ブータンでは「いま幸せ?」と聞かれると、家族や友人など周りの人の幸せを考えるのだとか。

そんなブータンの魅力を伝える展覧会「ブータン~しあわせに生きるためのヒント~」(上野の森美術館で開催中)で、ナビゲーターをつとめる女優の鶴田真由さん。

ブータンを2度訪問し、自然や人々と触れ合うなかで、鶴田さんが感じた幸せのあり方とはどんなものなのでしょうか。

自然と向き合う心地よさ

「最近、幸せだな、心地よいなと感じたのはどんなときですか?」こんな質問をしてみました。

「天気がよくて爽やかだと、それだけで幸せ。花が咲き出すと、嬉しくなるし、散歩に出るだけで気持ちよいと思うんです」

「窓がない部屋が苦手。朝から晩までスタジオにこもって撮影をする時は、苦しくなってしまうんです。だからロケなど、外にでる仕事が好きなのかもしれませんね」

外の空気を全身で感じ、自然とつながっていることを喜ぶ。自然のなかにいかされている感謝の気持ちって、忘れてしまいがちです。

自分のまわりが、愛に満たされているか

「幸せに暮らすために必要なことは、生活の中に愛があるかどうか。家族やパートナーに対してもそうですし、お料理もそう。食材に対する愛があれば、味がかわってきますよね。自分が愛をもって、人や食べものや家にある植木にも、ちゃんと接しているか。そんな気持ちを持っているかが、幸せであるかどうかに直結する気がします」

たしかに愛がなくなれば、心はすさんでしまいそう。愛をもって生きる、という言葉にはとても深い思いが込められているように感じます。つい忘れてしまいがちだけど忘れてはいけないことばかり。

心がけているのは、ていねいに生きること

忙しい生活を送るなかで、鶴田さんも心に余裕がなくなっていると感じることがあるそうです。

「自分のスピード以上のことをすると、全部が雑になっちゃうんです。部屋も散らかってくるし、ごはんもサッと簡単に作り、人の話もろくに聞いていなかったり(笑)。そんなとき、心をこめて、ていねいに料理されたものをいただくと、反省します。食材に対してもそうですが、人に対しても、仕事に対しても、ていねいに向きあう。そんな時間軸を持ちたいと思いますね」

余裕があればできるのに、忙しいばかりに、ないがしろになってしまうことたくさんあります。思わずうんうん、とうなずいてしまいます。それが続いてしまったらきっと自分が自分でゆるせなくなってしまいそう。ちょっとでも、自分に余裕のない気配を感じたら、ふと立ち止まってみるのが重要なんですね。

うらやましいと思う国、ブータン

実際に訪れて感じたからこそ余計に、憧れる部分があると鶴田さん

「足るを知るという言葉がありますが、自分が持っている以上を求めない。感謝することを自然にできるのが、ブータンの人。自国文化や民族への誇りを持ち、それがたたずまいの中にあらわれているんです。日本がなくしてしまいそうなものが、ブータンにはあるんです」

鶴田さんによると、昔の日本にはあったもの、もしかしたら今もあるけれど、なんとなく見えなくなってしまったものがブータンにはまだ残っていて、それが心地よく、そしてうらやましく感じる所以のよう。

寺院や小学校にも訪れ、リアルなブータンを感じてきたのだとか。

いつも自分を大事にすることはもちろん、家族を大事にすること、自分の幸せを求めるだけでなく、家族が幸せだから自分も幸せという感覚......周りがあって自分が生きていることをあらためて意識することも必要なのだなと感じました。

幸せって、つい遠くにあって手がとどかないもののように思えるけれど、きっと日常にもたくさんあって、そのことに感謝しないと気づかないのかもしれません。鶴田さんのお話を受け止め、そして展覧会でリアルにブータンの空気を感じることで、心の中にある幸せを再発見できそうです。

日本・ブータン外交関係樹立30周年記念事業 
ブータン~しあわせに生きるためのヒント~
The Bhutan Exhibition -A Hint to Happiness-

会期:開催中~7月18日(月・祝)
10:00~17:00(※最終入場は閉館の30分前まで)
会期中無休

会場:上野の森美術館(〒110-0007 東京都台東区上野公園 1-2)

取材・文 小林純子/撮影 有高唯之(インタビューカット)

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