C卓を勝ち上がった近藤誠一は、鳳凰位・前田直哉、十段位・柴田吉和、そして元最強位(他多数)・鈴木たろうを相手に決勝卓を戦うことになった。
「各団体のタイトルホルダーが集結した決勝卓になりましたが、それに対して何か思うことはありましたか? たとえば『団体の威信を賭けた一戦』みたいな」
近藤「団体というよりは、最高位としても自分自身としても勝つこと以外、考えられませんでした。また、より一層濃い内容への期待感が高まり、楽しみになりました」
「ラス親に決まった瞬間、どう思いましたか?」
近藤「結果的には、実質一騎打ちでオーラスを迎えたので、ラス親でよかったと思いましたが、決まった瞬間は皆が思うほどの嬉しさは特にありませんでした」
東1局は前田が234の三色のフリテンリーチをかけるも1人テンパイで流局。たろうの親が流れた東2局1本場。先手を取った近藤がリーチをかける。
「下家のたろうプロがピンズに走り、が余っているという状況。近藤さんもテンパイを入れてション牌の単騎のリーチをかけました。ピンフや345の三色の手変わりもありますが、ここで即リーチに踏み切った理由を教えてください」
近藤「半荘勝負では、こういうたいしたことのない手が決まり手になることもままあります。状況的にピンフや三色を待つより、少々分が悪くても、このままぶつけようと。たろうプロの手も、その信憑性がなんとも言えず、を切るリスクも考慮して、リーチをかけました。」
だが、この局は親の前田が234の三色で追いついてヤミテン。3者に囲まれて手詰まりになった柴田が近藤の現物のを抜いて親満の放銃となる。
対局は前田がリードを保ったまま南場へ突入。南1局では親のたろうが先行リーチ。これに近藤も絶好のを引き入れて追いついた。
「このとき解説では『近藤はカン待ちになっても追っかけるでしょうね。ドラは全部見えてますし』と言っていましたが、実際そうなったらどうしてましたか?」
近藤「カン待ちになっていても、もちろん追っかけリーチです」
この局は柴田も追いついて3人リーチとなる。そして近藤はこのめくり合いを制し、たろうからで満貫のアガリをものにした。
近藤「めくり合いに勝って、やっぱり最強位になるんだなと思いました(笑)」
だが、今度は追いつかれた前田の一撃が飛び出した。南2局1本場で6000オールを決める。
「ほぼ並びの状況からこの親っパネツモで、再び点差が25900差に広がりました。このアガリを決められたときはどう思いましたか?」
近藤「めんどくさい人だなぁと思いました。まあ、心中穏やかではありませんでしたが、逆転を信じてここからが本当の見せ場だと思っていました」
そして迎えたオーラス。状況はラス親の近藤とトップめ・前田のほぼ一騎打ちだ。近藤は6000オールか前田から親マン直撃で逆転できる。
10巡目、ここで近藤の手が止まった。形だけならかのトイツ落としだろう。ただ、たろうと柴田は役満狙いなので捨て牌はかなり変則的である。近藤はここで間を取った。
「かのトイツ落としの選択だと思うのですが、他に何か打牌候補はありましたか? たろうプロがを1枚、柴田プロがを2枚捨てていたので、・のシャンポン受けが良さそうと判断してピンズを払う、とかも視野にあったのでしょうか」
近藤「中盤にさしかかり、このままテンパイせずに終盤を迎える可能性を考慮し、チーテン期待が薄いので、かのポンテンを視野に入れるべきかを考えました」
ここで近藤は打を選択。は場に1枚とび、は場にション牌だ。ただ、前田の捨て牌を見ると、第2打がでのほうが怖いようにもみえる。
「前田プロの捨て牌からすると受けが残っている可能性もあり、のほうが危なそうに見えます。なぜから捨てたのでしょう?」
近藤「前田プロはノーテンだと信じて、暗刻期待が少しでも高いを残しました」
だが、先にテンパイを入れたのは前田だった。上の手牌にを引いてペン待ち。役なしなので前田はリーチに踏み切った。
そして、近藤は前田の危険スジを引いて長考に入る。
「状況的にはを切るしかない手牌。ただ、捨て牌全体をみるとマンズでメンツが完成する可能性も結構ありそうにも見えます、この時はどんなことを考えていましたか?」
近藤「アガリを見据えれば、切りですが、テンパイだけなら他の道もあるかと精査する時間をもらいました。また、自分が苦しむ姿を見せることで、視聴者の方々にその状況をより強く伝えられればとも思っていました」
だが、近藤のテンパイが入る前に前田がを引き寄せ決着がついた。
近藤イヤーとまで言われるほど今年の近藤の充実ぶりは目を見張るものがあったが、ついに最強位にはあと一歩届かなかった。
「最後に、決勝卓を戦い終えての感想を聞かせてください」
近藤「結果として負けたので、悔しい限りですが、とても充実した時間になり、皆さんに感謝しています。前田プロは初戦から圧勝で、その充実ぶりに完敗でした。やれることは十分やった、自分はまた少し経験値を高めることができたと思っています。ありがとうございました」