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マクガイヤーチャンネル 第413号 2024/9/25
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おはようございます、マクガイヤーです。

いきなり涼しくなって戸惑っています。

夜中はTシャツとパンツだけで寝ていたのですが、掛け布団を使わないと風邪をひきそうです。



マクガイヤーチャンネルの今後の放送予定は以下のようになっております。



〇9月29日(日)19時~「最近のマクガイヤー 2024年9月号」

・時事ネタ

・ちょっとだけ『トランスフォーマー/ONE』

・『犯罪都市 PUNISHMENT』

・『憐れみの3章』

・『Cloud クラウド』

・『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』

・『SONG OF EARTH ソング・オブ・アース』

・『ヒットマン』

・『ジガルタンダXX』

・『侍タイムスリッパー』

・『アビゲイル』

・『ラストマイル』

・『モンキーマン』

・『サユリ』

・『箱男』

・『ソウルの春』

・『ポライト・ソサエティ』

その他、いつも通り最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。



〇10月6日(日)19時~「『トランスフォーマー/ONE』公開記念 最近のトランスフォーマー」

映画『トランスフォーマー/ONE』が9/20より公開されます。『トランスフォーマー』シリーズ最新作となる3DCGアニメーション映画であり、セイバートロン星での若き日のオプティマスプライムやメガトロンたちの青春や、トランスフォーマーの起源を描く物語のようです。『トイ・ストーリー4』のジョシュ・クーリーが監督を務めることにも注目です。

これを記念して、タカラトミーのプロダクトデザイナー 大西裕弥さんと、玩具Youtuberのヲタファさんをお呼びして、『トランスフォーマー/ONE』や玩具としてのトランスフォーマーについてトークする番組を行います。



〇10月21日(月)19時~「最近のマクガイヤー 2024年10月号」

詳細未定。

いつも通り最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。



〇藤子不二雄Ⓐ、藤子・F・不二雄の作品評論・解説本の通販をしています

当ブロマガの連載をまとめた藤子不二雄Ⓐ作品評論・解説本『本当はFより面白い藤子不二雄Ⓐの話~~童貞と変身と文学青年~~』の通販をしております。

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また、売り切れになっていた『大長編ドラえもん』解説本『大長編ドラえもん徹底解説〜科学と冒険小説と創世記からよむ藤子・F・不二雄〜』ですが、この度電子書籍としてpdfファイルを販売することになりました。

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合わせてお楽しみ下さい。





さて、本日のブロマガですが、ニコ生のまとめがてら『エイリアン:ロムルス』について書かせて下さい。



●オワコンからの復活

『エイリアン:ロムルス』、自分は、おれは大好きですよ。

「エイリアン」というシリーズ自体が結構好きなおれですが、思えば最近はオワコンに近い状態でした。

シリーズとしての新しさを狙った、というかリドスコがやりたい放題やった前日譚『プロメテウス』『コヴェナント』はあまり評判が良くなく(おれは今でも続編が観たいです)、ゲームやフィギュアやコミックは、(おれのような)オタクが買うので、映画に関係なく発売されまくっていました。

オワコン一歩手前、いやオワコンだったと言っても良いでしょう。

ところがどうでしょう。8千万ドルの配信作品という中規模予算で企画された『エイリアン:ロムルス』は、ネット配信から劇場公開に切り替えられ世界的に大ヒット。『エイリアン:アース』という配信ドラマシリーズも控えています。

この華麗なる復活には二年前に配信された『プレデター:ザ・プレイ』のことを思い出さずにはいられません。『ザ・プレイ』も『ロムルス』と同様に予算1億ドル未満の配信作品でしたが、反響の大きさから同じ監督によるシリーズの新作「Badlands」が準備中です。

おそらく、『エイリアン:アース』の内容と評価がどうであれ、また「エイリアン」シリーズの新作映画は数年以内に製作されるのでしょう。シリーズのファンとして嬉しいところです。


