p_fさん のコメント
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作家が戦争をどの様に描いているかを見るのは興味がある。戦争で多くの場合、社会現象が一変する。当然作家が取り組んでいいテーマである。
ほとんどの人は読んだことがないと思うが、夏目漱石は日露戦争について、短編『趣味の遺伝』の中で、「 陽気のせいで神も気違いになる。「人を屠りて餓えたる犬を救え」と雲の裡より叫ぶ声が、逆しまに日本海を撼かして満洲の果まで響き渡った時、日人と露人ははっと応えて百里に余る一大屠場を朔北の野やに開いた』と書いた。
トルストイは大作『戦争と平和』を書いたのだから、当然、戦争に対する自分の見解を持っている。 1904 年 2 月 8 日日露戦争が開始された後、同年6月27日、英国ロンドンタイムス紙に「日露戦争論」を発表した。
・ 戦争(日露戦争)はまたも起こってしまった。誰にも無用で無益な困難が再来し、偽り、欺きが横行し、そして人類の愚かさ、残忍さを露呈した。東西を隔てた人々を見るといい。
青空文庫で さわりだけ のつもりが、止まらず終わりまで読んでしまった次第。
漱石の評価には“夏目漱石と帝国大学━「漱石神話」の生成と発展のメカニズム”等もあるようだが、それはさて置き、読みながら頷くことしきり。例えば-
「予期出来ん咄嗟の働きに分別が出るものなら人間の歴史は無事なものである。」
「人間もその日その日で色々になる。悪人になった翌日は善男に変じ、小人の昼の後に君子の夜がくる。」
「あの男の性格は などと手にとったように吹聴する先生があるが あれは利口の馬鹿と云うもので その日その日の自己を研究する能力さえないから、こんな傍若無人の囈語を吐いて独りで恐悦がるのである。」
また、アポロ11号の月面着陸は全く信じないが、表題の「趣味の遺伝」は信じていい気がする。
> 今、世界中で戦争をする馬鹿を、馬鹿と言えない知識層
伊勢崎賢治氏が かつてTV番組「Qなぜ戦争はなくならないのか」(NHK)で語っていた-
「やはり、我々の仕事って、過去の経験から英知というものを引き出して、それを未来に繋げること、それが我々の使命。そして、紛争予防、戦争予防に その英知が使われなかったら、学問の意味が無いですよね」
伊勢崎氏は「もうかる人がいるから戦争はなくならない」、「無理な民主化も戦争の原因となりうる」とも指摘する一方、
「(戦争へ どんどん向かっていくのは、人の心にある)善とか悪とかよりも、熱狂でしょうね...敵がいると熱狂する。多分、熱狂というのは...本質的なものかな、それを追い求めてしまう...」
これに符合すると思ったのが「アメリカとの つきあい方のイロハ」(「カナダの教訓」)にある一節だ-
「いったん、感情面に火がついたら、もう手のほどこしようもない。知的グループも、危なくて近づけない。こんなときに下手にアメリカの知的グループをプッシュすると、彼らからも思いもかけない感情的反応が返ってくる」
要は、力を持つ驕った者の くだらない感情に煽られた大衆が結局 高い代償を払わされる━それが未来永劫繰返される。
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