2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震から6年半が過ぎました。震災後この時期になると会社のプロジェクトの一環で、津波によって仕事場を流されてしまった南三陸町のお母さんたちに毎年お仕事の依頼に行くのですが、その出張に合わせて猫島として有名な田代島に行ってきました。

田代島へは石巻港から船に乗り約45〜60分(便によって所要時間が変わります)で着きます。車で石巻港まで向かったのですが市内をしばらく走ったあと、突然あたり一面見渡す限り雑草が生えている土地に入り込みました。南三陸町でも見覚えのある不気味なほど広すぎる空き地。よく見ると雑草の隙間からは家や建物の基礎が見え隠れし、砂利だらけの道のない道を進むと車のナビは狂ったかのように何度も経路を更新してきます。背の高い草のおかげで港がどこにあるのか全くわからず、ナビも混乱中のため出港の時間に間に合うか急に焦りが出てきました。

小さな待合所と工事中の港。まわりには大きな建物は見当たりません。

港までの誘導看板がほとんどない中、なんとか出港3分前に到着し船に飛び乗りました。海に出ると普段あまり見ることができない陸を海から見ることができます。しかし陸の姿は失われつつあり、要塞の壁のように固められた巨大な防潮堤の姿に言葉を失いました。現在、東北の太平洋側の海岸線全長約400kmにわたり、最大高さ15.5mという巨大な防潮堤の建設が進んでいます。同時に私は夕日の美しい故郷の遠州浜を思い出していました。東北には海と共に生きてきた町も少なくありません。「町が死んでしまう」「また津波が来ても防潮堤で見えないのでかえって危険」と反対の声も大きいと南三陸町のお母さんが話してくれたことを思い出しました。

右側に見える白い壁が防潮堤。少しずつ陸が見えなくなっていっています。

船の中で田代島在住のおばあちゃんと仲良くなり、震災当時のことをたくさんお話してくれました。しかしなんと言葉が韓国語のようなイントネーションで9割ほど聞き取れない! 震災の時は、津波が来る前に猫がみんな一斉に山に走り出したそうな。それを見て島に住む人たちも山に避難し大きな被害を免れたとのこと。

田代島の2つある港のひとつの二斗田港。震災時約130cm地盤沈下し、船着場が水没してしまったそう。今はきれいな港に。

田代島は島の住民よりも猫が多く、島民の平均年齢は70歳を超えます。静かで温かくてどこか懐かしくてとても癒される島です。到着すると、いたるところに猫、ねこ、ネコ!もちろん旅に必須のアイテム、マイ猫じゃらし持参!じゃらしパワーは世界共通なのです。

第一島猫発見! 日向ぼっこをして静かに目を閉じています。

道端に猫の置物たちが置かれています。猫島に来たことを実感させてくれます。

いましたー! 猫の集団! みんな日向ぼっこ中。

島に訪れるのは私のような一人旅女子だけではありません。むしろ、一人旅男子の方が多かったのに驚き。男子達も夢中で猫たちを追いかけます! 写真の男子はみんな一人旅男子。

田代の小さな歴史館&クロネコ堂。旧郵便局の建物と家具を利用して資料館とカフェを作られたそう。

中では田代島のお土産や猫グッズも販売しています。

ふらりと猫さんが遊びに来ることも。

猫神社。島の守り神として猫を祀っています。ここにもネコグッズがたくさん。

なるほど、納得なシステム。メディアに出てから観光客が急激に増えたそうで、今は大量にエサを道にばらまかれて事故死してしまうなど問題も多いよう。

私の研究によると島の約8割の猫が猫じゃらしに夢中になります。

海はとても穏やかで風も気持ちがよく、波の音と木の葉の音しか聞こえません。人は昔から自然と共存して生きてきているはず。海や山の恵みと、昔からの暮らしの知恵であたりまえのように日々生活ができています。自然は壮大で美しい。でも突然想像を超える力が押し寄せることもあります。それでも人は海に出て漁をするし、畑で作物を作り続けます。昔々から自然との対話をずっとずっと繰り返しているはず。さっき見た防潮堤の姿が頭から離れず、人と自然の共存についてぼんやり海を眺めながら考えてしまいます。でも猫たちはそんなことはおかまいなく、日向ぼっこしたり、毛づくろいをしたり。とても自由に気ままに1日が過ぎていく。

商店の前でもやっぱり日向ぼっこ。

「猫に効く」「よだれかけ」!? 気になる看板! 昼間ですがシャッターが半分降りています。

有名漫画家のペイントが施されたロッジがある「マンガアイランド」。キャンプ施設になっていて誰でも利用することができます。

飼い猫と野良猫の中間にあたるたくさんの地域猫が島民と共に暮らす田代島。復興事業の一つとして猫を活用した観光プロジェクトも行われています。ここではたくさんの猫さん達と豊かな自然と人との共存の姿がゆっくりとした時間の中で見ることができます。

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