孫崎さんご指摘の点をひとつずつ自分なりに吟味してみよう。

経済政策。これは失敗だろう。ただし、アベノミクス失敗に対抗する案としてれいわや一部保守勢力が声高に唱えているのが大規模な財政出動だ（いわゆるMMT）が、こちらの経済政策も簡単にとれるものではない。また、社会福祉を大きく改革しようとしている（結果がどうなるかはわからないが）のは、自分の年齢層ではほぼ全員賛成なのではないか。

外交。北方領土も頓挫したのは明らかだし、（孫崎さんは指摘していないが）日米FTAの農業分野は失敗だとわたしはおもう。
ただし日韓関係は失敗とはわたしはおもっておらず、逆にかなりがんばっていると評価している。カネを落とさないことが明らかになっている韓国人なんか来てもらってもうるさいだけだとおもう（しかもわたしは観光業者でもない。観光業者でない日本人のほうが多いのだ）し、また日本が経済成長しておらず円安基調だから、つまり経済政策が失敗しているからこそ、韓国人がたくさん来るのだという点も指摘しておこう。
なおGSOMIAについては米国の圧力をいなしつつ韓国の強要に最後まで抵抗できるかどうか心配だ。いま現在この点でちょっと不穏な感じだ。

森友の「国有地がほぼ実質ゼロ円で払い下げられた」については、安倍首相の関与の証拠はなく（だからこそ「忖度」という言葉が流行った）、加計学園については国家戦略特区ワーキンググループ内での議論は公表されており不透明なところはない。むしろ文科省の岩盤規制が文科省の利権と結びついている点の指摘が孫崎さんにないのは、「ラブオンザビーチ」で貧困女性調査をしていた前川元文科次官がこの件に関与しているからか。
「下関北九州道路」に至っては、塚田一郎元国交副大臣のことばの揚げ足取りであり、地元では求められている道路だ。
「桜を見る会」については、税金の私物化である点はそのとおりであるが、この件について沈黙していた鳩山氏は11月18日にやっとツイートして「私も桜を見る会を主催したが、前年より招待客を減らしている。安倍首相は私物化し過ぎているのは明白である。」と明らかにした。つまり、孫崎さんの盟友の鳩山氏の意見は「自分も私物化したが、安倍氏ほどではない」ということだ。

こうしてみてくると、孫崎さんの指摘には言いがかり的なものもあるとおもうが、孫崎さんが書いてないことでわたしが安倍氏の最大の失政だとおもうのは、外国人労働移民受け入れにカジをきったことであり、その次の失政であるとおもうのは憲法９条改正をあきらめたことだ（ただしこの点は「まだあきらめていない説」もあって、１２月解散ができるかどうかがひとつのメルクマールになるという論者もいる）。

どうであれ、安倍首相がやめても、もちろん次に首相になる人はいるだろう。