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中庸左派さん のコメント

 いかにも日本的又はB層らしい、薄っぺらい発想だな、と散見した見解に関して、二点指摘する。

 まず、一点目、ハマスの支持率が38%云々。これは極めて、事態の上っ面しか見ていない、或いはズレた見解である。

 何故なら、今回のハマスの軍事力行使は「宗教戦争」の側面があることを忘れてはならない。即ち、イスラム圏対シオニズムの戦いである。

 というのは、ハマスは今回の軍事力行使に関する声明において、「ハマスの司令官は声明で、エルサレムのイスラム教聖地にある「アルアクサ・モスク」をイスラエルの入植者が「冒瀆(ぼうとく)した」と非難した。」とあるからだ。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR071QM0X01C23A0000000/

 2年前にも同様の紛争があった。

https://www.afpbb.com/articles/-/3346036

「パレスチナ人は、聖なるモスクを守ろうという呼びかけに結集した。ハマスだけでなく、西岸のパレスチナ人、そして(イスラエルのパスポートを持つ1948年のパレスチナ人も初めて)アル・アクサを守るために立ち上がったのだ。はっきりさせておきたいのは、この叫びはハマスのためではなく、パレスチナのナショナリズムのためでもなかったということだ。イスラム教徒(スンニ派であれシーア派であれ)であることの核心に触れる象徴であるアル・アクサのためだった。それはイスラム圏全体に共鳴する叫びだった。」

https://english.almayadeen.net/articles/analysis/al-aqsa-flood:-the-surprise-is-that-some-are-surprised

 アルアクサモスクはイスラム教の聖地であり、スンニ派、シーア派にとって同様に冒すべからざる場所である。それがイスラエル宗教右派により冒涜された。そのことに抵抗し、抗議することはアラブ全体の大義になるだろう。

 イラン最高指導者ハメネイ師氏は、「シオニスト政権の犯罪に対するイスラム世界の反応の必要性を強調し、イスラム世界全体がパレスチナ国家を支援する義務があると主張しました。」とある。

http://english.khamenei.ir/news/10160/Recent-Palestinian-operation-result-of-Zionists-ferocity

 勿論、周辺国はアラブの大義だけで、軽々しくイスラエルに対して軍事力行使に踏み切ることはないだろう。

 だが、ハマスの支持率38%などと、トンチンカンな意見を言う前に、押さえておくべき前提である。

 ハマスは、イスラム圏全体への支持やアピールを意図して、「金曜礼拝が行われる13日に東エルサレムにあるイスラム教礼拝所「アルアクサ・モスク」にデモ行進し、敷地内で終日、抗議を行うよう求めた。」のだろう。

https://jp.reuters.com/article/israel-palestinians-hamas-protest-idJPKBN31C27S

 以下はIndian PunchlineのMK バドラクマール氏の見解である。

「その上、ヨルダン川西岸の他のパレスチナ人グループや組織が、ハマスの戦略的目標を促進するような決定を下せば、イスラエル軍は二正面作戦に直面することになり、万事休すだ。実際、ヨルダン川西岸には第3次インティファーダの条件が揃っている。

そして、そのようなシナリオでは、ハマスが有利になる。ハマスこそが、現在87歳のパレスチナ自治政府のアッバス議長に次ぐ、適切な、そしておそらく唯一の代替案となりうる存在なのだ。」

https://www.indianpunchline.com/us-in-a-quandary-over-israels-war-on-gaza/

 「第3次インティファーダ」という表現に注目したい。第1次インティファーダこそ、非暴力の真のインティファーダだ、みたいなこれまた薄っぺらいハナシをつい最近目の当たりにした。

 だが、ガザ地区の絶望がより深化した今日、残念ながら人道的非暴力抵抗を求めることは空論に終わるだろう。ハマスの軍事力行使をテロ呼ばわりして、パレスチナ人に非暴力抵抗でなきゃ、駄目じゃないか!みたいな説教を垂れている日本人には分からない現実を、我々は想像しながら、言説を紡ぐ必要がある。

 勿論、我々は当事者ではないから、何も出来ない。個人的には、即時停戦を祈るばかりだ。

 二点め。日本の薄っぺらいジャーナリストやB層が好んで使う論法。国際人道法違反云々、国際法違反だー!論。

 これは、論法として間違いとは言わないが、実質的に無意味なハナシだから、空論であることは間違いない。

 現に戦闘状態にある両陣営にそれぞれ、国際法違反だー、と指摘しても、何も解決しないことは小学生でも分かりそうなものだが、分からない輩がいるからフシギだ。

 例えば、小学生どうしのケンカを、「ケンカだ、ケンカだ」とか、眺めながら「ケンカはダメよー」(=国際法違反)などと言っても無意味であることを想像したら良い。この場合、大事なことは、教員や他の児童が止めに入ることである。

 しかも、安保理常任理事国アメリカ帝国は明らかにイスラエルに肩入れしている。国際法は機能不全だ。こんなことは言わずもがな。常識的前提である。

 しかし、またぞろ「国際法違反だー」の無意味なハナシを繰り返している連中を見ると呆れ果てる。日本人B層らしいな、と。

 私は上記のように、海外ブログや報道から情報や論評を得て、参考にして、自分なりの考えをまとめているが、私がよく見る海外論者は、国際法違反どーの、こーのと書き綴っている人を見たことがない。元外交官、元軍人、ジャーナリスト等、その道の識見を備えた専門家達だ。

 私は、彼らが国際法を無視しているとは考えていないが、重要な論点とは見なしていない、ということはないかな、と見ている。

 国際情勢を考える上では、国際法より、もっと大事な論点、ポイントがある、ということだろう。

 その意味では、海外の論者は「大人」で、日本人の多くは、上っ面だけしか見えない小学生並みの幼稚なB層ばかりなのだろうな、と見ている。
No.23
14ヶ月前
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孫崎享のつぶやき
元外務省情報局長で、駐イラン大使などを務めた孫崎享氏。7月に発行された『戦後史の正体』は20万部を超えるベストセラー、ツイッターのフォロワーも13万人を突破。テレビや新聞が報じない問題を、日々つぶやいている孫崎氏。本ブロマガでは、日々発信。週1回別途生放送を発信。月額100円+税。【発行周期】日々。高い頻度で発行します。