あなたが、最近他人と意見がぶつかったのはどんな時でしたか?
今回は、友達に結婚の報告をしたらそっけなくなってしまったという方の相談をもとに、どんな意見の人とも衝突することなくコミュニケーションを取れるようになる無知の力について解説させてもらいます。
「Q. 結婚の報告をしてから反応がそっけなくなってしまった友達がいるのですが、どうすればいいのでしょうか?」
結婚の報告をしたことで、連絡をしてこなくなるとかそっけなくなるというのであれば、それは友達ではなかったということだと思います。
友達のふりをしているだけの他人が減ったわけですから、それは良いことではないでしょうか。
余計なコストも減ったと考えて、新しい友達を作ったらいいと思います。
無駄な衝突を避けるための話し方について紹介したこともありますが、はっきり言って、人間は今ある人間関係にしがみつくから苦しくなるということがあります。
基本的に、今の人間関係がなくなったとしても自分は大丈夫だと考えることができるようになると、人はかなり強くなります。
大事なのは、自分は新しい友達をいつでも作ることができるという感覚を持つことができることだと思います。
ですから、無駄な敵はできるだけ作らないように話し方なども学んでもらった上で、離れていく人たちは追わない、あるいは、攻撃してくるような人たちは切り捨てるということをちゃんとしてもらい、それに加えて新しい人間関係を作るということを同時に行なっていただけたらと思います。
それができるようになれば人間関係は全く怖くなくなりますので、まずは自分を変えるということから取り組んで頂けたら良いのではないでしょうか。
以上がDaiGo師匠からのアドバイスでした。
無知の力で相手の態度を変える
説得や交渉の場面では、まるで聞く耳をもってくれない取り付く島もないような相手もいたりします。
このような相手と対峙するとどうすればいいのか悩むと思いますが、そんな相手の態度を変えるための方法を紹介させてもらいます。
例えば、陰謀論を信じている人や反ワクチン派の人を相手に、皆さんが営業をしなくてはならないとなった時に、皆さんの商品やサービスを頭ごなしに否定してきたとします。
頭が固い相手が皆さんの商品やサービスを全否定してきた時に、一生懸命良さを説明したり理解してもらおうと努力したのに、残念な結果になってしまうこともあると思います。
そんな取り付く島もない相手の態度を変える方法についてです。
取り付く島もなく話も聞いてくれない状態の人を交渉可能な状態にするための方法です。
コロラド大学のフィリップ・ファーンバック博士の研究で、間違った考えを持っている人の態度を軟化させるための方法について調べてくれています。
この博士は『知ってるつもり』という素晴らしい本を書かれた方で、無知の力で相手の態度を変えることができると言われています。
研究では、遺伝子組み換え食品に対して強い嫌悪感を示している人について調べています。
遺伝子組み換え食品は地球に対しても人類に対しても優しい技術で、実際には問題が起きることはほぼありません。
遺伝子組み換え穀物で育った動物たちを調べた研究を見てみると、特に悪影響はなかったとか、6年間の家畜に対するデータを調べても遺伝子組み換え食品の悪影響はなかったというデータもあります。
83件の論文を調査して遺伝子組み換え食品の健康リスクを調べた研究でも、悪影響は特になかったとされています。
科学者は断言はしないので引き続きの調査が必要だとは思いますが、どうやら遺伝子組み換え食品の健康リスクはないようです。
危険性が指摘されたのはマウス実験だけで、質が高い研究などを見てみると問題ないのではないかと考えられます。
人体に対してさらに深く調べられた研究もあり、2012年のアメリカ科学振興協会のレポートを見てみると、ここでも科学的に見て問題はないということが認められています。
2013年に出た研究を見てみると、2002年から2012年の間に出された1783件の研究データをまとめた系統的レビューですが、ここでも遺伝子組み換え作物は科学的にみても安全で、環境に対しても人体に対しても問題がないとされています。
