまでも続く滑走路を連想させます。https://realsound.jp/movie/2017/05/post-4967_2.html)、CGIの発達により荒唐無稽なシーンでも比較的低コストで一定の説得力がある形でつくれるようになったこと……などが挙げられますが、一番大きな理由はシリーズ延命のための目新しさでしょう。

    いつも観客が日常で見馴れているクルマに、世界中の観客が感情移入できる他人種・ワーキングクラスっぽい登場人物が乗り込み、今までみたこともないカーアクションをする――これが『ワイスピ』シリーズがヒットし、10作を越えて続編が作られている理由でしょう。『TOKYO DRIFT』でパツキン白人がいる高校の給食に天婦羅がでたり、パチンコ屋の地下にアジトがあったりする「捏造」が、今となっては可愛らしく思えます。



    ●捏造される家族

    しかし思い返せば、このシリーズはイタリア系とアフリカ系の両親を持つ――ラティーノの血が1滴も入っていないヴィン・ディーゼルがラティーノから構成される窃盗団のカリスマボスを演じることから始まったのです。今でも人種的搾取という声が上がらないほど、ヴィン・ディーゼルは白人にも黒人にも似ていませんでした。現代の、「いま」のアメリカを象徴する映画スターの1人、と言っても良いでしょう。

     
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