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マクガイヤーチャンネル 第443号 2025/10/29
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おはようございます。マクガイヤーです。

スマホをiPhone17に更新したのですが、プランを見直すことで色々とオトクになりました……とみせかけて、キャリア変更を防ぐ手段のような気もしています。搾取されてるわー。



マクガイヤーチャンネルの今後の放送予定は以下のようになっております。



〇11月9日(日)19時~「最近のマクガイヤー 2025年11月号」

・時事ネタ

・『特別編集版 機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ ウルズハント』

・『爆弾』

・『フランケンシュタイン』

・『Mr.ノーバディ2』

・『ミーツ・ザ・ワールド』

・『ハウス・オブ・ダイナマイト』

・『M3GAN/ミーガン2.0』

・『おーい、応為』

・『トロン:アレス』

・『アフター・ザ・クエイク』

・『火喰鳥を、喰う』

・『ワン・バトル・アフター・アナザー』

・『プロセキューター』

・『テレビの中に入りたい』

・『ブラックバッグ』

・『宝島』

・『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』

・『チェンソーマン レゼ篇』

・『男神』

その他、いつも通り最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。



〇11月24日(月)19時~「しま、竹島ルイ、マクガイヤーが推す恋愛映画特集

11/21より内藤瑛亮監督・脚本による映画『ヒグマ!!』が公開される予定だったのですが、残念ながら公開延期となりました。これに合わせ、当チャンネルの番組内容も変更となりました。

世に「恋愛映画」は数あれど、本チャンネルではこれまでそのような映画をとりあげる機会はあまりありませんでした。自分が恋愛や恋愛映画を苦手としていたのが原因ですが、そんな自分ももうすぐ50歳、そろそろ恋愛映画特集をやろうと一念発起した次第です。

ゲストとして映画ライターの竹島ルイさん(https://x.com/POPMASTER)と編集者のしまさん(https://x.com/shimashima90pun)をお迎えします。自分を含めた3人が、恋愛当事者としての経験を踏まえた上で、それぞれの「押し恋愛映画」についてトークする予定です。刮目して待て!



〇藤子不二雄Ⓐ、藤子・F・不二雄の作品評論・解説本の通販をしています

当ブロマガの連載をまとめた藤子不二雄Ⓐ作品評論・解説本『本当はFより面白い藤子不二雄Ⓐの話~~童貞と変身と文学青年~~』の通販をしております。

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また、売り切れになっていた『大長編ドラえもん』解説本『大長編ドラえもん徹底解説〜科学と冒険小説と創世記からよむ藤子・F・不二雄〜』ですが、この度電子書籍としてpdfファイルを販売することになりました。

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合わせてお楽しみ下さい。





さて本日のブロマガですが、映画『おーい、応為』について書かせて下さい。自分はめちゃめちゃ楽しんだのですけど、なんかあんまりお客さんが入ってなさそうなので、ここでお勧めしたいんですよね。


●『おーい、応為』とは?

『おーい、応為』は浮世絵師 葛飾北斎の娘、葛飾応為の人生を描いた映画です。応為は北斎の仕事を手伝いつつ、自身も浮世絵師として活躍していたことが知られています。当時としても珍しい女性浮世絵師の一人です。

北斎と比べて応為の資料は少ないのですが、本作は飯島虚心の『葛飾北斎伝』と杉浦日向子の漫画『百日紅』を原作としています。というか、どう考えてもまず『百日紅』があり、これを映画化する過程で北斎とその家族について信憑性が高いとされている資料である『葛飾北斎伝』をあたった、ということなのでしょう。


●アニメ映画『百日紅』と『おーい、応為』との違い

自分は杉浦日向子の漫画が大好きなのですが、『百日紅』は2016年に原恵一が長編アニメ映画として映像化しています。こちらも大好きなのですが、アニメ映画版『百日紅』と比較すると、今回の大森立嗣監督による『おーい、応為』が原作漫画の何を大切にして映像化したのかが分かり易くなります。

まず応為のキャラクター、それも抱える葛藤がかなり違います。

アニメ映画版『百日紅』の応為は絵師としての才能に優れ、特に美人画は父 北斎を凌ぐと絶賛されます。一方で「女は上手に描くが、男は借り物」とも評され、自身が生娘であるが故に色気のある春画を描けないのではないかということに悩んでいます。弟弟子である善次郎(後の渓斎英泉)は、無類の女好きで、絵師としての腕前は未熟ながらも春画が上手いという対照的なキャラクターとして置かれます。

対して、『おーい、応為』は絵師に嫁入りした応為が旦那(おそらく南沢等明)に「お前の絵は下手ぎる」と三行半をつきつけ、出戻ってくるシーンから映画が始まります。映画のスタート地点から既に生娘ではないわけです。

