本州の西端に位置することから三方を海に囲まれ、温暖な気候。日本最大級のカルスト台地・秋吉台や、日本屈指の規模の鍾乳洞・秋芳洞、海上アルプスと言われる青海島、須佐湾の大断層・ホルンフェルスはじめ、特徴的で美しい自然の風景があちらこちらに。海の幸がおいしいのはもちろんのこと、瓦そばやみかん鍋など、他にはない郷土料理もたくさんあります。
20年ほど前から私の姉が下関に住んでいるので、家族みんなで山口県のいろいろな場所を旅してきました。大学で詩作を学んでいたこともあり、「中原中也記念館」や「金子みすゞ記念館」を訪れたと気には、時間を忘れて詩情の世界に浸りました。川棚温泉名物の瓦そばは、これまで全国各地で食べた郷土料理の中でも、群を抜いた好みの味と食感で、ふと思い出しては恋しくなるほど。姉からも山口県がいかに暮らしやすいか、折に触れ教えてもらってきました。
「おいでませ山口館」の「おいでませ」は、山口の言葉で「今度ぜひお越しください」という意味。水産加工品や、わらび粉を使った外郎(ういろう)などのお菓子、伝統工芸品が並ぶショップの中には、山口で暮らしたい人や、山口で働きたい人の相談コーナーも。観光旅行のためのパンフレットも持ち帰ることができます。
「無添加麦味噌けんこうちゃん」一馬本店その名の通り、塩分控えめで体に優しく、毎日気軽に使える無添加の麦味噌。全国で作られている味噌のほとんどが米味噌で、麦味噌は山口県の他、限られた地域でしか食べられていないため、馴染みのない人も多いでしょう。麦味噌の特徴は、麹が多い分、甘みが強く、塩分が少なくまろやかな味わい。ふんわりほのかに麦が香ります。
明治32年創業の醸造場・一馬本店は、可能な限り国内産の原料を使い、味噌と醤油を作っています。麦味噌に使用する麦は、100%山口県産。地元で採れる物には目が行き届き、愛情をたっぷり注ぐことができるのです。
お味噌汁や豚汁はもちろんのこと、炒め物や、そのまま野菜スティックに合わせても。素朴ながら一度味わったらまた食べたくなる、旨味がたっぷり詰まっています。
「夏みかんスライス」柚子屋本店原材料は、萩の名産品・夏みかんとグラニュー糖のみ。1個の夏みかんから数枚しかとれない、果実と実の間の白く厚い部分を切り取り、グラニュー糖でしっとり品のよい甘さに煮詰めています。扱いが繊細なのでどの工程も手間をかけ、瓶詰めまで全て手作業。
バターたっぷりのトーストにのせたり、アイスクリームやヨーグルトや炭酸に合わせても。クリームチーズとの相性もよく、クレープとの組み合わせが絶妙でした。
「ねね」酒井酒造女性が多い集まりに手みやげに選んで喜ばれるのが、発泡性低アルコール純米酒「ねね」。普段は日本酒を口にしないという人からも、シャンパンのように飲みやすいとか、乾杯用や食前酒にとてもいいと、感嘆の声が聞こえてきます。原料米は山口県産の日本晴。ほのかな甘みと、すっきりとした酸味が特徴。瓶内の2次発酵によりプチプチと優しい炭酸ガスが発生し、心地よい口当たりに。愛らしい名前は、豊臣秀吉の正妻である北政所ねねに由来しているそう。
「ねね」を作っているのは、山口県の地酒「清酒五橋」で知られる酒井酒造。昔から「山は富士、滝は那智、橋は錦帯」とうたわれる日本三名橋のひとつ・錦帯橋がよく知られる岩国市で、明治4年から続く酒蔵です。「清酒五橋」は言わずもがな、五連の反り橋・錦帯橋に由来。昭和22年の春、硬水仕込みが全盛だった時代に、錦川の伏流軟水仕込みで全国新酒鑑評会1位を得て、広く知られるようになりました。
「元祖ふぐ茶漬」松浦商店
山口県といえば、ふぐ。山口では「福」とかけて、「ふぐ」のことを「ふく」と発音します。そんなふぐは毒があるため、豊臣秀吉の時代から長らく食べられることを禁じられていました。それを解禁したのが、山口県出身の初代内閣総理大臣・伊藤博文。明治時代、全国に先駆けて下関でふぐが食べられるようになりました。
昔ながらの手作りを守る「松浦商店」のふぐ茶漬けは、無添加・無着色で、国産・天然・大型ふぐだけを用いています。昭和30年代、扱いが難しく誰も手がけていなかった「ふぐ茶漬」の商品化を成功させたのが、松浦商店の創業者。味醂干や焼きふぐなどを成型するときに余る身を、捨ててしまうのはもったいないという思いで有効利用したのが誕生のきっかけ。天日干したふぐから出るダシで、旨味たっぷりのお茶漬に。パスタの味付などアレンジも可能。
「おいでませ山口館」
住所:東京都中央区日本橋2-3-4 日本橋プラザビル1F
電話:03-3231-1863
営業:10:30~19:00(12月31日~1月3日を除く)
12月30日は10:30~15:00
「甲斐みのりが選ぶ。日本ローカルフード47」をもっと読みたい>>