●『エイリアン:ロムルス』新鮮じゃない問題

ただ、シリーズとして新しいところが全くないじゃないかという批判もよく分かります。

「エイリアン」シリーズの特徴(お約束)を列記すると以下になるのではないでしょうか。


・逃げ場の無い閉鎖空間で人間を苗床としてしか認識しない宇宙のモンスターに襲われる

・エイリアンの生態(フェイスハガー→チェストバスター→ゼノモーフへの形態変化+酸性の体液)を話に絡めて全部みせる

・自分の身体の所有権が自分に無い怖さを描く

 ・フェイスハガーに「感染」し、エイリアンが「増殖」する怖さ

 ・個人を支配しようとする企業や国家の怖さ

 ・会社の下僕であるアンドロイドやマザーコンピューターの非人間性

 ・立場の弱い女性の辛さ

・主人公は女性であり、フェミニズム的なテーマが内包される

・仲間たちとの内輪もめが起こる

・人間が生理的に嫌悪する性器・レイプ・妊娠(感染)・変形・死のメタファーがある

・最後(第四幕)に誰もみたことのないクリーチャー(エイリアンの新種など)が登場する

・それを命がけで宇宙に棄てる


『エイリアン:ロムルス』はこれらをすべてやっています。

実のところ本作は初代『エイリアン(1)』と『2』の合体で、『3』『4』や『プロメテウス』、『コヴェナント』の要素を取り入れたものになっています。だたこのやり方があまりにもそつが無さすぎるので、良くいえば「エイリアンのベスト盤」、悪くいえば「新鮮さが無い」という評価になってしまうのです。

『1』と『2』の間という時代設定も新鮮さが感じ取れない原因の一つでしょう。『プレデター:ザ・プレイ』も「プレデター」シリーズのお約束をすべてこなしていたのですが、18世紀のアメリカ植民地時代でコマンチ族女性を主人公にするというシチュエーションが新鮮さを生んでいました。

リドスコがやりたい放題やったら「これは「エイリアン」じゃない」、フェデ・アルバレスがシリーズのお約束に則って作ったら「新鮮さがない」……観客というか消費者というのは本当に我儘ですが、仕方のないところです。


●『エイリアン:ロムルス』の新しさ

しかし、気づき難いかもしれませんが『エイリアン:ロムルス』にも、新鮮な部分というかシリーズとしての新要素はあるのです。

一つは、ティーンホラーになっている点です。

これまでの「エイリアン」映画の登場人物のほとんどは大人のおじさん・おばさん――大人の労働者や軍人でした。子供のキャラクターは『2』のニュートくらいだったのです。

それが今作は全員若者、特に主人公のレインは26歳なのにまだ10代にみえるケイリー・スピーニーを起用しています。10代、20代の若者たちが、田舎町や山小屋や卒業パーティで調子こいてたら殺人鬼に虐殺されるホラー映画がティーンホラーなのですが、監督のフェデ・アルバレスはティーンホラーで成り上がったこともあり、この文脈を「エイリアン」に持ち込んでいるわけです。

故に、登場人物はある意味でティーンホラーの類型的キャラになっているのが面白いところです。いじめられっ子としてのアンディ、いじめっ子としてのビヨン、ジョックスとしてのタイラー、ゴスっ子としてのナヴァロ……

しかも彼らは全員、貧乏な若者として大企業ウェイランド・ユタニに搾取されています。この状況から脱出したいという動機から物語が始まるわけです。朽ち果てた郊外に閉じ込められた若者たちが「ここではないどこか」に逃げ出そうと命がけの冒険をするという『ドント・ブリーズ』そのままの構図には、ウルグアイという第三世界出身という監督の経験が確実に影響しています。

フェデ・アルバレスは『2』の未使用カット――植民地コロニーを走り回る子供たちのカットをみて、この導入部を思いついたと語っています。


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居住可能になるまでまだ50年はかかるテラフォーミング・コロニーで育つ子供たちって、どんなだろうと考えた。おそらく親と同じ仕事に就くことになるだろう。何の希望があるんだ?

https://www.avpgalaxy.net/2024/03/21/fede-alvarez-alien-romulus-interview-round-up/

