放銃上等、殴り合いのA卓
豊後の役満、石井の復活優勝で幕を閉じた女流プロ代表決定戦・桜の陣からはや3月。再びオンナの戦いが始まった。
A卓は攻撃型雀士が揃った。相手に攻め込まれても退かない展開をみたニコニコ生放送の視聴者からは「ヤンキー卓」を名付けられたほどである。
愛内「昨年は地蔵のまま負けたので、今年は全てのアガリに絡んでやろうと思いました」
その宣言どおり、愛内はドラ表示牌のカン待ちで果敢にリーチ。
だが、強者同士の戦いは相手3人のうち誰かが必ず待ちをすり抜けてやってくるもの。今回は清水がやってきた。
待ちのピンフで追っかけリーチ。これを一発で愛内から討ち取って元祖・イケイケ雀士の面目を見せつけた。
逆に普段よりおとなしい印象を浮けたのが和泉である。
役なしドラ1のペン待ちテンパイを入れたがリーチはかけない。
すぐにを引いて500・1000のアガリとなった。後で和泉に理由を聞いたところ、
和泉「あ、ツモっちゃったかーって感じ(笑) リーチも考えましたが、リーチドラ1のペン3とか美しくないなと。マンズ伸びないかなーと思ってました。」
美しくない、というコメントが和泉らしい。ただ、リアルタイムでみているときは弱気なのかな、と気になった。頭取りと二着勝ちあがりのトーナメントでは戦い方が違って当然とはいえ、慎重すぎても勝ちきれないからだ。愛内の冒頭のコメントがまさにそれである。
東3局では愛内がドラのを2枚持つチャンス手。だが、重たい形なので食いタンでのアガリを目指して動いていった。そこへ渡辺から待ちのリーチがかかる。
直後、愛内が選択に迫られる。
ツモ ドラ
その直後、清水にもテンパイが入る。
トップめだけにオリでも不思議でないだが、清水は強気に勝負。ただしリーチはかけなかった。が、このを押したぶん、次に引いたにはブレーキがかからなかった。一度はアガリを逃した愛内がこのを捉え、東パツの借りを半分返す格好となった。
だが、次局は清水が愛内から取り返す。
もう完全に清水・愛内のバトルモード。攻撃型のはずである和泉・愛内が割って入れないほどやりあっている。だが、南1局で親を迎えた和泉がようやく先手を取れた。
テンパイの渡辺から出る。裏ドラが2枚乗って12000。和泉が清水をかわしてトップめにたった。
渡辺はこの形でから先に処理したことでが余り牌として残り、それが放銃に繋がった。
対局後、渡辺はこの切り順の是非について解説の片山さんに聞いていたが、これは運が悪かったとしか言いようがない。その渡辺は次局1300・2600をツモり何とか戦線へ踏みとどまっていた。
だが、次局の親で渡辺に逸機があった。
南2局。親でタンヤオのテンパイを入れた渡辺。だが、ここでリーチをかけなかった。当然、狙いは345の三色である。だが、皮肉にも次巡、をツモってしまったのである。即リーチなら4000オールだったのだ。
だが、ここで渡辺はツモアガリを宣言せず、を捨ててフリテンリーチをかけた。ツモでの大物手を狙いにいったのだ。だが、結果はふたたび宣言牌のをツモ。2000オールどまりだった。
渡辺「私の雀風だとあの手は三色を待ちたいのででの一発ツモ逃しは仕方ないと思いました。ツモならフリテンリーチをかけることも当然考えていましたし。を先に引けなかったのが敗因ですね。悔いはないです」
甘いと言われるかもしれないが、私はこういう打ち方が非常に好きである。牌が1つ変わっていれば渡辺が圧勝していたかもしれない。本当に麻雀は怖いゲームである。
その次局から愛内が立て続けに満貫をツモ。ただ、二発めのアガリには微妙なアヤがあった。南3局、愛内は123の三色カン待ちでリーチ。それを受けた清水の手が止まる。
オーラス。トップめ愛内から3着め清水の点差が4200点。愛内は親なのでツモられたら3着落ちがある。ただ、和泉もノーテン罰符で着順が落ちる可能性があるため、安穏としてもいられない。
そんななか、清水にテンパイが入る。
ドラはない。リーチをかけても一発ツモなら問題ないが、それ以外は裏ドラ頼りになる。
長考した清水は打でテンパイを崩す。そして6巡目にをくっつけて高めドラ待ちのリーチをかけた。
ドラ
途中、ハネツモ条件の渡辺の手にが暗刻となる。字牌がすでに枯れていてメンホンチートイツにしかなりそうにない渡辺はをツモ切り。だが、そのを捨てた渡辺の手が手元に戻るやいなや清水は光速でツモ山に手を伸ばしていた。
最初からロンをかけるつもりは全くなかったようだ。清水のリーチは流れ、これで愛内と和泉の勝ち上がりが決定した。流局後、なぜか裏ドラが開けられていた。渡辺のでアガっていれば清水は勝ち上がりだったようだ。それでも清水は自らの決断を悔いることなく、いつの間にか会場から姿を消していた。