モンパルナスの怪人さん のコメント
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私が外務省で課長になる直前時代、局の審議官に呼ばれた。
「君は外務省を誤解している。外務省は理学部でない。理詰めで正しいことを主張すればいいと言うものではない。どう動かすかの工学部だ」
外務省の先輩に加瀬俊一がいる。日米開戦当時のアメリカ担当課長、兼外務次官の要職にあった。語学の才能が高く、松岡洋右外相や吉田茂首相が米国の雑誌『フォーリン・アフェアーズ』誌に寄稿した際のゴーストライターが加瀬俊一と言われている。大変な才子である。彼の著作を読んでいた時、次の記述に出くわした。
「初めて外務省に行くことが決まった際、母は“これから毎日外務省の門をくぐる時、今日一日、貴方のあった全ての人が会ってよかったと思えるように努めなさい。そして一日が終わって門を出る時、貴方にあった全ての人が貴方にあってよかったと思えるように努めたか省りみなさい”と自分に言った」 この文章私が外務省を終えた後読んで
父には人に見られない一種剽軽(ひょうきん)な所があった。或者は直(ちょく)な方だとも云い、或者は気の置けない男だとも評した。
「親爺は全くあれで自分の地位を拵えあげんたんだね。実際の所それが世の中なんだろう。本式に学問をしたり真面目に考えを纏めたりしたって、社会ではちっとも重宝がらない。唯軽蔑されるだけだ」
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