あなたは、忘れたくても忘れられないことはありますか?
今回は、PTSD を乗り越える方法についての相談をもとに、ネガティブな経験を力に変えて結果的に人生を大きく変える方法について解説させてもらいます。
Q. PTSDを乗り越える方法はありますか?
治療法についてはアドバイスできませんが、PTSG(Post Traumatic Stress Growth):心的外傷後ストレス成長というトラウマによりメンタルが強くなる現象があります。
乗り越えた後に、今までよりも人生の意味を感じるようになったり、自分の人生に深みを感じるようになったという研究もあります。
これについては『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』で詳しく解説してくれていますので、こちらをぜひ読んでみてください。
前回の一問一答で、後悔しない人生を歩むための5つのポイントについて解説させてもらいました。
人が人生の最後にどんな事に後悔していくのかということをもとに、それが分かっているのであれば、それを少しでも早い段階で対処するための知識についてまとめました。
人間の最も大きい5つの後悔
1. 他人の期待に従って生きたこと → 自分の夢を追う強さ
2. 働きすぎたこと → 優先順位をつけて働く
3. 素直な感情を表現しなかったこと → 本当の自分を表現する強さ
4. 友人に連絡をあまりとらなかったこと → 人間関係の充実
5. 自分をもっと幸せにすればよかった → 幸せを求める勇気
▼詳しくはこちら
科学的根拠に基づいた知識の実験、実践コミュニティ!〜メントレラボ〜
実は、世の中にはこれらの力をいつのまにか身につけてしまう人たちがいます。
それは、あまりにも悲劇的逆境を乗り越えたことによる圧倒的な成長を手にした人で、PTSG:心的外傷後ストレス成長と言われるものです。
PTSG:心的外傷後ストレス成長
大事な人を失ってしまったとか、トラウマレベルの逆境から未だに抜け出すことができていないという人もいると思います。
このようなトラウマというものは PTSD:心的外傷後障害で心に大きな傷を残してしまう場合もありますが、そのトラウマを乗り越えた後に、人間は心理的にも大きな成長をすることができるということも分かっています。
トラウマを乗り越えたことによって人生観が変わったり、自分の考え方が大きく変わったことで、より強いメンタルと人生に対する考え方を身につける人たちです。
ちなみに、このPTSGの研究によると、トラウマレベルの逆境から立ち直るには運動やヨガが最も手軽にできる効果的な方法だとされています。
筋トレやスポーツというものは、徐々にでも続けていれば確実に上達するものですから、それを通じて自分が変われるということを信じて自己効力感が高まるからです。
そのため、まず一番最初に取り組むべき行動としては運動が推奨されています。
運動で手に入れた自己効力感は、効力感の転移というものが起きて、そこから仕事や人間関係に対しても自分は変われるという感覚を持つことができるようになります。
トラウマやストレスに対してヨガが効果的だという研究も沢山あり、いわゆる認知行動療法に取り組むとなるとなかなか難しいですが、ヨガであれば結構簡単にできるので日常のストレス対策としても結構便利です。
ヨガには鬱を和らげる効果もあるということが示されているメタ分析もありますので、手軽なストレス解消法として実践してみるのはいいと思います。
逆境を乗り越え成功するためのおすすめ本
トラウマを抱えていたり家庭環境に問題があったけれど、大きな成功を成し遂げている人もいて、スーパーノーマルと呼ばれています。
これはそんなスーパーノーマルの人たちについて調べてくれている本です。
この人たちが、どのようにして過去のトラウマを乗り越えて成功したのかということについてわかりやすく解説してくれています。
不遇な子供時代を送ったとかトラウマを抱えているという人は読んで頂ければ、これは力になる本だと思います。
つらい体験が脳を鍛える
トラウマや嫌な体験が脳を鍛えてメンタルを強くしてくれて、判断能力を高めているということが示されている研究があります。
トラウマレベルまではいかなくても、嫌な体験をしたり思い出すことがある人も多いと思います。
それもその体験のおかげで自分の判断能力が高まったかもしれないと考えると、その体験に意味を見出すことができて、それを乗り越えていくこともできるようになります。
PTSG:心的外傷後ストレス成長の研究によると、命の危険にさらされ生還した人、事故や災害を経験した人の方がメンタルが強くなったり、クリエイティビティが上がり創造性が高くなるということが分かっています。
きつい体験や苦しい体験をすると物事をそれまでとは違う面から見ることができるようになります。
DaiGo師匠は、挫折だけが人生を変えてくれると考えています。
挫折やつらい体験をすると僕たちは人生に新しい視点を見出そうとします。これによって多角的に様々なものを見ることができるようになるので、新しいことも思いつきやすくなります。
新しいことを思いつきやすくなるから問題も解決することができて、乗り越えていくことができるようになります。