遺伝子組み換え作物が人間の体内に取り込まれた時に、人間の遺伝子に取り込まれて問題が起きてしまうのではないかということを言っている人もいますが、当然ですが、食べ物の遺伝子が人間の遺伝子に取り込まれることはありません。
結局のところ、遺伝子組み換え反対派が馬鹿げた指摘をしているだけだと言われている研究もあります。
確かに、フカヒレを食べたからといって翌日鮫肌になったりはしません。
認可された遺伝子組み換え作物をチェックしても、特殊なアレルギーや毒物になり得るような異常なタンパク質が見つかったという事実もないそうです。
生態系を乱す特徴も今のところないらしいので、どうやら安全なようです。
遺伝子組み換えがいいか悪いかの議論は置いておいて、遺伝子組み換えにより虫に強くなるということもあるので、農薬の量を減らすことができて、肥料を過剰に与える必要もなくなり環境にもいいのは確かです。総合的に見た場合には、遺伝子組み換え食品はいいのではないかと言われています。
そういうこともあり、今更遺伝子組み換えについて議論することは、科学的にはナンセンスだと言われていますが、それでも根強く遺伝子組み換えを批判する人たちがいるわけです。
博士の研究では、このような人たちがなぜいつまでも拘って批判し続けるのかということを調べたものです。
つまり、事実がすでに塗り変わっていて結果が出ているにもかかわらず、それを否定し続けて、自分の考えが正しいと言い続ける頑固で無知な人たちは、どのような人なのかということを調べてくれたものです。
2,500人を超える男女に遺伝子組み換え食品についてアンケートを行っています。それと合わせて、一般的な基礎的科学知識を問うテストを行いました。
これにより、正しく科学知識を持っている人が批判しているのか、それとも、科学知識はないのに自分の中の思い込みで断言しているのかということを調べました。
その結果、遺伝子組み換えに対する反対レベルが高い人ほど、科学の知識がなかったということです。
反対している人ほど客観的に見た科学の知識が欠けているわけです。
ところが、なぜか自分の知識は正しく科学に詳しいと言い始めてしまいました。
遺伝子組み換えに対して、根拠のない反対をしている人たちには、ふたつの傾向が見られました。
1. 自分から正しい情報を積極的に探さないように行動する
正しい情報があるかもしれないということがわかっているのに、それをあえて無視しようとします。自分にとって都合の悪い情報は、それが事実であっても全て無視しようとしてしまいます。
2. 正しい情報を伝えると否定的な態度が更に強くなる
このような人たちに正しい情報を伝えると、根拠のない否定をしてしまい、最後には開き直るということまで起きてしまいます。
正しい情報を出せば出すほど、余計に頑固になってしまいます。
これらの傾向は、文化の差に限らず起きているということも分かっています。ただし、話題によって違うということもわかっています。食事やスポーツであれば反論しないような人も、最新のテクノロジーの分野などでは反論しやすいということです。
このような人たちは、自分はそのことについて既に知っていると考えるので、新しいことを学ばなくなってしまいます。これが頑固なバカの正体です。
自分が知っていると思っているからこそ、それを学ばない。学ばないからこそ、既に変わっていたり覆って便利になっていても、それを認めることができないわけです。
では、このような人たちにどう対処すればいいのでしょうか。
正しい情報を出せば出すほど頑固になるわけですから、彼らの自分は既に知っているから学ばないという姿勢を打ち砕く必要があります。
正しいことを伝えるのではなく、「自分は意外と知識がないかもしれない。この人は本当に色々なことを勉強していて知っているな。」と思い込ませておいてから、話を聞きたいと感じさせるしかありません。
おだてれば余計に自分は正しいと調子に乗りますし、否定すれば、さらに頑固になってしまいます。
皆さん自身が頭がいいと思わせるわけです。そうして初めて相手は話を聞くようになります。
