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マクガイヤーチャンネル 第435号 2025/7/16
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おはようございます。7/20の参議院選挙が気になるマクガイヤーです。

なんだか今年は春も梅雨もほとんど無いまま夏になりそうな感じですが、みなさん如何おすごしでしょうか。どこかで海に行きたいなあ。



マクガイヤーチャンネルの今後の放送予定は以下のようになっております。



〇7月21日(月)13時~「緊急特番 町山智浩出演『スーパーマン(2025)』とジェームズ・ガンとアメリカのいま」(放送時間がいつもと異なります。ご注意下さい)

『スーパーマン(2025)』が7/11より公開されています。

新生DCU映画の第一弾になりますが、移民としてのスーパーマンに焦点を当てると共に、現実のいまを反映した内容に日本でも本国アメリカでも話題沸騰中です。また、監督であるジェームズ・ガンの過去作に連なるお話であることにも注目してしまいます。

そこで映画評論家の町山智浩さん(https://twitter.com/TomoMachi)をお呼びして、『スーパーマン(2025)』について語り合う番組を行います。

2023年に『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』とジェームズ・ガンについて語った動画(https://www.nicovideo.jp/watch/so42202354)や、』『町山智浩のアメリカスーパーヒーロー映画 徹底解剖』(https://amzn.to/44WMRPX)と共にお楽しみ下さい。



〇8月17日(日)19時~「『見える子ちゃん』『ドールハウス』『近畿地方のある場所について』、『8番出口』公開記念、Jホラー映画なう」

6/6に『見える子ちゃん』、6/13に『ドールハウス』が公開されました。いずれも日本ホラー映画史に残りそうな傑作ホラー映画です。また、8/8に『近畿地方のある場所について』、8/29に『8番出口』が公開されます。前者はベストセラーとなったホラー小説、後者は大ヒットしたインディーゲームの映画化です。前者はどんな原作も「自分の映画」にしつつ傑作を作る白石晃士、後者は良い意味でも悪い意味でもプロデューサーでありつつ『百花』で新たな面をみせた川村元気が監督することでも話題です。2025年はJホラーにとってパラダイムシフトの年となりそうです。

そこでJホラー映画の歴史を振り返りつつ、最近のJホラー映画のトレンドについて語り合うような放送を行います。

ゲストとして映画ライターの竹島ルイさん(https://x.com/POPMASTER)と編集者のしまさん(https://x.com/shimashima90pun)をお迎えしてお送り致します。



〇8月25日(月)19時~「最近のマクガイヤー 2025年8月号」

・時事ネタ

・『ストレンジ・ダーリン』

・『フォーチュンクッキー』

・『かたつむりのメモワール』

・『LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族』

・『MOON GARDEN ムーンガーデン』

・『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』

・『F1 エフワン』

・『28年後... 』

・『メガロポリス』

・『罪人たち』

・『ルノワール』

・『JUNK WORLD』

・『フロントライン』

・『プレデター 最凶頂上決戦』

・『無名の人生』

・『We Live in Time この時を生きて』

その他、いつも通り最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。



〇藤子不二雄Ⓐ、藤子・F・不二雄の作品評論・解説本の通販をしています

当ブロマガの連載をまとめた藤子不二雄Ⓐ作品評論・解説本『本当はFより面白い藤子不二雄Ⓐの話~~童貞と変身と文学青年~~』の通販をしております。

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また、売り切れになっていた『大長編ドラえもん』解説本『大長編ドラえもん徹底解説〜科学と冒険小説と創世記からよむ藤子・F・不二雄〜』ですが、この度電子書籍としてpdfファイルを販売することになりました。

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合わせてお楽しみ下さい。





さて、本日のブロマガですが、『サブスタンス』と『MaXXXine マキシーン』について改めて書かせて下さい。



●お互いを補完し合う『サブスタンス』と『MaXXXine マキシーン』

『アトロク2』のムービーウォッチメン『MaXXXine マキシーン』回を聴いていたら、「『サブスタンス』と『MaXXXine マキシーン』は補完し合うようなところもある」と評していました。まさにその通りだと思うのですよ。


