おはようございます。マクガイヤーです。
もう10月です。この前正月だったような気もするのですが、あと三ヶ月で今年も終わってしまいます。早すぎるよう。
マクガイヤーチャンネルの今後の放送予定は以下のようになっております。
〇10月6日(日)19時~「『機動戦士ガンダム サンダーボルト』とガンダム外伝地獄」
漫画『機動戦士ガンダム サンダーボルト』が9/26発売のビッグコミックスペリオールで最終回を迎えます。おそらく太田垣康男のライフワークだったSF漫画『MOONLIGHT MILE』の連載を中断してまで始めた連載は、約13年、単行本にして27巻分(+外伝5巻分)続き、アニメ化もされました。大団円といって良いでしょう。
しかし、『MOONLIGHT MILE』が好きだった自分としては、複雑な思いもあります。
『サンダーボルト』はSF漫画としても戦争漫画としても傑作なのですが、果たして「ガンダム」である必要はあったのか、オリジナル作品である『MOONLIGHT MILE』との相違点、『鉄血』や『GQuuuuuuX』との相互影響等々……
そこで完結にあたり、『機動戦士ガンダム サンダーボルト』や太田垣康男の他作品、他のガンダム作品との関係性について語るような放送を行います。
ゲストとしてお友達の虹野ういろうさん(https://x.com/Willow2nd)をお迎えしてお送り致します。
〇10月20日(月)19時~「「すべての映画はアニメになる」のか?『秒速5センチメートル』とアニメ実写化映画」
10/10に実写映画『秒速5センチメートル』が公開されます。新海誠による2007年の同名アニメーション映画の実写化です。アニメと同じく劇中歌を山崎まさよしが担当しますが、63分の中編が約2時間の長編に改編されるそうです。松村北斗、高畑充希、森七菜らが出演することでも話題です。
押井守が「すべての映画はアニメになる」と発言してから20年以上が経ちました。映画のデジタル化により、実写映像でも作り手の意図に沿って完全にコントロール可能になる――実写とアニメの境界が無くなる――という意味の発言ですが、確かな限界もみえてきたように思います。
そこで実写映画『秒速5センチメートル』について解説すると共に、ここ最近のアニメ実写化映画について振り返るような放送を行います。
ゲストとして映画ライターの竹島ルイさん(https://x.com/POPMASTER)と編集者のしまさん(https://x.com/shimashima90pun)をお迎えしてお送り致します。
〇11月(日時未定)「最近のマクガイヤー 2025年11月号」
・時事ネタ
・『特別編集版 機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ ウルズハント』
・『爆弾』
・『フランケンシュタイン』
・『Mr.ノーバディ2』
・『ミーツ・ザ・ワールド』
・『藤本タツキ 17-26』
・『怪獣と老人』
・『トロン:アレス』
・『アフター・ザ・クエイク』
・『火喰鳥を、喰う』
・『ワン・バトル・アフター・アナザー』
・『プロセキューター』
・『テレビの中に入りたい』
・『THE オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ MOVIE』
・『ブラックバッグ』
・『ブラックドッグ』
・『宝島』
・『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』
・『チェンソーマン レゼ篇』
・『男神』
その他、いつも通り最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。
〇藤子不二雄Ⓐ、藤子・F・不二雄の作品評論・解説本の通販をしています
当ブロマガの連載をまとめた藤子不二雄Ⓐ作品評論・解説本『本当はFより面白い藤子不二雄Ⓐの話~~童貞と変身と文学青年~~』の通販をしております。