仮に、遺伝子組み換えについて正しい情報を知ってほしいのであれば、遺伝子組み換えについてはひとまず触れないようにして、例えば、食品の知識や栄養の知識について色々と話します。それにより、色々なことを知っていると思ってくれば、徐々に心を開いてくれます。それから初めて、遺伝子組み換えについての正しい情報を伝えると、まともに聞いてくれるようになります。
正しい情報を一生懸命伝えるよりも、「意外と自分は知識がないのではないか?」と相手に思わせる方が効果的です。
アウトソーシング戦略
相手に「意外と自分は知識がないのではないか?」と思わせるために、お互いの議論の内容以外のテーマに話題を移行させたり、外部の第三者や権威を利用して、相手の信頼感を高める方法があります。
全く反対の意見を持っている相手と議論する時に使えるのがアウトソーシング戦略です。
その9つのポイントについて解説していきます。
ポイント1 :相手の反論の最後にアウトソーシングを使う
相手が強く反論してきた時には、それを冷静に傾聴して、相手が話し終えたら冷静に質問します。
例えば、その相手の反論が終わったら、「私はあなたの意見を詳しく理解できていないので、信頼できるデータを見せていただければ自分も意見が変わるかもしれませんし、良ければ次回そのようなデータを見せていただけるでしょうか?」という感じです。
信頼できる客観的なデータを見せてもらえれば、自分はすぐに態度を変えるということを伝えます。
自分はまだよくわかっていないという姿勢で、賛成していないけれど反論もしていないスタンスです。
これによって相手がそれ以上にヒートアップしなくなります。
これには「ゴールデンブリッジ」と「無知のモデル化」と「ラーニングフレーム」のテクニックが使われています。
ゴールデンブリッジは、基本的に、会話をしている最中にその相手に対して、社会的な恥をかかせないためのテクニックです。
いかに相手の面目を保ち、恥をかかせることなく会話を進めるかということが基本になります。
難しい相手との会話でいかに信頼関係を勝ち取るかということは、相手に恥をかかせることなく、「この人は自分の面目を保ってくれる人だ」と思わせることが必須条件になります。
無知のモデル化は相手の考え方を改めて詳しく説明してもらうテクニックです。
例えば、相手の意見が間違っていると感じた時に「それは間違っているのではないですか?」と言うと、相手は「そんなことはない。自分は正しい!」と反論したくなってしまいます。
それを防ぐために、「詳しく理解できていないので、その部分をもう一度説明してもらっていいですか?」と伝えます。
相手に改めて詳しく説明してもらうわけですが、人は他の人に説明すればするほど理解が深まります。
説明していることの理解が深まると、自分が言っていることの矛盾に気づけるようになります。
相手に詳しく説明させることで、「自分が意外と無知だった」ということに気づかせるテクニックです。
自分が詳しくないから相手に教えてくださいと言うと、特に男性は自分が負けたかのように考えてしまう人が多いですが、相手に教えてくださいとお願いすれば、相手は自分の無知に向き合うしかなくなります。
ラーニングフレームは、相手を説得したり相手の意見を変えることを目的に色々な会話をするのではなく、その目的を「お互いが学び合うこと」とするテクニックです。
どちらが上か下かという話ではなく、議論することによって理解が増えて学びが増えるというスタンスです。
このようなマインドセットで相手と対峙することによって相手と関係を築くことができます。
自分が専門家だとか相手よりも詳しいというスタンスでは相手は抵抗するだけです。
相手が誰であってもコミュニケーションにより学びに繋がることが多いです。
相手から学ぼうとする姿勢で向き合うだけでも、相手はそういう人に譲ってくれる可能性が高くなります。
相手を説得したり、自分の商品やサービスを売り込みたいと思うのであれば、常に自分が学習するスタンスで質問するようにしてください。
例えば、相手が競合他社の商品を使っていて、それが絶対に間違いないからと話を聞いてくれないのであれば、自分の商品の良さを一生懸命アピールするのではなく、相手が使っている商品のメリットについて教えてもらってください。