『ガール・ウィズ・ニードル』、『ノスフェラトゥ』等々、ここ最近「世界・システム・環境に抑圧された女性がどう立ち向かうか」を描いた映画が立て続けに公開されていますが、特にこの二作はお互いを補い合う関係にあると思います。

つまり、同じテーマを扱っている以上の共通点がありつつ、テーマを扱う上での相違点もあるということです。


まず共通点として、以下が挙げられるでしょう。

監督は、一方は48歳フランス人女性、もう一方は44歳アメリカ人男性でありつつ、互いに80年代(周辺)のジャンル映画を偏愛し、引用している作品も多いですが、単なるサンプリング以上のものになっています。ヒッチコックは教養、という感じですね。

また、二作はハリウッドを舞台にしていますが、監督は二人とも非ハリウッド出身(コラリー・ファルジャはパリの映画学校ラ・フェミス、タイ・ウエストはNYのスクール・オブ・ビジュアル・アーツ出身であり、ケリー・ライカートの紹介でラリー・フェッセンデンに師事)です。ハリウッドを俯瞰できる視点をキャリアの初期から持ち得ていたといっていいでしょう。


●ベティ・デイビィスのいう「怪物」とはなにか

最大の共通点は、二作とも女優が「怪物」になる映画だということです。


ハリウッドではショービジネスの裏側のドタバタを描く「バックステージもの」が数多く作られてきました。初期のそれは『ブロードウェイ・メロディー(1929)』や『四十二番街(1933)』のように、ミュージカルを映画でやるためにブロードウェイを舞台としたものでしたが、『スタア誕生』の原型となった『栄光のハリウッド(1932)』のように、ハリウッドを舞台とした非ミュージカル映画も次第に作られるようになってきました(非ミュージカル映画とはいっても、何度もリメイクされた『スタア誕生(1937)』のように、歌唱シーンが最大の見せ場である場合も多いです)。一方で、ブロードウェイを舞台した映画は減り、ハリウッドを舞台とした映画は着実に増えていきました。

なぜか。これは漫画家漫画を例にとれば分かりやすいかもしれません。60年代は『漫画家残酷物語』、70-80年代は『まんが道』の他に数える程度しかなかった漫画家漫画が、90年代以降は爆発的に増えていきました。業界が発展すると共に世代が一回りし、自分たちや自分たちがいる業界自体を俯瞰でみることができるようになっていったのです。


そして誕生したのがサイコビディやハグスプロイテーションと呼ばれる、高齢女性が精神的安定を失って異常行動に走るホラーやスリラーです。それらの大半は業界人(年代によってブロードウェイだったりハリウッドだったりします)を主役とした映画――より直接的にいえば「高齢女優が狂う映画」でした。

具体的には、『サンセット大通り(1950)』、『何がジェーンに起ったか?(1962)』、『ヘレンに何が起こったのか?(1971)』『永遠に美しく(1992)』等々のような、若い頃は美人で名女優として活躍した女性が、年齢を重ねると共に仕事が無くなって落ち目になり、若い女性や男性、世の中そのものに恨みを抱く「怪物」になる――という映画です。

「ハグスプロイテーション」の名から分かる通り、こういった映画はエクスプロイテーション映画の1ジャンルです。つまり、公序良俗に反するが故に多くの観客が思わずみたくなるようなきわどいテーマを扱い、大儲けするために作られる映画群です。

かつて一世を風靡したスターが落ちぶれ、狂ったみじめな「怪物」になる、しかも「怪物」になるのはスターであるが故に男を馬鹿にしているであろう女の方が良い、どんなに美しい女優も高齢になれば醜くなる、美しかった女が醜くなれば狂う、大衆がみたいのはそれなのだ――という思いから作られているわけです。


しかし、家父長制で男尊女卑な社会で努力し、苦労してスターとなった女優からしてみれば、これほどどうしようもない社会構造はありません。男性とほぼ同じ人数が存在していても、いまの社会で女性はマイノリティです。女優は俳優としてどんなに努力しても、ルッキズムやエイジズムから逃れられません。

『MaXXXine マキシーン』の冒頭では「ショウビズ界では怪物とよばれてこそスター」というベティ・ディビスの言葉が引用されます。

ベティ・ディビスはハリウッドを代表する演技派女優であり、サマーセット・モームの『人間の絆』を原作とする『痴人の愛(1934)』で主人公を翻弄する「悪女」を演じてスターとなりました。『青春の抗議(1935)』と『黒蘭の女(1938)』の二作で悪女を演じてアカデミー賞を受賞しましたが、前者では27歳にして既に場末の安酒場で酔いつぶれる零落したかつての名女優を演じています。