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また、売り切れになっていた『大長編ドラえもん』解説本『大長編ドラえもん徹底解説〜科学と冒険小説と創世記からよむ藤子・F・不二雄〜』ですが、この度電子書籍としてpdfファイルを販売することになりました。
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合わせてお楽しみ下さい。
本日のブロマガですが、先日のニコ生でもちょっと喋った『仮面ライダーガヴ』のストマック家と『科学戦隊ダイナマン』のジャシンカ帝国について書かせて下さい。
〇東映特撮は悪役のドラマが濃厚だと盛り上がる
というわけで、終盤に一気観したのですが、『仮面ライダーガヴ』は久しぶりに面白かったライダーでした。ここ数年、きっちり作り込んでるウルトラマンと初回から飛び道具的な仕掛けを用意しているスーパー戦隊は定期視聴するも、すっかり保守的になってしまったライダーは初めの数回のみ観て視聴習慣が無くなることが続いていた自分としては意外です。少なくとも現時点で令和ライダーの中では一番面白かったのではないでしょうか。
自分が最も大きな面白さを感じたのは、悪役のストマック家の存在感です。
全員顔出しの人間態があってキャラが立っているのは、いまのライダーの悪役として当然なのでしょう。また、異種族で、主人公の血族で、家族で、企業で、反社会的勢力で……一つ一つの設定はこれまでの東映特撮で使われてきました。しかしトータルとして、ライダーのみならず人間社会全体にとっての脅威であり、ストマック家内部のみならず異世界の異種族内部でも権力争いがあるという大きな構図がありつつ、若者であるジープやシータやリゼルをもう一方の主人公とする……というのが良かったですね。
このストマック家に主人公であるライダーたちが絡んでいくわけですね。肉親を殺された復讐で毎週敵を倒すとか、悪の組織を足抜けしようと逃亡するのだけど毎週追手に襲われるとかいった話の作り方は特撮に限らない東映のお約束ですが、これらとジープがライダーに対して行おうとする復讐やストマック家での成り上がりが複雑に絡んでいく……というのが最高でした。
平成の一時期の東映特撮は、『エヴァンゲリオン』の影響を受けたのか、小林靖子のクセが出てしまうのか、味方側のイチャイチャや嫉妬で話を動かし、悪役側のドラマが薄くなることが欠点の一つとして挙げられていましたが、最近は全然そんなこと無くなりましたね。

そりゃ、映画『お菓子の家の侵略者』のめちゃめちゃ家族仲が良いバージョンのストマック家に興奮したり、ビジュアルブックも発売されようというものです。
〇ジャシンカ帝国とは?
自分はおっさんなので、ストマック家には『科学戦隊ダイナマン』ジャシンカ帝国を、ジープにはメギド王子のことを、強烈に思い出させられました。
『ダイナマン』はスーパー戦隊の7作目であり、出向していた東映アニメーションで『ダイモス』や『ダルタニアス』といった長浜忠夫作品に関わった鈴木武幸プロデューサーが、シリーズの刷新としてアニメ要素を本格的に導入した作品です。
「悪役側に魅力があることでヒーローも引き立つ」と考えた長浜は、出渕裕の起用によるデザイン面での刷新、美形キャラやダークヒーローの投入、大河ドラマのような連続ドラマ性の導入等を行いました。
その代表例がメギド王子です。
数万年前に地球に落下した隕石に付着していた原始生命物質が地底で繁殖し、人類とは異なる独自の進化を遂げた「有尾人」の帝国がジャシンカ帝国です。久生十蘭の昔からある「地底獣国」に、人間とは異なる異種族による権威的な帝国がある、というものですね。有尾人にはその名の通り尻尾があるのですが、尻尾の数が多いほど社会階級が高いという分かりやすさで権威主義を表しているのが上手いところです。10本尻尾になると不老不死と超魔力を得られるという伝説まであります。「科学戦隊」と対になる前近代的体制であるわけですね。