『百日紅』はあくまで23歳時の応為を描いているのに対し、『おーい、応為』は演じる長澤まさみの年齢とキャラクターに合わせたから(生娘にはみえない)だと思うのですが、男物かと思えるほど素っ気ない着物を崩しながら着て、べらんめえ口調で喋る長澤まさみが最近の出演作では群を抜いて魅力的でした。地味な服を着ると美人が引き立つんですね。髙橋海人の年齢に合わせて善次郎がより舎弟っぽい立ち位置になっているのも面白いところです。それぞれ、演じる人間の身体性に合わせているわけですね。

また、原作やアニメ版よりも、より一層「年齢・性別・その他属性に関係なく絵が上手い奴が一番偉い」という絵描きなら誰もが持つドラゴンボール的価値観に則っているのも面白いところです。これは後述するように大森立嗣が父に大駱駝艦の創始者麿赤兒、弟も俳優の大森南朋という芸能一家に育ち、「芸能が上手い奴が一番偉い」という価値観で育ったであろうことが大きいのではないかと思います。


●タナトスと芸術

原作漫画『百日紅』は一話完結の短編が続く連作短編集です。中でも病弱な妹との一夜を描いた「野分」が短編漫画としての完成度の高さから有名なのですが、アニメ『百日紅』も『おーい、応為』も「野分」を物語の中心に置きつつ、再構成することで約90分から2時間の映画としています。ネタバレをしないように表現すれば、両作ともタナトスと芸術をテーマとしています。

ただ、その手法はかなり違います。アニメ『百日紅』はあくまで原作のエピソードを重視し、モザイクのように再配置しているのに対し、『おーい、応為』は「野分」と「木瓜」という二つの短編(実際には違いますが)を原作としつつ、それ以外は世界観を同じくするオリジナルな物語としているのです。沢山の人が死んでいるであろう江戸の火事をエンタメとしてみたり、銭湯を利用した後ほどいた髪をそのままに帰宅するといったエピソードも共通していますが、ニュアンスはかなり違います。超自然的現象がほぼ描かれないのも特徴です。

『おーい、応為』の終盤は年代が進み、原作を越えて北斎が老いて死ぬまでを描きます。応為は北斎と暮らし、北斎の晩年まで同居していたとされており、映画でもそのように描かれます。拾った子犬「さくら」は天寿を全うし、英泉は(史実通り)師匠である北斎よりも先に死にます。北斎は不老長寿の仙人になって永遠に絵を描いていたいと望み、応為が買ってきた苦くて不味い長寿の薬(おそらく松塊)を常飲します。死がそこら中にあり、死と共に絵を描くこと――タナトスと芸術が大きなテーマとなっているのです。アニメと異なり、生身の役者が演じている分、加齢を表現し易いであろうこと、それ故に違う表現手法となっているであろうことも面白いところです。


そのような中で、応為は代表作となる「吉原格子先之図」を描きます。

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人間の魂のような火のついたロウソクに指をかざすことで光と影の陰影を確認したり、実際に吉原に赴き格子の向こう側に囚われているような花魁を確認したり……といった描写が台詞無しで描かれるのが見事です。

更に時が進み、髪に白髪が混じった応為と更に老いた北斎は富士山の麓に赴きます。「絵を描きてえ」と呻く北斎。その後カメラはふらふらと動き、何故か富士山の右上に辿り着きます。

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――これが北斎の遺作である「富士越龍図」の龍の位置に重なるのも、また見事です。北斎自身を昇天する龍に見立てているわけですね。


●応為と北斎、大森立嗣と麿赤兒

面白いのは、加齢と共に応為のみならず北斎も変化していくことです。

本作の前半では、応為が北斎の描いていた白拍子の絵の上に吸っていた煙管から煙草の火種を落としてしまい、すっかりやる気を無くした北斎が無言で家を出る――という、(描いている絵が違いますが)原作でもアニメでも描かれたエピソードが描かれます。

ところが映画の後半、江戸を何度目かの大火が襲い、二人は家を出て避難しようとするのですが、その際に書き溜めた絵を持ち出そうとする応為に対し、北斎は「燃やしちまおう」とそのまま家に置いておけと指示するのです。

絵は社会に対して発表し、他人の目に触れることで初めて「作品」足り得る――そのような考えとは全くことなる境地に北斎は達してしまった、もはや北斎は他人や社会からの評価を気にすることもない、ということを描いているわけです。

一方で、ここには大森立嗣監督が役者の一家に育ったことも関係しているのではないかといううがった見方もしてしまいます。

「演じる」というのは一回性の芸術です。いつどんな状況でも同じ芝居ができる――再現性が高いと呼ばれる役者の芝居でさえ、一度一度の芝居は厳密には異なります。芝居は演じた瞬間から、絵は描きあがった瞬間から失われてゆく、故に気にするな、そんなことを想ってしまいます。

本作のクライマックスは、もうおれの面倒をみなくても良いのだから自由に生きろと応為に言い放つ北斎に対し、好きでやってたに決まってるだろと普段は口にしない思慕と敬意を応為なりに示すシーンになります。二人とも老いたからこそ、正直になれた。この応為と北斎の関係性に、大森立嗣と麿赤兒を重ね合わせてしまうのは、そんなに不自然なことでもないと思います。




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