本や映画、絵画などのアート作品に至るまで、10年以上前はそんなに気に留めていなかったものが急に気になりだしたり好きになったりするこの頃。子どもの頃に苦手だった食べ物、この前食べてみたら意外とおいしかった、なんて感覚と近いでしょうか。

正直さが胸を打つ言葉の数々

世界でもっとも有名な日本人女性の1人、前衛芸術家のオノ・ヨーコさんが30年ほど前に出版した自伝エッセイ本『ただの私(あたし)(オノヨーコ著・飯村隆彦編・講談社文庫)』もその中の1冊です。 最初に読んだときは「男性上位で閉鎖的な日本社会をバサバサ切るフェミニズム思想の本」といった印象でした。ところがいま読み返してみると、オノ・ヨーコさんが3度の結婚や出産を経て語る、 社会のなかで女性が自分らしく行動し続けることへの正直な言葉が何より胸に刺さるのです。

「いま生んでおかないと、もう一生子供を生めなくなっちゃうよ」などと言われ、堕すのが怖くなって、結局生んでしまった。(中略)そんなふうだったから、子供が生まれても母親としての実感がどうしても湧いてこない。

(『ただの私(あたし)』40ページより引用)

当時の夫にうながされ30歳で娘を生んだことを振り返った言葉。「出産を後悔するなんてありえない」と反感を覚える人もいるかもしれませんが、 出産や育児によって自身のキャリアを中断することへの迷いや不安、働く女性ならすくなからず誰しも感じるところではないでしょうか。

頭で考えず、自分の感覚で

女の力というものは、結局、理屈をこねまわさず、自分の感覚や体に頼るということだ。体に頼るということは、抱擁することであり、許すということ。何かを認めるとか認めないとかいうことではなく、そのものを正直に愛してしまうことである。

(『ただの私(あたし)』63ページより引用)

自分の中に湧き上がった正直な気持ちを否定せず認める。自分の内側、そして外側にも起きる変化をありのままに受け入れる。

結婚や出産などで女性は特に大きな選択を迫られる機会が多いと思います。オノ・ヨーコさんがこの本のなかで繰り返し伝えているように、迷ったときこそ頭で考えることをやめて、勇気を持って自分の感覚に従ってみてもいいかもしれませんね。どんな感情を抱きどんな結果になったとしても、それが自分にとって一番納得のいく答えでしょうから。

[『ただの私』]

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