帝王アトンは9本尻尾、その息子であり新帝王の座を狙うメギド王子は5本尻尾ですが、第一話で1本切り落とされ、その恨みでダイナレッドをつけ狙います。ライバルでありメギドの従妹である王女キメラは4本尻尾、忠臣であり武人であり博士であるカー将軍は7本尻尾ですがメギドやキメラたち若者を上に立て、教育係を務めています。なんだかんだいっても彼らは現皇帝の血族であり貴族なわけですね。中盤、ここに次期帝王を狙う7本尻尾の女将軍ゼノビアが加わりまず。ゼノビアは8年前、女帝を目指して帝王アトンを殺そうとした反逆であり、罰として千年洞窟に閉じ込められていたのですが、脱出して忠誠を誓うことで新たな皇帝候補となったのでした。帝王に忠誠を誓ってはいるものの、隙あらばジャシンカ帝国を乗っ取ろうという野心たっぷりです。これにより、帝国内での権力争いが激化します。
序盤のメギド王子はこの時期の特撮の悪役らしく愛らしいバカさがあり、大きな態度で馬鹿な作戦をやり、美味しい所は喧嘩友達のようなキメラにもっていかれ、帝王から怒られる――という愛される悪役といった趣です。しかし度重なる失敗とゼノビアの策略により、メギド王子は後継者レースから脱落し、父やカー将軍からも見棄てられ、罪人として千年洞窟に幽閉されます。「こんなところに一生いたくない……」と言いながら洞窟の天井から垂れる水滴をすする姿が子供心にも哀れだったことを強く覚えています。
その数回後、「ダークナイト」を名乗る第三勢力が登場し、ダイナマンとジャシンカ帝国双方を翻弄するかのように暗躍します。スーパー戦隊の終盤の展開を盛り上げるべく第三勢力が登場するというのはバンリキ魔王以来のお約束ですが、いかにもダークヒーローといったダークナイトのデザインのカッチョ良さに興奮したものでした。今考えれば正体はバレバレですし、放送時期が被っていた『ダンバイン』にも黒騎士が登場していたのですが、ダークナイトの声をちゃんと声優(飯田道朗)が務めていたこともあり、リアル小学生だった自分はなかなか気づきませんでした。
メギド王子は千年洞窟で「十本尻尾になると同時にその者は死ぬ」と記された古文書を発見し、これを利用してゼノビアを罠にはめます。直接対決で父アトンも殺し、若き帝王となると共に、キメラを女王として娶ります。この復讐から返り咲きまでの流れが鮮やかで、はっきりいって主役であるダイナマン側の活躍が霞んでしまうほどです。大切なのは、生まれつき決まっている尻尾の数に頼ることではなく「己を鍛え、自ら強くなることなのだ!」と喝破するのも、前近代の存在である貴族の息子が貴種流離譚のなかで覚醒するシーンとして見事でした。この上で『ダイナマン』という物語のラスボスになるわけです。妻となった直後からそれまでライバルだったキメラの口調が変わったり、最終決戦で敗北を悟ったメギドがキメラだけでも逃がそうとするもキメラはこれを拒否するという最期も、東映の時代劇的な大仰さと科学の粋を集めた特撮の融合という感じで実に感じ入ったものです。
〇ジャシンカ帝国のアップデート版としてのストマック家
「前近代的な体制を持った悪の組織」「次期首領の座を目指して争い合う幹部」「放逐された悪の幹部が素性を隠して復活」というのはこの後何度も東映特撮で繰り返されます。主人公たちが「オ―ラパワー」で戦う『光戦隊マスクマン』まで敵組織が地底帝国なのは安直の極みだと思うのですが(バブリーな悪の会社組織が適当だった)、長い長い伝統になっていったわけですね。
で、この上で『ガヴ』のストマック家はジャシンカ帝国のアップデート版にみえるわけですよ。
ストマック家は異世界であるグラニュート界の大手製菓会社にして家族経営の同族企業でもあります。初代社長である祖父の発明した闇菓子(人間を原料とし、グラニュート族にとって麻薬のような強い中毒性・依存性を持つ)の密造・密売で急成長を遂げます。
三代目社長であり現当主であるランゴ・ストマックは、人間に愛情を抱いた父への反発とグラニュート社会の支配という大願成就のために、富裕層向け闇菓子を売り捌くために高品質な人間――ヒトプレスを大量に仕入れようとします。「親父も死んだしあの女ももういない」という台詞を吐くこの時点でのランゴは、まるで「若き皇帝」のようですね。また、長女グロッタに武人と忠臣、次男ニエルブに博士と野心というカー将軍とゼノビアの要素が割り振られている、と見立てることもできます。