相手が説明していると、話している中でそれほどメリットがないということに気づくこともあります。
「アドバイス・シーキング」も効果的です。
アドバイス・シーキングのテクニックを使うだけで、8%しか売れていなかったものが42%も売れるようになったという研究もあります。
セールスのプロであればアドバイスを与える側の人間のイメージがあると思いますが、お客さんに対して「どれぐらいの価格や納期であれば買いたいと思うのか」「どのような点がわかりやすくて、どのような機能がついていれば、どんなサービスがついていれば買いたいと思うのか」というように、相手にサービスを良くするための方法を質問します。
このように相手にアドバイスを求めるという行為を行うだけで、成約率がこんなにも高くなるということです。
アドバイスを与えた相手に対する好感度が上がり、人間関係が良くなったり助けてくれる関係になったりして、セールスの場合であれば商品を買ってあげるという選択が自然と起こります。
トップ企業の CEO や役員、大金を稼いでいるビジネスエリートたちは、このアドバイス・シーキングをコミュニケーションの中で頻繁に使っているということが、ミシガン大学の研究によりわかっています。
多くの成功している経営陣たちが組織の中でのし上がるためにどんなテクニックを使ったのかということを調べた研究があり、これによるとアドバイス・シーキングのテクニックを使うことにより彼らはのし上がっていました。
アドバイス・シーキングというものは、要するに、説得力の高いお世辞です。
ポイント2 :中立的な人は何で納得するのかを聞く
学ぶ姿勢でうまく質問して相手が会話をしてくれる姿勢になったら、次は中立的な姿勢の人であれば、どのような情報で納得するのかということを質問してみてください。
例えば、商品やサービスを売り込もうとしているとして、その商品を使っている人でも競合の商品を使っている人でもない、全く関係のない第三者がいたとしたら、どのような情報や要素を信用して購入する商品を選ぶと思うかということを質問します。
人は誰でも自分の意見が正しいと思うので相手と衝突します。
そこで意見をぶつけると議論がヒートアップするだけですが、中立的な立場の第三者がどう思うかという質問をすると、冷静に物事を見ることができるようになります。
もちろん相手が明確な根拠を持って自分の意見を信じている場合には、意見が変わらない場合もありますが、曖昧な情報や間違った情報を信じている場合には、第三者の視点を持つことによって態度が変わる可能性もあります。
例えば、自分の恋愛については人は永遠に悩み続けますが、友達の恋愛の問題に対しては、どうするべきか即答でアドバイスすることができます。
第三者視点になると余計な思い込みから抜け出して冷静に判断できるようになります。
これは「アウトサイダー・クエスチョン」に近いと思います。アウトサイダー・クエスチョンは、相手に自分の信念や自分が出した結論を第三者の視点から考えさせるための質問です。
例えば、相手が全ての人間は◯◯だ!と偏った意見を持っている人であれば、「全ての合理的な同じ結論を出すでしょうか?」と質問してください。
それに相手がイエスと答えたら、「それなのにどうしてこんなにも多くの意見の違いがあるのでしょうか?」と質問します。
「誰の信念が正しくて、誰の信念が間違っているのか、それはどのようにして見極めるのでしょうか?」というように続けていきます。
「他の人ならどう考えるか?」それを考えさせるような質問です。
夫婦喧嘩でも同じですが、相手と口論になったら「全く関係のない第三者がいたらどう思うか?」と質問してみてください。
そうすれば自分も一歩引いて問題を見ることができるようになります。
どちらが正しいかではなく、第三者から見た時にどこを見て判断するか考えてみてください。
ここから先は残り7つのポイントについて解説していきます。
無駄な衝突を避けるためにも、頑固な相手を上手く説得するためにも、ぜひ続きもチェックしてみてください。