あなたはこれからどんな業界が成長すると思いますか?
今回は、日本の企業についての相談をもとに、デジタルマネーで激変するであろう世の中の情勢と成長が期待できる業界について、房総理のお金の授業から解説させてもらいます。
Q. 強いサイバーセキュリティサービスを提供する日本の企業がない気がします。日本は大丈夫でしょうか?
ダメだと思います。
日本はセキュリティに関して極めて弱いです。
みずほ銀行などもサーバートラブルばかり続いています。
このセキュリティレベルに関しては、ざっくり言うとレベル1からレベル9ぐらいまであります。
レベル8からレベル9はもはや軍事レベルの技術で守られています。
では、僕たちが使っている銀行はどれくらいのレベルで守られていると思いますか?
大体レベル4からレベル5です。
ちなみに、日本が作ったセキュリティの中で一番強いものはレベル7でこれは皆さんの身の回りにあります。
皆さんが毎日駅で使っているNFC:Near Field Communicationです。
日常のお金を管理するセキュリティの中で一番安全なセキュリティを保ってくれているのはSuicaです。
日下部さんという素晴らしい技術者が開発したわけですが、そんなレベルの技術を日本は活かすこともできていないわけです。
フェリカの真実:ソニーが技術開発に成功し、ビジネスで失敗した理由
房 広治さん(GVE CEO)に学ぶデジタルマネーの未来
房さんは、ニコニコやDラボを見られている方はご存知の方も多いと思いますが、DaiGo師匠がアナザースカイという番組でオックスフォードに行かせてもらった時に、通常では入れないところに入れるようにしてくれてお世話になった方です。
その頃からのお付き合いの投資家の方で、今一番力を入れているのはGVEという会社で、そこで CEO を務められています。
そんな房さんとの対談から今後のデジタルマネーの未来と世界の動きについて解説させてもらいます。
房さんは、デジタルマネーについての本も出されていて、とても勉強になるのでおすすめです。
特に、ロシア情勢で世界が大変なことになっていて、今後デジタルマネーがどのような動きをするのか気になる方も多いと思います。
日本にはとても価値があるものがたくさんあるのに、それがどれだけ一般の人に理解されていないかということもわかる本です。
房 広治(GVE CEO)
1982年に早稲田大学理工学部卒業を機にイギリス留学。1987年に英国系のインベストメントバンクに就職し、M&Aを手がける。1998年にはUBS信託銀行の社長に就任。2000年にクレディ・スイス証券にて、同社が買収したDLJディレクトSFG証券(現:楽天証券)の社外役員を務めた。
2004年に独立し、2005年2月からサンドリンガムファンドを始めた。2006年にはEMCOM傘下の上場会社を買収し、EMCOMの取締役に就任。EMCOMで高速FXシステムの開発をし、日本のFX市場の過半数のマーケットシェアを獲得。
2017年にGVE株式会社を創業する。
デジタル通貨の5つのポイント
房さんは通貨のデジタル化を考えた時に5つのポイントがあると言われています。
ポイント1 :スピード
ポイント2 :利便性
ポイント3 :セキュリティ
ポイント4 :ローコスト・オペレーション
ポイント5 :インターオペラビリティ(相互運用性)
この5つすべてを抑えるプラットホームができればという発想から房さんの挑戦は始まっています。
先日、ロシアでトヨタの関連会社がサイバー攻撃を受けたという話がありました。
セキュリティに関しては、日本はかなり平和ボケになっていて専門家たちの中でも世界的に見るとズレた話をしています。
例えば、エストニアはロシアに3回もハッキングされています。
専門家たちはそれを知らずにエストニアに視察に行っていて、当然ですがエストニア側はそれを自ら言ったりはしません。
そんなことも知らずにエストニアのデジタル化政策を真似しようとしている人もいるぐらいです。
「セキュリティ」の重要性が高まる!
セキュリティは5つのポイントの中でも最も重要です。
銀行口座にお金を入れていれば安心と思っている人も多いでしょうが、日本の銀行のセキュリティレベルははっきりいってかなり低いです。
フィッシング詐欺のメールも未だにたくさん届くと思いますが、これも個人情報の管理のレベルが低いということを表しています。
日下部さんが作ったFeliCaはそのような問題がありません。
これを使ったSuicaは今まで一度もハッキングされたことがないシステムです。
これに関しては詳しくはこちらの本が参考になると思います。
房さんは日下部さんの技術を使って、セキュリティ的には量子コンピューターが出てきたとしても万全なレベルを考えられています。
これによってハッキングされることがないデジタルマネーを作ろうとしているのがGVEという会社です。
これまでセキュリティの重要性について房さんがいくら言っても、理解はしても興味を示さない国が多かったそうですが、これがロシア情勢によってかなり変わってきているそうです。
旧ソ連の時代には地域ごとにそれぞれ重点産業を作っていて、IT産業を育てようとしたのがウクライナでした。
それによって現代でもウクライナはIT産業が発達していて、 ロシアのサイバー攻撃に対処することもできているのではないかと考えられます。
世界のデジタル通貨事情とセキュリティ
電子通貨については、逆に先進国よりも後進国の方が、余計なコストがかからないために普及している傾向があります。
僕も地方に行った時ぐらいにしか現金を使うことはありませんが、海外だと逆に地方だと現金を使えないと言われることも多いくらいです。
現金を輸送するコストだけでもGDP の1.6%ぐらいの費用がかかっています。日本の場合であればATM のシステムコストも含めると8兆円かかっています。
これが世界中で行われているわけですから、とんでもないお金が使われています。
これをスマホとクラウドだけで全て完結するようにすれば、無駄なコストを浮かせることもできますし、先ほどの5つのポイントを全て満たすことができるのではないかと房さんが進めてきたプラットホームが今年中にようやく形になる予定だそうです。
今のコンピューターであれば、そのセキュリティを正面から突破しようとすると10万年とかかかったりするので、時間的な面でハッキングが不可能だと言われているだけです。
これが量子コンピューターの時代になれば、10万年の計算も数分や数秒で出来るようになるわけですから、今あるセキュリティシステムは全て意味がなくなるのではないかと言われています。
ハッキングするような人が量子コンピューターを手に入れる時代は来ないと言われていましたが、ロシア情勢を見ていると、国レベルで考えるとその危険性も少なくないような気がしてきます。
房さんのデジタル通貨の未来予測
コロナの影響もありデジタル化は様々な分野で進んでいます。
それに加えてロシア情勢によってさらに加速すると思います。
アルメニアは300万人ほどしかいない国ですが、昨年情報の流出がありセキュリティにとてもセンシティブになっている状況です。
今回のウクライナの問題が起きて、デジタル通貨の導入に興味があると首相が言ってくれているそうです。
今後セキュリティの問題がより話題になることは間違いありません。
房さんはApple や Google の方々とも交流があるそうで、彼らが成長し続ける理由もセキュリティを重要視しているからではないかと言われています。
これからはセキュリティに対するノウハウがある企業とそうでない企業の差が開くと思います。
「コロナ予備費」12兆円の使途不明金?!
