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マクガイヤーチャンネル 第405号 2024/3/27
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おはようございます。マクガイヤーです。

次回のニコ生、町山さんと『オッペンハイマー』の話ができるのが楽しみでなりません。博士号とるためにキャッシングしたりしたものですが、とっておくものですね!



マクガイヤーチャンネルの今後の放送予定は以下のようになっております。



〇4月1日(月)21時~「町山智浩とDr.マクガイヤーの『オッペンハイマー』復習回」(開始時間がいつもより遅くなりますのでご注意下さい)

3/29より映画『オッペンハイマー』が公開されます。「原爆の父」として知られる理論物理学者ロバート・オッペンハイマーの生涯を描いた伝記映画です。クリストファー・ノーランが監督と脚本、共同制作を務め、上映時間180分の大作です。

本作はアメリカで昨年7/21に公開され、先日授賞式が行われた第96回アカデミー賞で作品賞、監督賞、男性俳優の主演と助演賞、撮影賞、編集賞、作曲賞の7部門を受賞しました。しかし日本では公開が遅れ、世界的な評価が定まった後にやっと上映されるという状況です。

また本作は登場人物が多い上、複数の時系列が絡み合う、難解な映画でもあります。原爆開発を扱っており、全てを理解するためには科学史と物理学の知識もある程度必要です。

そこで、映画評論家の町山智浩さん(https://twitter.com/TomoMachi)と一緒に『オッペンハイマー』の内容を復習できるような放送を行います。



〇4月7日(日)19時~「21世紀のオーバリズム勇者! スーパーリアルロボットアニメとしての『勇気爆発バーンブレイバーン』」

1月11日よりテレビアニメ『勇気爆発バーンブレイバーン』が放送されています。視聴者、というかアニオタの期待やジャンルのクリシェを、斜め上に裏切ったり逆に利用する展開や描写で、SNSでは人気爆発中です。今後、更に視聴者の予想や期待を裏切るような展開や、ホモフォビアを回避するようなブレイバーンの謎が明かされることが期待されます。また、監督の大張正己が過去に手掛けた勇者シリーズやスーパーロボット大戦、シリーズ構成を務める小柳啓伍の過去作品との類似点や相違点なども気になるところです。

そこで、大張正己や小柳啓伍のフィルモグラフィーを振り返りつつ、『勇気爆発バーンブレイバーン』の魅力に迫るようなニコ生を行います。

ゲストとしてお友達の虹野ういろうさん(https://twitter.com/Willow2nd)をお迎えしてお送り致します。



〇4月29日(月)19時~「最近のマクガイヤー 2024年4月号」

・時事ネタ

『ネクスト・ゴール・ウィンズ』

『DOGMAN ドッグマン』

『ゴールド・ボーイ』

『デューン 砂の惑星PART2』

『変な家』

『青春ジャック 止められるか、俺たちを2』

『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』

・『ロードハウス/孤独の街』

『ゴーストバスターズ/フローズン・サマー』

『アイアンクロー』

『クラユカバ』

『マンティコア 怪物』

・『シティーハンター』

『ゴジラxコング 新たなる帝国』

『悪は存在しない』

『キングオージャーVSドンブラザーズ』

『キングオージャーVSキョウリュウジャー』

その他、いつも通り最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。



〇藤子不二雄Ⓐ、藤子・F・不二雄の作品評論・解説本の通販をしています

当ブロマガの連載をまとめた藤子不二雄Ⓐ作品評論・解説本『本当はFより面白い藤子不二雄Ⓐの話~~童貞と変身と文学青年~~』の通販をしております。

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また、売り切れになっていた『大長編ドラえもん』解説本『大長編ドラえもん徹底解説〜科学と冒険小説と創世記からよむ藤子・F・不二雄〜』ですが、この度電子書籍としてpdfファイルを販売することになりました。

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合わせてお楽しみ下さい。





さて、本日のブロマガですが、『マダム・ウェブ』について書かせて下さい。



●『マダム・ウェブ』はそんなに悪くない

アメリカ本国で不評・不入りになっている映画『マダム・ウェブ』、どんなもんかなーと映画館に観に行ったら、結構面白かったんですよ。

や、『エンドゲーム』とか『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』くらい面白い、なんて主張する気はさらさらありませんよ。ただ、初期MCUが成功したのは「スーパーヒーロー映画を作るふりをしてジャンル映画を作る」という試みが上手くいったからだと思うのですが、『マダム・ウェブ』は得体のしれないモンスターみたいな力を持った怪人に、ささやかな予知能力を持った一般人が知恵と勇気で立ち向かうサスペンス・スリラーとして、そう悪くない出来になっていると思うのですよ。