ケンブリッジ大学が行っているトラウマにまつわる研究を見てみると、過去にトラウマやつらい体験をしている人は、そうでない人に比べて自分の思考を瞬時に止めるのが上手だということが分かっています。
自分の思考を瞬時に止めることが上手だというのは、余計な感情や必要のない不安をコントロールすることが上手だということです。
これは人間にとってとても重要な能力で、この能力によって余計な感情に振り回されて間違った判断をしてしまったり、感じる必要のない不安に苛まれるような事も少なくなります。
集中するべき時に、このような余計なことばかり考えてしまい本来やるべき事に集中できないということが少なくなるわけです。
トラウマを経験した人の方が、余計な思考や感情をコントロールして本来の自分に引き戻すことが上手だということです。
このような影響が出ることについては、トラウマを味わったりつらい体験をしたことで、人間の脳の特定の部位が鍛えられて自分をコントロールするセルフコントロール能力が鍛えられているからだということが分かっています。
ちなみに、年齢を重ねても脳が衰えることなく新しいことにも次々と挑戦できる人たちがいます。
これはスーパーエイジャーと呼ばれる人たちで、このような脳が衰えない人たちは常に何かしらの不快感を味わっているそうです。
新しいことに挑戦すれば、どうしても嫌なことや面倒なことなど不快感を少なからず味わうようになります。
これを続けている人の方が脳が衰えないという研究もあるぐらいです。
トラウマを経験した人の脳が鍛えられているからといって、わざわざ自らしんどい体験をするのは現実的ではないですが、新しい挑戦を続けることでそれに近い効果を得られるのであれば、ぜひ意識して取り組んでもらいたいですし、忘れたいひどい体験があるという人であれば、そこに意味を見出して前に進んで頂けたらと思います。
子供時代のトラウマは脳機能すら変えてしまう
ウィスコンシン大学の研究で、子供時代のストレスというものは脳機能さえも変えてしまうということが分かっています。
この研究では、例えば、目の前で両親が強盗に殺された、両親がアルコール中毒で虐待を受けていた、虐待されて保護されて別の家庭で育った、食べ物をまともに与えてもらえず栄養失調だった・・・といったかなり強烈なまさにトラウマと言えるようなかなりひどい体験をした子供たちの脳をスキャンして、それぞれのリスクに対する反応が変わるのかということをチェックしています。
その結果、子供時代に重いトラウマを抱えてしまった人は、そのトラウマの重度が高ければ高いほど、リスクに対して鈍感になってしまうということが分かっています。
つまり、ギャンブルにお金を突っ込んでしまったり、あまりよく考えず過度なリスクを取ってしまいやすくなるということです。
良い意味ではリスクをとって挑戦できるともいえますが、悪い意味では無駄なリスクまで取る可能性もあり、一旦危険にさらされたりリスクが現実化されると、他の人よりもリスクを恐れて敏感になるという問題もあります。
子供時代のトラウマが人間の脳をリスクに対して鈍感にしてしまい、さらにはリスクが現実化した時には恐怖を感じて敏感になってしまうということです。
それほどまでにトラウマは脳機能に大きな影響を与えるものです。
できる対策としては
このような場合、選ぶ手段は2通りです。
ひとつは、PTSGを目指して、トラウマに意味を見出すことによって自分の中にそのトラウマを吸収し成長を目指すことです。
そこに、何か大きな意味があったのではないかと考えることで自分の力にしていく方法です。
もしくは、自分はリスクに気づきにくいということを理解した上で、悲観的な人や内向的な人はリスクに気づきやすいので、そんな人と組みリスクに気づいてくれて信頼できる仲間と一緒にフェアな関係で挑戦していくのも方法です。
そして、トラブルが起きた時には自分はパニックになりやすいということを踏まえて、リスク思考ではない人で相談できて頼りがいのある人を探しておくことです。信頼できて相談できる友達が大事です。
子供時代にトラウマがあっても、その陥りやすい罠を知って気をつけることで進んでいってほしいです。
7割もの人が成長につなげている!
世の中には、自分の悲劇的な生い立ちや逆境さえも力に変えて実際に成功した人たちがたくさんいます。
トラウマのせいで人を信じることが出来なくなったという人がいますが逆です。
自分が傷ついているから他人の痛みを理解できます。トラウマを持っている人は他人の痛みも理解できるから、人間関係としてはトラウマを持っていない人よりも相手を理解できるようになります。
人間関係の失敗を恐れて言い訳にしてはもったいないです。
2004年のレビュー論文でも、鬱・不安障害・ストレス障害を乗り越えて回復した人たちの70%がPTSG(心的外傷後ストレス成長)を経験されているということがわかっています。7割もの確率で傷ついた人たちはそこから成長につなげているということです。そこを考えて前に進むことが大事です。
ここから先は、トラウマや嫌な経験があるからこそ成功できる方法、そして、逆境に強くなる方法について解説させてもらいます。
トラウマまででなくても忘れたい思い出や嫌な経験は誰にでもあると思います。それを力に変えて人生を変える方法について知りたい方は、ぜひ続きをチェックしてみてください。