この三人の下に双子であり末子である三男ジープと二女シータがいます。二人はヒトプレスの仕入れを担当しているのですが、末子故に態度が大きい割に立場は弱いというのが面白いところです。主人公であるライダーたちに仕入れ妨害され続けた結果、ランゴは双子を解雇し、政略結婚させて富裕層へのパイプとして利用しようとします。見棄てたわけですね。
で、このジープとシータの双子の性別と服装や演技が逆転しているのが、いかにも令和という感じで抜群に良い訳ですよ。二人とも長髪で白黒のウィッグを被っているのですが、シータ役の川﨑帆々花は男性的、ジープ役の古賀瑠は女性的な仕草と衣装で演じています。LGBTであるかどうかは名言されていませんが(怪人態の姿が逆転していないことにも注意)、少なくともジープが女装していることから、クィアな存在であることは確かです。
クィアであるかどうかは関係なく、自分の意思を無視して結婚させられるのは堪らないわけです。故にこの双子はストマック家から逃げ出しますが、この状況を招いた仮面ライダーに対して恨みをはらすために戦闘となり、その最中にシータがジープをかばって爆死します。これ以後、罪悪感からジープがシータの幻影をみるようになるのがシェイクスピアのようです。
一人残されたジープは、自分たちを見捨てたストマック家と仮面ライダー双方に復讐するため、グラニュート族の名家ジャルダック家に婿入りし、ストマック社の秘密を密告するのでした。ジャルダック家の当主にしてグラニュート界の大統領ボッカ・ジャルダックはランゴを脅迫してストマック社を乗っ取り、彼を社長の座から仕入れ統括に降ろす一方でジープの妻である娘リゼルを社長、入り婿であるジープを副社長に据えます。実務の全権を担うことになったジープはランゴを仕入れ担当に降格し、ここにひとまずの復讐が果たされるのでした。
しかし一時共同戦線を張ったランゴと主人公達にボッカが殺され、ランゴは再び社長に返り咲き、ジープは再び失脚します。いつの間にかかけがえの無い仲になっていた妻リゼルが父ボッカの仇を討とうとして返り討ちに合うのを防ごうとします。ここでジープはリゼルをかばって死ぬわけですが、自分をかばって死んだシータの気持ちを初めて理解するというのが見事でした。また、どんどん復讐が連鎖していくわけですが、その無意味さを知った主人公の一人である絆斗が「お前らさあ、このままグラニュートの世界へ帰れ」と促すのもまた見事でした。『ガヴ』は復讐の連鎖を止める話だったわけですね。
〇現在の東映のメタファーとしてのストマック家
実に令和のファミリー企業らしいストマック家ですが、自分はここに東映のメタファーもみてしまうわけですよ。
ランゴは先代を否定する新しいリーダーですが、ストマック家という家父長制組織における父の代理のような存在でもあります。「家族」と「会社」を都合よく使い分け、きょうだいを使いこなすと共に搾取する姿は、まるで社長を「親」社員や下請けを「子」に喩えて、「ファミリー」の美名の下に搾取するちょっと前の日本型企業のようです。具体的にいえば吉本興業ですが、岡田茂とその息子が支配し、数年前に元APがセクハラ・パワハラ・未払い賃金・過重労働を訴えた東映を連想したりもします。元APによる「この世はヒーローはいない」というコメントは重いものです。
ギリギリでお馴染みだった東映特撮は近年製作体制を見直し、放送の数ヶ月前に撮影を終えるようにしています。『仮面ライダー ガブ』は最終回の約半年前に撮影を終え、余裕を持って劇場版製作にとりくんだそうです。リアルタイムで視聴者の反応を取り込むことは難しくなりますが、状況を変えようと真剣に取り組んでいるのかな、と思ったりもします。
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