• このエントリーをはてなブックマークに追加

KUBOTAさん のコメント

 昨年末に,ある薬科大学の公開講座に参加した.その講義の中で,世界と日本の製薬会社の売り上げ高ランキングの比較があり,日本の製薬会社の売上げ高は,アメリカを含む世界のトップグループに較べると1/3程度でしか無く,とても少ないとのグラフがため息混じりで示された.売上げ高の大小は薬価も大き関係するのでアメリカ薬価の決め方についての質問をした.

 堤未果さんの書籍「沈みゆく大国アメリカ<逃げ切れ!日本の医療>」(集英社新書:p112ほか)によれば,アメリカの薬の値段は,日本と違って政府が薬価交渉権を持っていないので,製薬会社が自社の薬に好きな値段をつけ放題で,世界一高いアメリカの医療費はその薬代が最大の原因であり,日本の医療と国民皆保険が,TPPでその切り崩し崩壊が狙われていることを同書では指摘・告発をしている.

 講師は大手製薬会社の研究所に在籍をしていた教授で,アメリカの薬価が製薬会社の一存で決められることを認めた上で,日本では政府が薬価決定に関与しているので,現在は製薬会社自らで薬価が決められない事を残念そうに話していた.今回のTPP成立で,日本の製薬会社が薬価を高い価格に自由に決めることが出来るようになって,大きな利益を上げたい期待が透けて見えた.

 年配の参加者の中で,TPPの成立で日本の製薬会社の競争力が強くなって,世界のトップ企業と肩を並べることを期待する要旨の発言があったが,自分達が今,安心して治療が出来ている国民皆保険の医療制度の足元切り崩しが,TPPで狙われていることに気がついていないノンキさ・お人好しさには呆れた.

 経済産業省の定義によれば,持ち株比率が基本的に「1/3超」になると「外資系企業」に該当する.ちなみに,日本の製薬会社の外国人持ち株比率(2016年1月29日)は,売上げ高トップの武田薬品が「33.2%」,第2位のアステラス製薬が「51.3%」なので,日本名は残ってはいるがすでに日本の企業では無くなっているのが実態だ.TPPの大きな狙いのひとつは,安心・安全の現在の日本の医療制度,国民皆保険制度の切り崩しで,その先には多くの人々・日本国民の,医療難民の発生と悲惨な未来だ.多くの人々・国民を不幸に導くTPPの締結署名は中止せよ!.(2016年2月1日)
No.8
106ヶ月前
このコメントは以下の記事についています
TPPで日本が得るものはほとんどありません。アジアの市場でいえば中国、韓国、台湾は入っていません。ASEANの主力インドネシア、タイは入っていません。インド、ロシア、欧米は入っていません。実質的に日本の輸出先で重要なのは米国位です。しかし、ここの関税は今や2%程度です。それもTPPで一気になくなるわけではなく、為替の変動を考えれば、そちらの方がはるかに大きいものです。自動車産業も米国国内で生産し、部品も北米自由貿易圏の米国、カナダ、メキシコで生産し、ほとんどTPPは影響がありません。 日本国内で考えれば、一番被害を受けるのは医療分野です。ここでは、高額の医療、薬価を国民健康保険の対象にして、国民健康保険の実質的崩壊が起こります。こんなことをして誰が利益を得るでしょう。米国の保険業界です。国民健康保険が実質崩壊すれば、国民は私的保険に入らざるを得ません。入れない人は医療を受けられない。
孫崎享のつぶやき
元外務省情報局長で、駐イラン大使などを務めた孫崎享氏。7月に発行された『戦後史の正体』は20万部を超えるベストセラー、ツイッターのフォロワーも13万人を突破。テレビや新聞が報じない問題を、日々つぶやいている孫崎氏。本ブロマガでは、日々発信。週1回別途生放送を発信。月額100円+税。【発行周期】日々。高い頻度で発行します。