日本語訳

https://news.yahoo.co.jp/articles/6b5a40bd3ec34b2a857493f22fd3e15da1f9af5c?page=3

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もう一つはアンドロイドの扱いです。




以下ネタバレ。




本作に登場するアンドロイド「アンディ」は、まずレインの弟のような庇護すべき存在として登場します。しかし宇宙ステーションに潜入するためにはアンディの力が必要であり、更に最終目的地であるウェイランド・ユタニの支配下にない惑星にアンドロイドは連れていけません。

レインの仲間たちはトロッコ問題的状況で大勢が生き残るために少数者であった両親を犠牲にしたアンドロイドを嫌っているのですが、自分たちも生き延びるためにアンドロイドを犠牲にしようとしていることに気づいていません。そして、アンディの性格と能力がチップ交換により『アルジャーノンに花束を』の如く変化し、力関係も変化します。

……そう、この映画は手塚治虫や石ノ森正太郎やフィリップ・K・ディックがロボットやサイボーグや新人類やアンドロイドを使ってやっていた、リドスコが『ブレードランナー』や『プロメテウス』、『コヴェナント』でやろうとしていたテーマ――「人間もどきと人間らしさ」――を、リドスコよりも真っ当な方法でやっているのでした。

「ロムルス(とレムス)」のタイトル通り、本作は登場人物が誰かときょうだい関係にありますが、アンディのみレインとルークとの二種類のきょうだい関係にあるのもポイントです。


さらにもう一つは、ゲームからの引用です。

46歳のフェデ・アルバレス監督は年齢相応にゲームが大好きらしく、『Dead Space』や『バイオハザード』から引用したようなシチュエーションが多数あります。特に重力発生装置をスイッチでON/OFFするのは『Dead Space』そっくりです。

『エイリアン アイソレーション』からは影響を受けたことを認めており、セーブポイントとして使われていた緊急電話は映画にも出てきました。

https://www.thegamer.com/alien-romulus-alien-isolation-easter-egg-emergency-phones/

シチュエーションやガジェットだけでなく、話の運び方もゲームっぽいです。惑星を脱出するには冷凍休眠装置が必用→しかし冷凍休眠燃料が足りない→冷凍休眠燃料を抜き出すことでエイリアン覚醒、ついでに閉じ込められる→扉のロックを解除するためにはアンディのチップを取り換える必要がある→アンディの「第一の目標」が書き換えられてしまう……といったように、次々と目標が書き換わるさまは、お使いイベントの連続のようです。

これを「ゲームのようでくだらない」ととるか、「これまでのシリーズではみられなかった新鮮さ」ととるかは、観客によるのでしょう。


●「エイリアン」が寄生するのは監督の個性

シリーズを振り返ると、SFゴシックホラーだった『1』がヒットし、続編をSFアクションとして作った『2』が更にヒットし、両作とも新鮮で批評的評価も髙かったことがシリーズの運命を決めたといって良いでしょう。

言い換えれば『2』でシリーズに「呪い」がかかったともいえます。人間がエイリアンに襲われるというプロットは踏襲しつつ、常に新しい作品を作らなければ「エイリアン」シリーズの一作として相応しくない――という呪いです。

更に言い換えれば――宿主の能力を受け継いで様々な環境に適応したゼノモーフとなるのがエイリアンという「完全生物」の特徴ですが、『エイリアン』という映画シリーズも様々な監督の個性に「寄生」し、時代やタイミングという環境に合わせた様々な作品が生まれた――となるでしょう(小島監督が「ミームって言葉使うとダサくなっちゃう」と言ってたので使わないようにしています)。

その意味では、『エイリアン:ロムルス』は「シリーズに新風を吹き込む」とか「映画史を変える傑作」とかではありませんが、オワコンだったフランチャイズをこのタイミングで復活させるという意味でぴったりな程度に宿主であるフェデ・アルバレスの個性を反映した、申し分のない個体だった――ということになるのではないでしょうか。

シリーズの新作に期待したいのですが、『コヴェナント』や『エイリアンVSプレデター』の続編も観たい今日この頃です。




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