その作品とは、2016年12月10日(土)から公開になる「ノーマ東京 世界一のレストランが日本にやって来た」。
ノーマは、イギリスの月刊誌『レストラン』による「世界ベストレストラン50」で7年連続のベスト5入り、そのうち4回は1位の栄冠に輝いたレストラン。北欧の食材しか使わず、まるでアートのような独創的なメニューと味が称讃され、世界中のグルマンたちの憧れとして名を馳せています。その人気店が2015年、日本で期間限定店「ノーマ・アット・マンダリン・オリエンタル・東京」をオープンすることに。何もかもが新しいチャレンジの連続の中、オープンするまでの日々に密着した内容になっています。
世界中が注目したノーマ初の試みこの期間限定店はオープン前からすでに話題でした。まずは、ノーマにとって初めての試みだということ、本店を一時クローズして総勢77名のスタッフを引き連れてくること、7万円近い高価なメニューにもかかわらず、期間中に用意できる約2,000席に対して世界各国の美食家たちからの応募が殺到。予約が1日で埋まり、ウェイティングリストに6万2,000人が名を連ねたため、営業期間が急遽2週間延長されるなど、何もかもが桁違い。いまだかつてないほどの期待が集まりました。
映画を通して知る日本文化日本でも本店同様に、その土地の食材のみを使用した料理を作るというコンセプトを貫き、オーナーシェフ、レネ・レゼピとスタッフたちは、築地、鎌倉、那須、白神山地、北海道など日本全国各地へ1年以上に渡って食材探しに奔走。いままで目にしたこともない素材を使いながら、勝手のわからない日本でオリジナルのメニュー開発に挑みます。その様子を見ていると、わたしたち日本人ですら馴染みのない食材や料理の仕方で、逆に教えてもらうことばかり。ただ、"日本で採れたもの"を使うのではなくて、日本の自然や文化が生み出した"もの"をしっかりと勉強していて、食材や生産者へのリスペクトが伝わってきました。
その後、メニュー開発チームは、レネの審美眼に叶うメニューを作り上げようと試行錯誤を重ねながら、寝る間も惜しんでレシピ開発に挑みます。はたして、レネの望む究極のひと皿を生み出すことができるのか? 時間のない中、メニューが完成するまで必死になる様子に、私もいつの間にかスタッフのひとりになったかのようにドキドキでした。
チームワークで生み出す一皿完成したメニューの美しさも見所なのですが、わたしが興味を持ったのは、チームのあり方。日々過ごしているとなんとなく、楽な方へ流されてしまいがちですが、ノーマのスタッフたちは全員、どんな高いハードルでもひとつの方向に向かって真摯に向き合うことで乗り越える。今回の日本出店計画もホテルからのオファーではなく、レネが申し出たものとあって、彼らから敢えて挑む姿勢を教えてもらいました。スタッフたちはクタクタになりながらも、料理が好き、レネが好き、何よりもノーマが好きでその一員だという誇りが、前に進むモチベーションになっているんです。
そして、何よりもレネのリーダーシップ。上から目線ではなくて、常にみんなのことを気にかけつつも、トップに立つ者としての威厳を保つ。と同時に、映画の中では彼が感じる計り知れないほどのプレッシャーとの戦いも描かれています。世界一を取ったからといっても決してあぐらをかかずに、リーダー自ら細部にまで気をつかう。常に世界で評価され続ける理由を垣間見ることができますし、こんな上司だからこそ、全員がいいパフォーマンスができることに納得しました。
そして、それは私たちの仕事においても同じこと。どうやって目標に向かってチーム一丸となってがんばれるのか。色鮮やかなお料理だけではなく、そんなヒントもたくさん詰まったドキュメンタリー映画。彼らが日本で得たことから、私たちも学べることがたくさんありました。
[ノーマ東京 世界一のレストランが日本にやって来た]
2016年12月10日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMA 他 全国劇場にて公開
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