その後、ベティ・ディビスは野心あふれる若い付き人とバチバチの争いを繰り広げる大女優を演じた『イヴの総て(1950)』を経て、ハグスプロイテーションの代表作といえる『何がジェーンに起ったか?(1962)』『ふるえて眠れ(1964)』で50代にして第二の黄金期を迎えます。どちらも悪女であり「怪物」を演じているのですが、20代の頃と異なり、40-50代だと零落したかつての名女優を演じることの説得力が全く違うわけです。

一方で、ずっと「怪物」を演じざるを得なかったベティ・ディビスの心境やいかばかりか。男であれば、「怪物」以外を演じて評価される機会もあったに違いありません。彼女は「男がやると尊敬される。女がやると嫌われる」という名言も残しており、これは後にフェイ・ダナウェイやジェーン・フォンダらが引用するほど有名な言葉となりました。


●マイノリティとしてのホラー、ポルノ、80-90年代ジャンル映画愛好者

二作の相違点は、「怪物」の表現の仕方です。というか、ハリウッドの描き方や人物配置の違いよりも、「怪物」の表現の違いが印象的です。


『サブスタンス』ではラテックスとシリコンで出来た「怪物」がそのまま出てきます。

主人公エリザベスは内面の「怪物」――常にルッキズムやエイジズムに晒される野心や承認欲求――を制御できず、二つに分裂した主人公が『サンセット大通り』や『イヴの総て』の如く憎しみ合った挙句、文字通り戦い合い(飛び蹴りシーンには爆笑してしまいました)、最終的に「怪物」が出現するのです。『ザ・ブルード/怒りのメタファー』という映画がありましたが、メタファーがそのまま画面に出てくる超現実的面白さが最高です。

一方で『MaXXXine マキシーン』の「怪物」はずっと内面にいるままであり、直接画面には写りません。

しかし『MaXXXine マキシーン』は三部作の最終作であり、前作・前々作を観た観客は主人公マキシーンの内面に「怪物」がいることを映画が始まる前から知っています。何者にもなれず田舎に閉じ込められた『Pearl パール』の主人公パールの内面に「怪物」が産まれ、何者かになろうとポルノ女優になった『X エックス』の主人公マキシーンは鬼婆となったパールを殺すことで「怪物」を受け継ぎます。

『MaXXXine マキシーン』は、ポルノ界でそれなりのスターとなったマキシーンが映画界でのスターを目指すべく、ホラー映画のオーディションを受けるシーンから始まります。バスター・キートンの姿をした変質者や、『チャイナタウン(1974)』のパロディのような私立探偵や、俳優を目指すも挫折した刑事が目の前に立ちふさがりますが、マキシーンの敵ではありません。マキシーンは内面の「怪物」を飼いならし、世の中に立ち向かう原動力としているからです。それでも勝てそうにない、家父長制の権化とも呼べる最強の敵には、シスターフッドや虐げられた者同士の連帯で立ち向かいます。マキシーンを助けてくれるのは同じ業界の女性や黒人や黒人のゲイたち――つまりマイノリティです。


コラリー・ファルジャもタイ・ウエストも、明らかに80-90年代のジャンル映画を偏愛し、沢山のオマージュを捧げています。しかし単なるサンプリング映画にはなっていません。両作とも、単なるオマージュ以上のものになっています。

コラリー・ファルジャはフランス出身ですが、フランスは長い間ジャンル映画不毛の地と呼ばれていました。また、タイ・ウエストが学んだNYのスクール・オブ・ビジュアル・アーツでは、80-90年代のジャンル映画やポルノ映画趣味は些か形見の狭いものであったのではないでしょうか。

こういった意味での作り手のマイノリティとしての自覚が、マイノリティとしての女優の行きづらさを描く映画に血肉を与えた――そんな想像をしてしまします。まぁ、『サブスタンス』は幼い頃からコラリー・ファルジャが女性として経験したあれやこれやが当然反映されていると思いますが。




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