原作でのマダム・ウェブは老婆で、盲目で車椅子で肉体的に弱いにも関わらず強力な予知能力を持っていて、スパイダーマンをサポートしたり、しなかったりするキャラクターです。90年代のスパイダーマンのアニメでの活躍で知名度を得ました(自分もこのアニメが00年代にカートゥーン ネットワークで放送された際に知りました)。プロフェッサーXに強い影響を受けたキャラクターですが、老婆で、預言者の要素が強いところが相違点といえるかもしれません。


このマダム・ウェブを主人公としてスピンオフ映画を作るというのは、かなりの冒険だと思うのですよ。人気キャラでコミックでも主役となることの多いヴェノムとは違います(モービウスやクレイヴンでスピンオフというのも冒険ですが)。一方で、キャラをどう扱ってもファンやマニアから文句が出ないという点で、自由度が高いともいえます。冷静に過去を振り返ってみれば、MCUが成功するまではアントマンが主役の映画を作るなんてケンコバなみに「正気ですか?」と問いたくなる企画だったわけです。マーベルに貸し出しているのでスパイダーマン不在でユニバースを作らなくてはいけないというソニーズ・スパイダーマン・ユニバース(SSU)の辛さと面白さがあるともいえます。


今回の映画『マダム・ウェブ』ですが、まずマダム・ウェブがまだ若くて健康で予知能力に完全に覚醒していない頃を舞台にするという点でプラス1点、若くてこれまたスパイダーセンスに覚醒前のスパイダーガールたちを仲間にするという点でプラス1点、若いベンおじさんが登場して覚醒前のマダム・ウェブと一緒にニューヨーク(NY)で救命士として働いているという点でプラス1点あげたいです。このままの設定と内容でアメコミが出版されたら、地味な秀作としてそれなりに受け入れられる気がするのですよ。


これらの中でも、キモは「ささやかな予知能力」という点でしょう。中盤、NYの地下鉄の中で見ず知らずの女の子3人が殺される予知をみるのですが、これを見捨てられない主人公は試行錯誤の末に3人が殺されない未来を選び取っていきます。この地下鉄の中での緊張感あふれる疑似タイムループなサスペンスのシーンがよくできています。『ミッション: 8ミニッツ』『シャッター アイランド』のような秀作を連想してしまいますし、なんなら『サブウェイ・パニック』『デッドゾーン』のような70-80年代の地下鉄&未来予知サスペンス映画の傑作のオマージュのようにも思えます。監督は『コンドル』を意識したそうですが、確かにいつエゼキエルに殺されるか分からないという緊張感は『コンドル』を受け継いでいます。まぁ、この雰囲気が劇中の時代設定である00年代と合わないというのが問題なのですが。


●スパイダーマン外伝としてもよくできている

関心したのは、若いベンおじさんが登場して、マダム・ウェブが他人を助けるヒーローとしての気づきを与えるという点でした。

ヴィランであるエゼキエルは、若いマダム・ウェブと同様に自身では制御できない予知能力と、常人より強い肉体を持っています。スーパーヒーロー映画によく出てくる主人公の「影」となる悪役で、同じ能力を持っているにも関わらず使い方や考え方次第でヒーローになったりヴィランになったりする、ということを表現しているわけです。

エゼキエルがNSAの監視システムを利用するというのも、現代アメコミの悪役らしくて関心しました。つまり、徹底した監視でテロリスト予備軍がテロを起こす前に捕まえる――というのが「いま」のアメリカであり、自由と安全を交換したポスト911社会であり、それを予知したり反映したりした映画が『マイノリティ・リポート』『エネミー・オブ・アメリカ』『ダークナイト(の終盤)』『ウィンター・ソルジャー』だったわけです(エゼキエル自身がNSAの職員だったらもっと良かったのですが、わりと中途半端なところが本作の欠点です)。

で、『スパイダーマン』においてベンおじさんが引用する格言「大いなる力には、大いなる責任が伴う」は有名ですが、本作ではこれをひっくり返し、「大いなる責任を果たせば、大いなる力を得る」という台詞をベンおじさんがそれとなく発するのには感心しました。ベン自身は義理の妹が出産することからこの言葉を口にしたわけですが、若きマダム・ウェブにとっては(自分の母のように)女の子3人を助けることが、ヒーローとして「覚醒」を得る道になるわけです。スパイダーマン外伝としてよくできたお話ではありませんか(その過程で、指名手配されているのに飛行機でペルーに行けちゃうのは、なんとかして欲しかったところではありますが)。