日本政府のコロナ対策の9割が使途不明金だという話がありました。
これも完全にデジタル化すればお金の流れを追うことができるので、起きるはずのない問題でもあります。
もちろん、個人情報の管理も完璧なシステムであれば誰でもわかるわけではなく、裁判所が認めれば使途不明金を追うことができます。
当然ですが、9割も使い道がわからないということは、そもそもデジタル化以前の問題ではあります。
これはコロナ以前からも当たり前のように起きていた事なのでしょうが、さすがに今回は額が大きすぎるので話題になっただけかもしれません。
個人情報やプライバシーの問題については、誤解の部分とそうでない部分があります。
例えば、ブラジルでは中央銀行が直接個人口座を開設できるようになりましたが、中央銀行は税務署に個人情報を横流ししないとは言っているものの本当にそうなのか疑問だとの声が多い状況です。
自分がKYC(Know Your Customer)を受けた銀行にしかわからないのが今の世の中ですが、それと同じような状態をシステム化するところまでしなくてはいけません。
房さんの会社では、そこまで考えてシステム化していますが、同じレベルまで考えているところは今のところないので不安に考える人が多いのも事実だと思います。
例えば、急に法律を変えて検察が裁判所の許可なく取引状況を見れてしまうのは問題があります。
弁護士が見たいと請求したら見れてしまうというのも問題があります。
やはり、そこにはある程度のハードルがあり、その上で確認できるようにする必要があります。
そこまで出来るシステムはまだあまりありません。
個人情報・プライバシーに対する意識の違い
中国やシンガポールのデジタルマネーのシステムでは、個人情報についてそこまで考えられていません。
仮に、中国のシステムを他の国が使ったら、その国の情報は全て中国に筒抜けになると思った方がいいです。
同じように、EU は GAFA に対して個人情報によって狙い撃ちをかけているという話もありましたが、これも個人情報を本人の許可なく使用できるシステムになっていることが問題なわけです。
アメリカや日本では、プライバシーの保護は法律としては扱われていても憲法には含まれていません。
ところが 、ドイツやフランスでは憲法の中で謳われています。
プライバシーに対する考えやレベルが国によってかなり違います。
これがヨーロッパと日米の違いです。
デジタルマネー加速で変わる5つの業界
これからデジタルマネーは加速していきます。
それによって大きな変化が訪れるであろう5つの業界があります。
1.ヘルスケア
スイスは財政的にはとても優秀な国でしたが、コロナ前から赤字になっています。
これは高齢化と寿命と健康寿命の差が開き始めているからです。
これが先進国の財政を苦しめていくであろうことは明らかです。
寿命と健康寿命の差が開けば開くほど医療費はかさみ国の財政も苦しくなります。
先進国では高齢者の医療費を国が負担しているので、1人1人が健康寿命を延ばすにはどうすればいいのか考えることが必要になります。
これも電子カルテの延長線上にありますが、ヘルスケアをデジタル化することでその問題を解決することができるのではないかと言われています。
2.医療・保険
ヘルスケアと医療は同じ分野と考えることもできますが、それに付随して保険業界も変化が起きると考えられています。
例えば 、ケニアではM-PESA(エムペサ)と呼ばれる送金サービスが導入されていますが、これに基本的には医療と保険がくっついてきます。
医療を受けると保険会社が自動的に医療機関に対して支払いを行ってくれます。
日本の場合は、ほとんどが保険を申請してから保険金がおりるまで90日とか180日とかかかったりします。
この支払いサイトが長いためにたくさんの医療機関が困っているという話もあります。
それをケニアの場合にはシステムによって既に解消しているわけです。
デジタルマネー化することによって医療機関も保険業界も両方が助かります。
ケニアは非常に進んでいて日本はかなり遅れをとっています。
ここから先も 、房さんに伺った様々な業界のデジタル化も含めて世界がどう変わっていくのかということを解説していきます。
続きもぜひチェックしてみてください。